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心乱れる「選択終了」の文字 無言で画面見つめ3時間20分「もうヤバいのかと…」育成ドラフト待つ心理

THE ANSWER / 2024年10月25日 7時3分

ドラフト指名を待ち、画面を見つめるくふうハヤテの早川太貴(右)【写真:羽鳥慶太】

■阪神育成3位早川太貴、ようやく呼ばれた自分の名前「頭が真っ白になって…」

「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が24日、都内で行われた。今年から2軍ウエスタン・リーグに参加したくふうハヤテからは、静岡市内に早川太貴投手が待機。会議開始から3時間20分が経過した午後8時過ぎになって、ようやく阪神から育成3位で指名されるとようやく笑みをこぼした。「選択終了の文字が苦しくて…」と、画面に次々に並ぶ指名選手に心乱れた時間を振り返った。

 早川はチームが本拠地を置く静岡市内でドラフト指名を見た。チーム本体は宮崎で行われているフェニックスリーグに参加中。ドラフトで指名の可能性がある唯一の選手として静岡に戻り、その時を待った。

 池田球団社長と共に、会場に現れたのは午後4時45分。「上位はないと思うので、流れしだいかと思います」と自らが置かれた立場を冷静に分析していた。大型スクリーンに映るドラフト中継を正面に見ながら、待てども待てども自分の名前が呼ばれない。周りと会話があるわけでもなく、無言で画面を見続ける時間が続いた。

 支配下指名が終わった際には、会場を重苦しい空気が包み、早川もさすがに一度席を立った。着席して育成ドラフトが始まっても、違う名前が呼ばれ続ける。ようやく阪神の育成3位で自分の名前が呼ばれたのは午後8時5分。着席から実に3時間20分が経過していた。早川は立ち上がって池田社長と握手。ただのちに、その瞬間を振り返ると……。

「自分の名前が出た画面を見たら、鳥肌がたったというのか頭が真っ白になって…。よく覚えていません」。偽りのない本音だった。


ドラフト最中の心境とは【写真:羽鳥慶太】

■社会人投手、独立リーガー…自らと似た選手が指名されていく

 無言で、画面を見つめ続けた3時間強。何を考えていたのか問われると、早川は「選択終了の文字が苦しくて…。本当に指名されないんじゃないかと思った」とこぼす。

 早川の元に届いた調査書は阪神からのものだけ。阪神が別の選手を指名していくたびに心は乱れた。育成ドラフトが始まっても名前を呼ばれなかった時には、流石に心が折れかけたという。「チームメートになるんですけど、阪神が育成1位で徳島の投手を取った時に、もうやばいのかなと」。上位で社会人投手を2人指名し、支配下の4位、5位、さらに育成の1位、2位と独立リーグからの指名が続いた。自らと立ち位置の似た選手が呼ばれるたびに、心が締め付けられた。

 北海道出身の早川は国立の小樽商科大を卒業後、公務員試験を受けて日本ハムの本拠地、エスコンフィールドのある北広島市役所に入庁した。クラブチームで野球を続けながらプロ入りを狙ったものの、野球に専念できる環境を求めてくふうハヤテ入り。チームが初めて産んだドラフト指名選手だ。

 阪神との対戦経験を踏まえ「ウエスタン・リーグで対戦させてもらっても本当にファンが熱い。伝統ある球団ですし人気もある」と印象を口にした。会見後には早速、関西ローカル番組のタオルを持ってポーズを要求されるなど、トラの洗礼を笑顔でこなしていった。

 来季から阪神を率いる藤川球児監督は現役時代、火の玉ストレートと称されるボールで名を馳せた。早川も最速150キロの真っ直ぐが武器。「ストレートには自信があるんですけど、最初ここに来た時には空振りが取れなかったり苦労した。藤川監督にはストレートを教わりたい」と、心はすでに虎の一員だった。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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