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日本メダルラッシュで「未知のスポーツ」の認知度上昇 面白くないはずがない団体球技の「いいとこ取り」な魅力【パリ・パラリンピック】

THE ANSWER / 2024年9月5日 19時15分

6日未明、初の金メダル獲得へ決勝に臨むゴールボール男子「オリオンJAPAN」【写真:Getty Images】

■パリ・パラリンピック、日本が連日のメダルラッシュ

 パリ・パラリンピックが連日のメダルラッシュで盛り上がっている。水泳で鈴木孝幸や木村敬一ら東京大会でも活躍したベテランが金メダルを獲得。バドミントンでは里見紗李奈と梶原大暉が連覇を達成した。一方で、特に目立つのが、団体球技。五輪では目にすることがない、多くの人にとって「未知のスポーツ」が脚光を浴びている。

 今大会の団体球技は、5人制サッカー(ブラインドサッカー)男子、ゴールボール男女、車いすバスケットボール男女、車いすラグビー、シッティングバレーボール男女の5競技8種目。日本からは5人制サッカー、ゴールボール男女、車いすバスケットボール女子、車いすラグビーに5つの日本代表チームが出場している。

 チームスポーツがおもしろいのは、五輪では見ることができない競技が多いからだ。特に「車いすでプレーするラグビー」は想像しにくいし「ゴールボール」と聞いただけで競技が浮かぶ人は決して多くないはず。東京大会で少し知られたとはいえ「ブラインド(目隠し)でサッカーをする」のも一般的には「?」と思う人が多いだろう。

 今大会は、そんな「未知のスポーツ」の認知度が高まった。居酒屋で隣のテーブルから「車いすラグビー、興奮したよ」「ゴールボールって、おもしろいな」という声が普通に聞こえてくる。前回の東京大会では好成績を残した「ボッチャ」が「未知の競技」として注目されたが、今回は「車いすラグビー」と「ゴールボール」の注目度の高さを感じる。

 メディアの力が大きい。パラ特有の競技は、映像に触れないと分かりにくい。それぞれ体験会などで普及に努めているとはいえ「やったことも、見たこともない」人が大多数だからだ。今大会は東京大会から引き続いてNHKで多くの試合が放送されている。一昔前までなら考えられないが、車いすラグビーは決勝戦まで日本の全試合が中継された。

 立ち上がりの緊張感、手に汗握る試合展開、監督らベンチまで含めた駆け引き、試合終盤の盛り上がり…。団体球技は、1試合通してこそ面白みが伝わる。息詰まる点の取り合い、劇的な逆転、過去2大会連続銅メダルから悲願の金メダルに輝いた車いすラグビー日本代表の戦いぶりは、競技の魅力を伝えるのに十分だった。


車いすラグビー日本代表の池崎大輔。悲願の金メダルを獲得した【写真:Getty Images】

■団体球技の「いいとこ取り」で誕生…おもしろくないはずはない

 パラの団体球技の歴史は古くない。車いすバスケットボールは第二次世界大戦後、傷痍軍人のリハビリのために始められたという。カナダで車いすラグビーが考案されたのも1977年。パラリンピックの競技になったのも2000年シドニー大会からだ。新しい競技だからこその魅力がある。

 コートの大きさはバスケットボールと同じ、バレーボールの5号球をもとに開発されたボールを使い、水球と同じ8分4ピリオドで争う。ペナルティーボックスへ「ぶちこまれる」退場ルールはアイスホッケーと同じだし、守備の戦術などはサッカーやハンドボールとも近い。そして、何よりも激しいタックルはラグビー。ボールは楕円ではないし、前にパスしてもいい。それでも「ラグビー」と呼ばれるのは「マーダーボール(殺人球技)」とも呼ばれる競技の激しさからだ。

 既存の団体球技の「いいとこ取り」で誕生したのだから、おもしろくないはずはない。車いすバスケットボールなどと同じように選手の障がいを得点化して重度の選手も軽度の選手も活躍できる場を作り、さらに男女混合として女子にも同じチームで活躍する場を設けた。そこには、チームスポーツとしての「理想形」がある。

 ダイジェストで放送されれば、池透暢主将、池崎大輔の「池池コンビ」や若きエース橋本勝也ら障がいの軽いハイポインターたちの得点シーンばかりが注目されたはず。ところが、1試合で見ると相手をブロックし、守備に貢献する障がいの重いローポインターの乗松聖矢や倉橋香衣らの活躍がよく分かる。コート上の4人が役割に応じて連動し、相手にプレッシャーをかけてボールを奪う守備には、美しい凄みがあった。

■魅力たっぷりの必殺技「オリオン・エックス」「サイレントドリブル」

 6日未明に初の金メダル獲得を目指してウクライナと決勝を争う視覚障がい者のゴールボール男子「オリオンJAPAN」も、魅力的だ。年間200日の合宿で培った抜群のチームワーク。ウイングの2人がクロスに足音を響かせてフェイントをかけ、センターからエース宮食行次らがゴールを狙う必殺技「オリオン・エックス」など聞いただけで胸が躍る。

 同じ視覚障がいのブラインドサッカーもおもしろい。世界ランク3位で大会に臨み、川村怜主将も「金メダルは手の平にある。あとは、それを掴むだけ」と話していたが、1次リーグ3試合はすべて0-1で敗戦。メダル獲得はならなかったが、17歳の新エース平林太一がボールの中の鈴を鳴らさずに相手陣深く攻め込む「サイレントドリブル」など魅力はたっぷり。テレビで見て、選手たちの「凄さ」を感じた人も多かっただろう。

 体格やパワーのハンデを抜群の連携とハードワーク、スピードやテクニック、機敏さや戦術、戦略で凌駕する「日本らしさ」は、野球やサッカー、ラグビー、バスケットボールやバレーボールなどすべての団体球技に共通する武器。それは、パラリンピックでも変わることはない。

 パラリンピックというと、どうしても選手の障がいに焦点があたりがちだ。もともと、戦争などで障がいを負った戦士のリハビリから始まった大会。障がいを負った経緯や克服した努力など忘れてはならないが、純粋にスポーツとしておもしろいところも、パラリンピックの魅力だ。

 障がい者スポーツは競技人口も決して多くなく、一般的に見る機会も少ない。だからこそ、パラリンピックは未知のスポーツに触れるチャンス。大会は終盤だが、まだまだ魅力ある競技は続く。深夜の中継を見るのは大変だが、NHKやYouTubeの配信もある。4年に1回、パラ競技の魅力をもっと味わいたいと思う。(荻島弘一)(THE ANSWER編集部)

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