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日本の「球技の五輪」が終焉 史上最多男女11チーム、感動の名勝負続出も勝てず…宿題は「持続可能」な強化

THE ANSWER / 2024年8月6日 20時31分

イタリアに敗戦し涙するバレー男子日本代表【写真:Getty Images】

■「シン・オリンピックのミカタ」#68 連載「OGGIのオリンピックの沼にハマって」第13回

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

 今回は連載「OGGIのオリンピックの沼にハマって」。スポーツ新聞社の記者として昭和・平成・令和と、五輪を含めスポーツを40年追い続けた「OGGI」こと荻島弘一氏が“沼”のように深いオリンピックの魅力を独自の視点で連日発信する。

 ◇ ◇ ◇

 日本の「球技の五輪」が大会終盤を待たずに終わった。最後に残ったバレーボール男子は本当に残念。石川祐希の奮闘ぶりに興奮し、涙が出そうになった。完全な勝ちパターン。ほぼ勝っていた試合。それでも、最後に敗れた。実力の差? 経験不足? 流れ? ただの運? どれも当たっているようで、違うようでもある。激闘を振り返りながら、世界に挑んだ日本代表たちの戦いが頭に浮かんだ。

 金メダル獲得を目指した男女のサッカーは、ともに準々決勝敗退。女子バレーや女子バスケは1次リーグで敗れた。7人制ラグビーは男女とも1次リーグ敗退。ベスト8が目標だった男子バスケ、男子ハンド、男子水球、女子ホッケーも1次リーグで消えた。海外の大会では史上最多だった11の日本代表チームは、目標を果たせず大会を去った。

 戦績だけを見れば、男子バレーも含めて惨敗だ。ただ、我々の心を躍らせ、感動させてくれた試合は多かった。敗戦を悔しく思うのも、選手たちの頑張りが伝わったから。応援する気持ちが強かったから。それこそが「球技の五輪」のハイライトに感じた。

 男子バスケのフランス戦、終了間際の「4点シュート」には未だに頭をひねるし、男子サッカーのスペイン戦、オフサイトでのゴール取り消しにもモヤモヤが残る。男子ハンドは五輪金メダル2回のクロアチアに残り0秒で決勝点を決められ、男子水球は五輪2連覇中のセルビアと1点差の接戦。日本にとって名勝負ではあるが、勝てなかった。それが「五輪」だし、世界における日本の「現在地」なのだろう。

 今大会、男子バスケは48年ぶり、ハンドは36年ぶり、バレーは16年ぶりに五輪予選を突破した。水球も16年リオデジャネイロ大会で32年ぶりに出場を果たしたばかりだ。五輪に出場できるのは12チームだけ(男子サッカーのみ16)。出ただけでも素晴らしい。世界の強豪しかいない大会で、結果を出すことは、さらに難しい。

 まずは、確実に大会に出られる力をつけることだ。やっと予選を通過したチームが、いきなりメダルを手にすることは少ない(ないとは言わないけれど)。メダルに絡むのは、圧倒的に常連国。選手だけでなく、指導者も、協会も、リーグも、ファンも、多くの経験を積むことがメダル獲得への近道であり、最も確実な方法だと思う。

■2028年ロス五輪へ「持続可能」な日本代表を作るのは…

 男子バレーのイタリア戦を見て、72年ミュンヘン大会準決勝のブルガリア戦を思い出したオールドファンもいるだろう。2セットを奪われ、3セット目も大差をつけられてからの奇跡の逆転劇。64年東京大会の銅から68年メキシコシティの銀と積み上げて金メダルにたどりついた。

 ただ、栄光は続かなかった。少数の選手を一貫強化して強くなったが、次が育たなかった。68年大会で銅メダルを手にしたサッカーも同じ。その後は長い低迷期に入った。釜本、杉山らメンバーを固定して強化したことで、世代交代ができなかったからだ。

 代表チームの強化は大切だけれど、それだけでは続かない。若年層の強化、育成システムの確立。次から次へとタレントを生み出し、高いレベルの代表を維持しないと「金メダル」を狙うのは難しい。日本サッカー協会はW杯や五輪の出場を決めた裏で「育成」にも力を入れていた。それがあったから、世界に出続け、成長を続けている。

 4年後のロサンゼルス大会に向けて、新しい挑戦が始まる。「持続可能」な日本代表を作るのは、選手ではなく協会やリーグの仕事。ロスでは野球・ソフトボールが行われ、ラクロス、フラッグフットボール、クリケットと団体球技が増える。

「球技の五輪」がまた見たいし、できれば終盤まで見たい。日本中を沸かせてくれた日本チームに感謝しながら。再び世界に挑むチームを応援したいと思う。(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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