壮絶に散った日本とイタリアの差 「あと1点」と自分を責めた石川祐希は「背負い過ぎていた」【加藤陽一の目】
THE ANSWER / 2024年8月6日 6時33分
■「シン・オリンピックのミカタ」#63 男子バレーボール解説・加藤陽一
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
大会期間中、各競技のスペシャリストによる試合解説を随時展開する。今回は男子バレーボール。準々決勝が5日に行われ、世界ランク6位の日本が同2位イタリアに2-3(25-20、25-23、25-27、24-26、15-17)で逆転負けを喫し、1976年のモントリオール五輪以来、48年ぶりの準決勝進出を逃した。この試合を元日本代表主将でイタリアでプレーした経験を持つ加藤陽一氏が分析。大接戦で勝敗を分けたポイント、そして主将の石川祐希への想いを明かした。(取材・構成=荻島 弘一)
◇ ◇ ◇
残念でした。日本は素晴らしかったし、あと本当に少し。ただ、逆に言えばイタリアが強かったということ。さすがに全勝でここまで来ているチーム。第3セット終盤、後がない場面で勝負強さがありました。日本に比べて、選択肢が豊富。本当にわずかでしたが、ここが日本とイタリアの差でした。簡単には勝たせてもらえませんね。
今日の試合で素晴らしかったのは石川選手。調子が上がらなかった1次リーグと比べて、見違えるようでした。自分もイタリアでプレーしていた時は、イタリア代表と試合するのが楽しかった。自分が日本を代表して、青いユニホームのチームメートや対戦相手と戦う。ワクワクしました。準々決勝の相手がイタリアになって石川選手にスイッチが入るかと思っていましたが、その通りに見えました。
石川選手がいいのは、引き出しの多さです。スパイク能力が高い。普段から2メートルの相手に囲まれてプレーをしている。高い壁を相手にスパイクを磨いています。それを1年中、しかも10年間もやっている。強打だけではなく、ブロックアウトを狙ったり、フェイントしたり、どうすれば得点がとれるかが分かっています。イタリアを相手に、石川選手らしさが発揮されました。
キャプテンであり、リーダーとしても十分な活躍をしています。ただ、それを背負い過ぎていた感じもありました。試合後「あと1点取れなかった」と自分を責めていましたが、その必要はない。逆に、重たいものを背負わず、自分のプレーに徹してほしかった。それができてくれば、あと1点が取れると思います。
■「間違いないのは、石川選手が日本のバレーを変えたということ」
石川選手は「世界No.1プレーヤーになる」と言ってイタリアに行きましたが、まだそのレベルには達していないと思います。今日の試合を経験として来季、イタリア代表セッターのジャネッリのもとでどこまで成長するのか楽しみです。本当に「世界No.1」にまで到達できるかもしれません。
間違いないのは、石川選手が日本のバレーを変えたということ。自分もイタリアでプレーし、優勝もしましたが、試合には出たり出なかったりで、中心選手ではなかった。彼は世界のトップ選手が集まるリーグでチームのレギュラーとして活躍しています。その姿を追って高橋藍選手ら多くの選手が海を渡っています。それが、日本をここまで強くしたのです。
日本にとって今日の試合は大きな試練ですが、神様は乗り越えられない試練は与えないはず。これからの日本バレーにとっても、このイタリア戦は大きな意味を持つものになると思います。若い選手が多いチームですし、下の世代にも有望な選手はいます。まだまだ日本バレーは強くなると思いますし、強くなってほしいと思います。
次のロサンゼルスではメダルをとって、さらに次のブリスベンでは世界の頂点へ。今秋スタートするSVリーグも、世界のトップリーグを目指して発展してほしい。まだまだこれからです。日本のバレーは世界的にも人気があるし、実力も世界に手が届くところまで上がってきています。未来の日本バレーが楽しみですし、期待しています。(THE ANSWER編集部)
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