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有森裕子さんの名言「自分を褒めたい」誕生の礎に スポーツ界に生き続ける高石ともやさんの「言葉の力」

THE ANSWER / 2024年8月20日 8時43分

高石ともやさん(写真は2018年)【写真:産経新聞社】

■トライアスロンの大会に数多く参加し競技普及に貢献

「受験生ブルース」などで知られるフォークシンガーの高石ともやさんが17日に亡くなった。82歳だった。昭和を代表する歌手の一人でありながら、スポーツ界とも深い縁があった。国内外のマラソン、トライアスロンの大会に数多く参加。高石さんが残した言葉はスポーツの世界にも影響を与えた。生前、取材した記者が悼む。(文=荻島 弘一)

 ◇ ◇ ◇

 今から39年前の1985年、宮古島は4月というのに暑かった。これから始まるレースが何なのかさえ分からず、スタート地点にいた。第1回宮古島トライアスロン。水泳と自転車とマラソンを一緒にやるという「鉄人レース」。何も分からない新人記者に、デスクからの指令は3つ、「優勝者」「最終完走者」そして「高石ともや」の取材だった。

「受験生ブルース」は知っていたし「ザ・ナターシャ・セブン」も好きだった。とはいえ、そんな有名なフォークシンガーがレースに出ていることは知らなかった。聞けばマラソン愛好者で、日本のトライアスロン発祥の81年第1回皆生大会の優勝者。すでに、レジェンド級だった。

 当時のトライアスロンは超長距離で、スイム3キロ、バイク136キロの後にフルマラソン。そんな過酷なレースの参加者を励ますように、高石さんの歌う「長い道」が流れた。優勝したのは22歳の中山俊行。山本光宏、飯島健二郎、山下光冨、城本徳満と後に日本のトライアスロンを引っ張る若手選手が次々と入り、6位で43歳の高石さんがゴールした。

 高石さんはトライアスロンの魅力をたっぷりと語ってくれた。3つの競技を一緒にやる達成感、ゴールした時に高揚感、仲間が増えることへの幸福感、そんな話だったように記憶する。マラソンからトライアスロンの存在を知り、本場ハワイのアイアンマンレースにも参加。まだ、レースが特別なもので、メディアも「興味本位」だったころのことだ。

 国際トライアスロン連合(ITU)副会長で日本トライアスロン連合(JTU)専務理事の大塚真一郎氏は「あのころの高石さんのポジティブな発信が、トライアスロンの文化を広めることにもつながった。本当にトライアスロンが好きな方でした」と悼み、感謝した。

■有森裕子さんの名言「自分を褒めたい」誕生秘話

 その後も高石さんは音楽活動と並行してトライアスロンのレースに出続けていた。国内外の組織が整備され、2000年シドニー大会で五輪の仲間入りを果たし、今や五輪の「優等生」と言われるまでになった。国内では毎週のようにレースが行われているが、その黎明期に高石さんがいた。

 もう1つ、高石さんにはマラソンランナーとしての顔もある。96年アトランタ五輪女子マラソン銅メダルの有森裕子さんに「初めて自分で自分を褒めたい」について聞いた時、「実はあれ、高石ともやさんの詩がもとなんです」の答え。高校時代に駅伝大会の開会式のあいさつで聞いた詩を覚えていて「いつか自分も言えるように」と思い続けていたという。

 高石さんは「もともとは米国でボランティアの女性から聞いた言葉なんですよ」と明かした後、有森さんとの縁を楽しそうに話してくれた。トライアスロンの魅力を語る時と同じように、マラソンの魅力、詩、音楽との関係……。「彼女に『歌の文句で人生変わるかね』と言ったら、きっぱり『変わります』って言われてね」と、うれしそうに話した。

「メッセージ・フォークの旗手」と呼ばれた高石さんだが、その強くて明るいメッセージは、スポーツの世界にも影響を与えた。トライアスロンは成長し、進化して五輪の中心競技になったし、「自分を褒めたい」は今や選手たちの「定番」になった。伝説的なフォーク歌手が長く、広く伝えてきた「言葉の力」は、スポーツ界にも生き続ける。(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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