昌平の全国初Vに涙 元日本代表・玉田圭司監督が選手に伝え続けたメッセージ「技術は絶対だが…」
THE ANSWER / 2024年8月8日 9時45分
■今年監督に就任、チーム史上初めて4強の壁を越え初栄冠
若き指揮官の熱意に、選手が応えた。全国高校総体(インターハイ)男子サッカー決勝が3日にJヴィレッジスタジアムで行われ、昌平(埼玉)が3-2で神村学園(鹿児島)を破り、初優勝を飾った。勝利の瞬間、涙を拭った玉田圭司監督は「年のせいか、涙もろくなってきているので。嬉しかったですよ、本当に。想像はしていたけど、現実になって自然と喜びが爆発してしまいました」と照れ笑いを浮かべ、喜びを噛み締めた。
玉田監督は、柏レイソル、名古屋グランパス、セレッソ大阪、V・ファーレン長崎でプレーした元日本代表で、ワールドカップにも2度出場。2006年ドイツ大会のブラジル戦で決めた鮮やかな先制ゴールは、広く知られている。21年シーズン限りで引退し、指導者を目指して活動。23年春、習志野高校時代のチームメートが指導者を務めている昌平でスペシャルコーチに就任。今季から監督を任されている。
決勝戦は2度リードされる苦しいゲームでの逆転勝利だった。前半、スローインによる強襲で背後を取られ、低いクロスを押し込まれて失点。それでも、技巧派集団らしく自信を持ってボールを支配して押し返した。前半終了間際、右MF山口豪太(2年)が右サイドを突破してクロスを上げると、左MF長璃喜(2年)が飛び蹴りのようなボレーシュートを決めて同点。後半はクーリングブレイク明けにロングスローのこぼれ球を押し込まれたが、すぐに長が豪快なカットインシュートを突き刺して再び同点とした。
相手の勢いを完全に消してしまう値千金の同点弾からわずか3分後、長が左を突破して上げたクロスをFW鄭志錫(3年)が頭で決めて勝ち越した。2点目を奪われた時には、勝敗が決する1点となる可能性が高いと思われたが、すぐに取り返したことが、試合の流れを大きく変えた。
玉田監督は「豪太と璃喜には、後半のクーリングブレイクの時に、相手の14番は素晴らしいけど、お前らがそれくらいの存在にならないといけないと言った。それが響いたのか分からないけど、結果を出してくれて嬉しい」と話した。相手の14番とは、通算9ゴールで得点王に輝いた神村学園FW名和田我空(3年)のことだ。名指しでハッパをかけられた2年生の山口、長は、ともに年代別日本代表でもあり、将来性が評価されている。闘争心に火をつけられた才能豊かな選手の勢いが、試合をひっくり返した。
■準々決勝では2点ビハインドを追いつく勝負強さも発揮
昌平は、同じグラウンドで活動する中学生年代のクラブチームであるFC LAVIDA(FCラヴィーダ)の卒業生が多く、毎年、技術に優れた選手を多く擁している。プロに進む選手も多く、高い評価を得ているチームだ。ただ全国大会では、インターハイで2016年、18年、22年と準決勝に進出していたが、なかなかベスト4の壁を越えられなかった。
今大会は準々決勝で桐光学園(神奈川、第1)に大苦戦。2点のビハインドから追いつき、PK戦で辛くも勝利するなど、これまでに足りなかった勝負強さも発揮した。技術を重んじる指導を受けた習志野高で日本一を成し得なかった玉田監督は「大会を通じて成長したところは、特に球際、戦う姿勢。テクニック、技術だけじゃ勝てないと選手も感じてくれたなかで実行してくれた。技術、テクニックは、僕の中では絶対になければいけない(要素)。プラスアルファで、サッカーも変わってきているし、変化に対応することが選手たちはできていた」と強気なプレーに技術を生かした選手を称えた。冷静に技術、戦術を生かすことと、相手に立ち向かう闘志の両方を兼ね備えてこそ、チームを勝たせる選手となる。
ただ、勝てたから嬉しいのではなく、伝えたかったことが、ピッチ上で選手によって体現されたから嬉しかった。就任1年目で快挙を果たした若き指揮官は「優勝ももちろん嬉しいですけど、大会を通じて、選手が1試合ごとに成長した姿を見られること、感じることができた。そっちのほうが嬉しいです」と笑顔を見せた。(平野 貴也 / Takaya Hirano)
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