気落ちする後輩をカメラから守った先輩 日本インカレ、リレー決勝後にあった柳田大輝の気遣い
THE ANSWER / 2024年10月12日 6時43分
■THE ANSWER編集部カメラマン・フォトコラム
陸上の第93回日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)が9月19日から4日間、川崎市等々力陸上競技場で行われた。パリ五輪代表の柳田大輝(東洋大3年)は男子100メートルに出場し、10秒09(向かい風0.4メートル)で優勝。2番手で走った4×100メートルリレー決勝は、日本学生記録を更新する38秒47で2位となった。競技終了後、気落ちする後輩のアンカーを気遣った行動があった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
◇ ◇ ◇
4×100メートルリレーで惜しくも2位に敗れたが、日本学生記録を更新した東洋大。トラックタイマーで記念のフォトセッションを行うため、トラック横に選手4人で待機中のこと、アンカーを務めた大石凌功(2年)が膝に手をついた。カメラマンたちがその様子を捉えようと少し近づく。その時だった。隣にいた柳田が右手で持っていた自らのスパイクをスッと大石の顔の前にかざし、レンズを遮った。柳田の表情は、はにかんでいる。
後輩を想っての行動だった。レースは東洋大が先頭で最終コーナーを抜けてバトンパス。しかし、大石が早大の井上直紀(3年)に交わされ、0秒02差で惜しくも2位。責任を感じ、気落ちする今は撮られたくないだろうとレンズから隠してあげていたのだ。
日本学生記録更新の記念撮影、表情の曇る大石(左から1人目)に上級生たちが優しく声をかけていた【写真:中戸川知世】
しかし、この行動はカメラマンにも気を遣っているように感じた。少しはにかんでいたのは、空気を悪くしないように。おどけるような雰囲気で、一瞬だけ守る形になり、大石が上半身を起こすと、靴は下げたまま隣に寄り添った。全競技が終わり、トラックタイマーの後ろに座って記念撮影。表情が曇る大石に上級生たちが「大石、笑って!」と温かい声を掛けていた。
パリ五輪では4×100メートル代表として予選を走りながら決勝はメンバーを外れ、涙した柳田。自身も苦労した経験があったからこそ出た、さりげない優しさだったのだろう。21歳にして周囲を見て気遣う堂々とした姿に、精神的な強さが感じられた。(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)
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