1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

古賀紗理那が右手に込めたスパイカーの責任 現役最終戦が近い今、号泣した背中を囲んだ信頼の輪

THE ANSWER / 2024年8月4日 6時43分

バレー女子日本代表を率いた古賀紗理那【写真:FIVA提供】

■パリ五輪

 パリ五輪は3日、バレーボール女子1次リーグB組最終戦で世界ランク7位の日本が同20位ケニアに3-0でストレート勝ちした。今大会1勝2敗でグループ3位が確定。決勝トーナメント(T)進出にわずかに望みをつないだ。4日の米国―フランス戦の結果で進出可否が確定。今大会限りで引退する古賀紗理那の現役生活を左右する。チーム最多16得点を挙げた主将は、仲間の支えを感じながらスパイクを打っていた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 操り人形の糸が切れたように、その場で力なく泣き崩れた。

 最初は気丈に振る舞っていた試合直後。チームで集合写真を撮り終えた時だった。古賀は両膝をつき、立ち上がれない。コートに突っ伏して泣いた。

「今日はキャプテンとか考えず、バレーボールが大好きな古賀紗理那として戦いました」

 1セットでも獲られたら敗退が決まる崖っぷち。しかも現役最後の試合になる。愛するバレーボールの一つひとつを、夢の舞台で噛み締めた。エースとしてアタックに、ブロックに、そして声で懸命に盛り上げた。絶対条件のストレート勝ちを収め、現役生活の“延長”に希望を繋いだ。

「今日勝って最後かもしれないし、最後じゃないかもしれない。厳しい戦いが続いて、チームとしてもきつかったけど、みんなで気持ちを立て直して勝つことができて良かった」

 初出場だった2021年東京五輪、初戦のケニア戦で右足首を負傷した。苦悶の表情でコートに這いつくばり、スタッフに抱えられながら会場を去った。大会中に復帰したが、日本は予選ラウンド1勝4敗の全体10位。母国開催でメダルは遠く彼方に消えていった。

 パリ五輪へ向け、2022年に主将就任。一時は代表から離れる選択肢も浮かんだが、日の丸のために戦うと決めた。「ケニア戦がフラッシュバックする」。悪夢がよぎるネット際のプレー。最大限の注意を払いながら跳び続けた。

 五輪で3試合連続のチーム最多得点を挙げた今、自分のプレーに集中できる理由がある。28歳、メンバー12人の中に年上は3人。

「年上の選手が増えたのは本当に助かっている。去年までは『私がしないと』という気持ちが強かったけど、今年は助けてくれる人がたくさんいる」


試合後、思わず泣き崩れた古賀紗理那【写真:FIVA提供】

■泣き崩れた古賀の周りに…

 特に1学年上で同じNECの小島満菜美に背中を預けた。チームをまとめつつ、練習やミーティングの先導など時には先輩にパス。「あとはやって! キャプテンみたいなやつ!(笑)」。愛嬌満点の笑顔でお願い。役割を分散させてもらった。

「そういう人がいてくれて心の余裕ができた。私のプレーにフォーカスできている。私の話も聞いてくれるし、私の良かったところも言ってくれる」

 安心感をもらった。だから、責任を持ってスパイクを打った。得点した瞬間に思う。「今、ほんとに人に助けられてるな」。自分だけに集中するわけではない。ミスした若手が下を向けば、「悲劇のヒロインモードになってるよ」と前を向かせた。

 眞鍋政義監督は言う。「エースとして古賀の負担を減らそうとした。そうは言いつつ、役割は人を成長させますね。一年、一年、キャプテンとしてチームをまとめてくれた。古賀のチームです」。主将の成長なくして日本の五輪出場はない。泣き崩れる背番号3の周りにできた輪が、仲間の信頼度を表していた。

 各組上位2か国と3位で成績上位2か国が決勝トーナメントに進出。日本は組3位が確定した。4日にフランスが米国にストレート勝ちすれば生き残る。

「もう一度、気持ちを入れて戦っていきたい」

 銅メダルだった2012年ロンドン五輪以来のメダルへ。まだ現役最後戦は先にある。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください