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衝撃V2中谷潤人を作った米国合宿で目撃 汗だくヘロヘロ…15歳から続く「精神と肉体」の過酷修行

THE ANSWER / 2024年10月15日 6時43分

6回TKO勝ちを収め、歓声に応える中谷潤人【写真:中戸川知世】

■記者が米LA合宿で見た、世界の猛者と切磋琢磨する環境

 ボクシングのWBC世界バンタム級(53.5キロ以下)タイトルマッチ12回戦が14日、東京・有明アリーナで行われ、王者・中谷潤人(M.T)が同級1位ペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)に6回2分59秒TKO勝ちした。プロ77戦でダウンすらない挑戦者に衝撃的なフィニッシュで2度目の防衛に成功。世界的評価を受ける次代の最強ボクサーがまたも期待に応えた。

 中学卒業後の15歳から単身渡米を決断。世界の猛者が集まる過酷な環境で腕を磨いてきた。今回も8月末から1か月、米ロサンゼルスで約160回のスパーリング合宿を敢行。ランダムで決まる相手と拳を交え、ヘロヘロになるまで追い込む姿を「THE ANSWER」の記者が見た。戦績は26歳の中谷が29勝(22KO)、30歳のペッチが76勝(53KO)2敗。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 一瞬でラッシュを決め、破壊的ダウンを奪う。それを実現させる体力、技術、判断力。中谷は本場・米国の厳しいスパーで磨いてきた。しかも、15歳から。

 9月末、中谷は米ロサンゼルスのジムに現れた。午前9時過ぎ。「強い選手が集まってくるので刺激的です」。日本ではジムに所属する必要があるが、ここでは個別のチームで活動。トレーナーなどを連れ、その場でスパー相手を探す日もある。右、左などの条件が合えば対戦。相手がランダムに決まるため、「いろんなタイプの選手とできる」と中谷。あくまでみんなの練習場だ。

 10時には30人ほどの選手で活気が溢れていた。スパーはバチバチ、それ以外は和気あいあいとした選手も。個人の裁量に任されていた。

 中谷も挑戦者のペッチと同じサウスポーと10回、右構えと2回の計12回×3分。各回のインターバルは試合の半分となる30秒しかない。とにかく実戦の毎日だ。

「実戦慣れしている選手が多いので、どういう戦い方をすれば相手が嫌がるか、そういったことをより深く知っている選手が多い。戦うことに特化している選手。その辺りは日本と違う」

 日本なら当たり前にある3分を計るタイマーすらない。リング横にある緑、黄色、赤のランプが「ラウンド中」「残り30秒」「30秒のインターバル」を示すだけ。残り時間がわからない環境は、精神的に追い込まれる。

 名もなきハングリーな選手、世界ランカー、タイトル保持者が当たり前いる環境。中谷も激しく打ち合った。「いつも通りです」。世界戦より長い13回×3分の日も。試合期間が3か月なら100回前後に収まる選手が多いが、中谷は160回を重ねた。


米国合宿中に過酷な練習を終え、汗だくになった中谷【写真:浜田洋平】

■過酷な練習はスパーの後、ヘロヘロで強打を連発

 この日は12回を終えた後が過酷だった。サンドバッグ3つ、壁に掛かったクッションを連続して打つ練習。ステップを踏み、計4箇所にパワーパンチを打ち続けた。マネジャーの弟・龍人氏が「出し切る!」「最後だよ!」と檄。重くなる体を気合いで動かし、ヘロヘロで滝のような汗を流した。試合中の苦しい時も手を出せるようになる。

「米国合宿は毎回あんな感じです。動きながら相手を追ったり、下がったりするイメージ。スパーの後にサンドバッグやシャドーで追い込みます。なかなか手が出てこない時がありますけど、それを乗り越えると出てくるようになります」

 世界で最も権威のある米専門誌「ザ・リング」の階級を超えた格付けランク「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」は9位に。2位の世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)に次ぐ世界的な評価を受けるまでになった。試合を終えるごとにファンの期待は高まり、ライト層の注目も増している。

「そういう注目が大きくなればなるほど、期待もだんだん大きくなる。その期待を上回るのが僕の仕事。皆さんに何かを感じてもらえる一つのコンテンツだと思っています」

 帰国から2週間。日本初の7大世界戦興行で完璧なコンテンツを届けた。77戦でダウン経験のない頑丈な挑戦者。序盤は相手のパンチ力、間合いを測り、情報集めに徹した。「距離を勉強して、パンチの入るタイミングを見極めながら組み立てた」。初対戦の選手とスパーをする時と同じだ。

 徐々に多彩なジャブと重い拳で相手にダメージを蓄積。右アッパー2連発を立て続けに入れた。衝撃は6回だ。残り1分30分、強烈な左オーバーハンドから10連打。腹ばいに倒し、再開後もフック、アッパー、ボディーと全方位から攻めた。3つのサンドバッグを叩くようにステップを踏み、追い込んでいく。残り7秒。粘る相手の視界をジャブで塞いだ瞬間、長い左ストレートを爆発させた。

「しっかり仕留められました」

 涼しい笑顔が恐ろしい。タフな相手を倒せたのも、タイミング、箇所ともにピンポイントで強打を当てたから。フィニッシュまでの過程にも米国で磨いた遠近自在の多彩さがある。長いリーチを生かせばポイントアウトもできるが、それはしない。極上のコンテンツを届けたいからだ。

「近い方が相手を消耗させられる。遠い方が一番自分にダメージなくできるけど、相手を倒すには近くで消耗させる手段も必要」


会見で涼しく笑う中谷【写真:中戸川知世】

■課題を口にした会見「自分の中ではまだまだ?」に即答「またビデオを…」

 夢はPFP1位。その実現には世界的評価のある選手を倒すことが手っ取り早い。該当者は1つ上の階級にいる井上だ。米メディアを筆頭に、今、世界が望むカードだ。

「もちろんイメージすることはあるし、具体的には(対策を)やっていないけど、たまにルディ(エルナンデストレーナー)からもアドバイスをもらう。意識はあります」

 自身はバンタム級に上げたばかり。「まだ挑戦するとかそういう形ではない」と早期の転向には慎重姿勢だ。今の階級でやり残しがある。他3つの世界王座はWBAを堤聖也、IBFを西田凌佑、WB0を武居由樹が保持。「王者なら誰でも。評価のある選手とやりたい」。中谷は全部奪う覚悟だ。

 三重に生まれ、ボクシングを教えてくれた恩師が中学3年時に急逝。指導者に恵まれず、15歳で単身米国に渡った。刺激的なリングで磨いた精神と肉体。1万1000人を熱狂させた直後の会見では課題を口にした。「自分の中ではまだまだ?」の問いに即答。

「もちろん。またビデオを見直して反省したい」

 誰が止めるんだ。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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