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3戦全敗に終わった男子バスケ日本の誤算 期待の2人が3P不発「使えなかったのか使わなかったのか」【渡邉拓馬の目】

THE ANSWER / 2024年8月3日 6時13分

ブラジルに84-102で敗れ、3戦全敗で敗退が決まった男子バスケットボール日本代表【写真:FIBA提供】

■「シン・オリンピックのミカタ」#46 男子バスケットボール解説・渡邉拓馬

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

 大会期間中、各競技のスペシャリストによる試合解説を随時展開する。今回は男子バスケットボール。1次リーグB組最終戦が2日に行われ、世界ランク26位の日本は同12位のブラジルに84-102で敗れ、3戦全敗で敗退が決まった。この試合とともにパリ五輪を元日本代表・渡邉拓馬氏が総括。八村塁が負傷離脱した影響を指摘した一方で、3試合で「誤算」だった2人の不調も挙げた。「五輪でここまで戦えたことは自信にするべき」と次回大会への期待も込めた。(構成=藤井 雅彦)

 ◇ ◇ ◇

 日本男子バスケットのパリ五輪が終わってしまいました。「終わってしまった」と表現したのは、このチームをもう少し見たい、一緒に戦いたい、という気持ちがあったからです。でも僕は彼らに感謝を伝えたい。これまで日本のバスケットを作ってきた方々の想いを背負って立派にプレーしてくれたのですから。本当に誇らしい戦いぶりでした。

 同じ3戦全敗でも前回大会の東京五輪と違い、3試合すべてに内容がありました。勝利が目前に迫ったフランス戦を筆頭に、手ごたえもありました。だからこそ比例して悔しさも大きくなる。昨年のW杯を経て、ファンや国民からの期待は膨らんでいたはず。結果で応えることはできませんでしたが、希望をしっかりと感じ取ることのできる惜敗ばかりです。

 ブラジル戦前に八村塁選手が負傷でチームを離脱することが決まり、彼の不在は戦い方に少なからず影響を与えたはず。スターティング5のうちの1人が欠けるのは大きなダメージですし、これまでの2試合を見ても間違いなくメインキャストの1人でした。個人で打開できる数少ないプレーヤーで得点力も兼ね備え、いるだけで存在感のある選手。おそらく相手に与える圧力も大きく違うプレーヤーです。

 怪我の程度や状況について詳しいことは分かりませんが、所属するチームとの兼ね合いやNBAの規定もある。彼自身も日本チームも判断できないところがあったはずで、仕方のない決定だったのでしょう。志半ばでチームを離れなければならなくなった無念は察するに余りあります。

 それでも日本は八村選手が合流する以前からチーム作りを進めていました。チームオフェンスやチームディフェンスに関しては彼抜きで構成していた時間の方が長かったですし、実際に戦い方と気持ちの切り替えはスムーズにできていたと思います。怪我や病気、出場停止もスポーツの一部。こういったアクシデントも想定してチームを作っていたと思うので、選手たちが八村ロスを引きずっている様子はありませんでした。


ブラジル戦でシュートを放つ比江島慎【写真:FIBA提供】

■日本バスケのさらなる進化へ Bリーグの盛り上げ、高体連・中体連の強化や見直しも

 ブラジル戦に関して言えば、相手も死に物狂いでした。ここまで0勝2敗で日本とまったく状況で迎えた3戦目。条件は同じで、勝利に加えて1点でも多くの得点差が必要でした。そういった気迫がシュートに乗り移っていたのか、前半は90%近い3Pシュート成功率を誇っていた。重要な試合とはいえ、これだけ決まるのは稀なこと。サイズとスキルとメンタルと経験に想いが加わったブラジルは、紛れもなく強いチームでした。

 その相手に対して終盤に2点差まで詰め寄ったのは地力がついた証明。河村勇輝選手があれくらいのパフォーマンスを見せてくれることはW杯の活躍を考えれば驚きではありませんし、ジョシュ・ホーキンソン選手も素晴らしい働きでした。吉井裕鷹選手は攻守においてタフに戦い続け、今大会はあまり目立っていなかった馬場雄大選手も見せ場を作りました。

 惜しむらくは、シューターの比江島慎選手と富永啓生選手の2選手に当たりが出なかったこと。彼らは3試合トータルで1本も3Pシュートを決められなかった。これは戦前に予想するのは難しい誤算と言っていいと思いますし、プレータイムを増やせずにリズムをつかめないまま五輪が終わってしまいました。

 使わなかったのか、使えなかったのか。トム・ホーバスヘッドコーチの思考回路は見えませんが、もしかしたら周りが想像する以上にサイズが必要という想定で戦っていた可能性はあります。八村選手が加わることで全体のバランスが変わった部分もあるでしょう。コート上で体感しないと分からない温度もありますが、本大会に入ってからも戦い方を探っていた印象です。

 アメリカやセルビアといった強豪国は大会直前に選手が集まっても、即興でチームを作れます。ですが、日本はまだそこまでのレベルに達していない。海外で活躍する選手をさらに増やしていくことが必要で、これからNBAの舞台を目指す河村選手や富永選手への期待は大きい。そこで得た経験を日本代表に還元することで、次のステップへ進めるのです。

 サッカーもW杯に出場できない時代にドーハの悲劇を味わい、初出場のフランス大会では3戦全敗でした。それが今では代表選手の多くが海外でプレーするほどに発展しました。ただ、どうしても時間はかかります。バスケット界はBリーグを盛り上げていく取り組みを考え、高体連や中体連の強化や見直しも必要でしょう。

 それでも3戦全敗という結果でここまでの歩みすべてが否定されるべきではありません。五輪という特別な大会でここまで戦えたことは自信にするべきですし、世界に向けて日本バスケットの成長を発信できたはず。この悔しさを次の代表チームが引き継ぎ、ロサンゼルス五輪でまずは1勝することが使命です。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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