名門・国見が求める「攻撃の逞しさ」とは? 伝統×多彩さ…元Jリーガー監督が描く理想の姿
THE ANSWER / 2024年8月2日 15時10分
■インターハイ3回戦で米子北に1-2と逆転負け
球際で競り勝つことだけが、逞しさではない。伝統の力強さと、現代的な戦術の掛け合わせを目指す名門校は、進化の過程にいる。福島県で開催されている全国高校総体(インターハイ)男子サッカーに出場した国見(長崎)は、3回戦で米子北(鳥取)に1-2と逆転負けを喫し、大会から姿を消した。
前半は完全な国見ペース。素早く前線にボールを送ると、相手より先に落下点へ入り、相手が近づいてこれないようにしっかりと体を張り、球際を制して主導権を握った。前半15分にはMF江藤呂生(3年)のクロスボールでゴール前に混戦を生み、MF山口大輝(3年)がループシュートを決めて先制した。直後の同17分にも江藤のクロスからFW西山蒔人(3年)がヘディングシュートを突き刺したが、オフサイドの判定でゴールにはならなかった。
すると、国見は攻撃方法をチェンジ。しっかりとショートパスをつないで攻撃を組み立てた。2018年に就任した木藤健太監督は、アビスパ福岡とモンテディオ山形でプレーした元Jリーガー。母校である国見の古き良き伝統を大切にしながら、現代的な攻撃スタイルの導入を進めている。
現在の国見の選手たちの感覚で「自分たちのサッカー」を語らせれば、かつてのような堅守速攻ではなく、パスを細かくつなぎながら崩す攻撃のイメージが描かれる。序盤に1点のリードを得てパスを回し、ボールを奪いたくて近づいてくる相手をかわしながら隙を突いて追加点を奪えれば、目指しているサッカーを体現できた。
しかし、全国大会の上位に何度も名を連ねている米子北は、全体を前に押し上げて反撃を開始。国見は少しずつ自陣に引くようになり、前線までの距離が間延びしてしまう。後半が始まると13分間で2点を奪われ、逆転された。主将を務めるGK松本優星(3年)も「良い時間にリードできたけど、1点を守ろうとして引いてしまった」と肩を落とした。
しかも、米子北は直後に選手交代で5バックに変更。国見が逆襲の起点としたかった2トップは相手3人にマークされ、サイドでは江藤らが常に1対1でマークされる状況となり、攻撃が機能しなくなってしまった。素早くサイドに展開してもサイドを自由に使えず、2トップには苦し紛れのパスしか届かず、ボランチも相手のロングパスのケアに気を取られ、攻撃のサポートに出る場面が減ってしまった。試合は1-2のまま終了。試合のペースを奪い返せなかった国見の10番を背負う西山は「球際は、公式戦で強くできているし、上回れるかなと思う。でも、引かれた相手にどうするか、点を取った後にどうするか。(全国レベルでの)試合慣れというか、戦い方が分かっていなかった」と悔しがった。
■伝統の球際勝負だけではなく、リスクを負う攻撃も追求
かつては、一発勝負のトーナメント戦を勝ち抜くため、リスク回避で敵陣での球際勝負に持ち込む手段が王道だった。しかし、リーグ戦も整備された昨今、強豪チームほど攻守両面で多彩な手段を持てるようになっている。
現代の国見が目指しているのは、より多彩な攻撃だ。木藤監督は「もう少しボールを動かさないと相手のリズムになる。(球際の)強さ、逞しさは、国見らしさを失わないようにやっている。その中で、攻撃では相手を見て、プレッシャーを外せるくらいにならないといけない。そういう意味では、攻撃の逞しさは、もっと必要。相手が近づいてきていても(奪われる可能性を恐れずに)パスを受ける。ターンをする。パスを受ける2トップ(の動き)も、パスを出すほうのキックの質も、上げていかないと勝ち切れない」と課題を指摘した。
現代の国見は、リスクを負わない戦いの中で見せる競り合いでの逞しさだけでなく、リスクを負う勇気を持ちながらプレーを成功させる精神面の逞しさも求めている。今季は、プリンスリーグ九州2部で首位を走っているが、全国大会では昨年のベスト4に及ばず。冬の高校選手権で進化した姿を見せるための課題を持ち帰った。(平野 貴也 / Takaya Hirano)
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