まさかの初回リリーフ登板 関東初勝利のつくば秀英・羽富玲央が快投も表情を崩さなかったワケ「マウンドでは…」
THE ANSWER / 2024年10月27日 7時3分
■第77回秋季関東地区高校野球大会が開幕
第77回秋季関東地区高校野球大会が26日、横浜市のサーティーフォー保土ヶ谷球場で開幕した。第1試合では、つくば秀英(茨城)が5-3で拓大紅陵(千葉)を下し準々決勝に進んだ。創部30年の今年、関東大会初勝利の立役者となったのは、初回途中からリリーフ登板し、8回2/3を3安打無失点に封じた羽富玲央投手(2年)だ。先発の中郷泰臣投手(2年)が体調不良もあっていきなり2失点。なおも1死満塁でバトンを受けると、押し出し四球の1点で切り抜けその後は危なげない投球を披露した。チームに勢いを引き戻す快投を披露しても、羽富がポーカーフェースを貫いたのには理由があった。
“ほぼ完投”とさえいえる144球の力投後も、顔は涼しげ。9回、最後の打者を右飛に打ち取った羽富は、どこまでも冷静だった。整列前に喜ぶナインとは対照的に、感情を表に出さず、グラブの中で小さく拳を握った。大事な初戦を制したにもかかわらず、マウンドで喜ぶことも、雄たけびをあげることもなかった。
つくば秀英は選手が感情を表に出して戦うチームだ。試合前にはナインが揃って手をつなぎ、次の瞬間にもみくちゃになって心に火をつける。適時打を打った選手は、塁上で手を突き上げ喜んだ。今夏は茨城県大会の決勝で敗れたものの、甲子園まであと一歩に迫った。新チームになったこの秋も、3季通じて初の県大会優勝。この試合、3-3で迎えた4回に左翼線を破る決勝二塁打を放った吉田侑真主将(2年)は「夏の悔しさもあるし、勝ちたい気持ちが前に出ている」とナインの心情を代弁する。
勝利後も冷静にマウンドから降りた、つくば秀英・羽富玲央【写真:中戸川知世】
その中で、羽富の行動は異色に映る。チームでは珍しいとさえいえる行動の原点は、中学時代にあった。「喜ばないとは違うんですけど、ガッツポーズをしないとか、マウンドの上で叫ばないとかは言われていました」。プレーしていた取手リトルシニアでは、「相手へのリスペクト」を常に求められていたからだ。1点リードの5回、1死三塁のピンチでクリーンアップを打席に迎える大ピンチ。「3番・左翼」の平山颯大(2年)に粘られた末14球目で空振り三振、続く「4番・捕手」の加藤玄竜(2年)を中飛に抑えてしのいだ時でさえ、ベンチ前に戻ってから小さくガッツポーズを作っただけだった。
どんな時も我を失わない冷静さは、緊急登板で存分に生かされた。まさかの初回1死満塁でリリーフを告げられても「行けって言われたら行くしかないので」と、当然のように覚悟を持ってマウンドに上がった。最初に対戦した宮武凜人(2年)から三振を奪ったものの、次の宮澤和聖(1年)に押し出し四球を与え「もったいないっていうのと、いらないところでの四球が多かった」と次戦への課題も口にした。
櫻井健監督が、背番号1の羽富をリリーフでスタンバイさせる理由もここにある。「後ろにいてくれた方が、試合運びが楽になる。これがうちの戦い方」と絶大な信頼を寄せている。
初めての関東大会出場を「ドキドキワクワク」と表現する羽富。次戦に勝てば「ずっとテレビで見てきた」という横浜高校と準決勝で対戦する可能性がある。「本当に次勝たないと、今日勝った意味がないので。絶対に勝ちたいです」。関東地区の選抜出場枠は「4」で、準決勝進出を決めれば学校初の甲子園への可能性が跳ね上がる。再びの快投が、チームの歴史を変えるだろうか。(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)
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