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米大学で大活躍、異色の“逆輸入”で目指すNPB 英語のできなかった大山盛一郎が道を開いた生存術

THE ANSWER / 2024年9月2日 7時43分

大山は初の試合出場から周りに声をかける明るさが目立った【写真:羽鳥慶太】

■米国でのプレーに区切り…NPB目指してくふうハヤテ入り

 日本人ながら、米大リーグのドラフト候補と目された23歳が帰国し、プロ野球の“2軍球団”でNPBドラフト指名を目指し走り出している。沖縄出身の大山盛一郎内野手は、今季からウエスタン・リーグに参加しているくふうハヤテに途中入団し、8月9日のオリックス戦で6年ぶりに日本のグラウンドに立った。米国の大学野球で実績を積み重ね、ドラフト候補と呼ばれるまでになった異色のキャリアと、今後目指すところについて聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)

 大山のくふうハヤテでのデビューは、ある意味衝撃的だった。「2番・二塁」で先発し4打席連続三振。ただこれは、2軍とはいえプロのリーグに適応しようという積極的な姿勢の表れでもあった。「日本でプレーするのは6年ぶりですからね。振らないと合わせるものが何もありませんから」。8月の頭に帰国し、1週間で実戦へ。いかに早く試合勘を取り戻せるかで、人生が変わる。

 大山は沖縄の強豪・興南高で3年夏に甲子園出場。チームメートには1学年下の宮城大弥投手(オリックス)がいた。ただ沖縄県大会の終盤に右肘を痛め、甲子園ではプレー機会がなかった。卒業後は米国に渡り、カリフォルニア州のマーセド・コミュニティカレッジに入学。好成績を残し続けて4年目にはNCAA1部の名門、カリフォルニア大学アーバイン校へ。今春も59試合で打率.296、9本塁打の成績を残した。

 今年6月、大リーグのドラフトで指名を待った。代理人には可能性は十分にあると伝えられていたが、名前を呼ばれることはなかった。ここで方向転換し、NPBドラフトを目指してくふうハヤテ入り。「MLBのドラフトを、一つの区切りとして考えていました。日本のプロ野球でやりたいなとは前から思っていたので。今はワクワクしています」。10月のドラフト指名へ、アピール期間となるシーズンはあと1か月だ。

 日本に戻ってきても、アメリカで築き上げたプレースタイルは変わらない。「元気ハツラツ、泥臭くです。アメリカ人も実はめちゃくちゃ泥臭いですよ。負けず嫌いばかりですから。あんなふうに楽しくやりたいなと思われるようにしたい。野球は楽しいものだと思ってもらいたいんです」。自分のアピールポイントをそう話す大山の野球人生は、開拓精神にあふれている。


二遊間の守備で軽快な動きを見せる大山【写真:羽鳥慶太】

■英語ができないところからのスタート、道を開いた行動とは

 甲子園でプレーできなかった6年前の夏、その後の進路として大学からも、社会人野球からも声はかからなかった。偶然読んでいた雑誌で見つけたのが、米国に野球留学できるという記事。ほとんど前例のない道だったが、大山はこれに飛びついた。「とにかく情報がなくて……。英語もしゃべれないままに行って、アメリカの人に本当に恵まれたというか、助けられてここまで来ました。本当に楽しく5年間やれました」。そして異国で居場所を切り開く中で、必要不可欠だと感じたことがある。

「とにかく自分から動くことです。言葉が分からなくても」

 大山は興南高を卒業した2019年春に米国へ渡った。秋の入学に備え、語学学校に通うためだった。それでも「言葉ができるようになるのは遅かったと思います。2~3年かかりました」と言う。英語は、自分から積極的に外国人の輪へ飛び込み、体当たりで学んだ。また、米国では夏に大学生の選手を集めたサマーリーグが各地で開催される。大山はここにも自らを売り込み、ステップアップを果たしていった。

 大学での実績が認められ、昨夏招待参加したのは、東部のマサチューセッツ州で行われ、大リーグのドラフト候補が集まる「ケープゴッド・リーグ」だ。ここで大山は「オーリンズ・ファイヤーバーズ」の一員としてリーグ5位の打率.360を残すなど大活躍。オールスターやプレーオフでもプレーした。米国の大学球界で一目置かれる存在となった証明でもある。

「最初は日本から来たこんな小さい選手、全然評価されませんでした。でもこちらからいろんなリーグに連絡して、結果を出すことで進んでいった。自分からアクションを起こさないと始まらない。わからなかったらとにかく人に聞く。この世界で生きていくのに必死でしたから」

 昨秋のNPBドラフト前にも、逆輸入での指名があるのではないかと注目された。今回、日本に戻ってNPB入りを目指す方向へ舵を切ったのには、もう一つ大きな目的がある。

「こういう選択肢もあるんだよって伝えたいんです。挑戦したい人はいると思う。日本で僕が結果を残すことでそれも可能になるんだと思います」。自身のプロ入りで、後に続く選手の道まで切り開く。170センチの小柄な体には、そんな大志が詰まっている。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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