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五輪、結婚・出産、引退…「人生ってバレーだけじゃない」 荒木絵里香が高校生28人に伝えた3つの転機

THE ANSWER / 2024年11月1日 10時33分

宇都宮文星女子高バレーボール部28人を対象に講演したMANの代表理事・荒木絵里香さん【写真:中戸川知世】

■「W-ANS ACADEMY部活動キャラバン」で宇都宮文星女子高バレー部を指導

「THE ANSWER」の姉妹サイトで、スポーツを楽しむすべての女性を応援するメディア「W-ANS ACADEMY」は4日、子供を持つアスリートを支援する一般社団法人「MAN」との共催で、高校生対象の部活動キャラバンを宇都宮文星女子高(栃木)で開催した。バレーボールで五輪4大会連続出場したMANの代表理事・荒木絵里香さんがゲストとして登場し、バレーボール部28人を対象に講演と部活指導という2部構成で行われた。

「W-ANS ACADEMY部活動キャラバン」は、熱心に競技に取り組む生徒が、日々の部活動をより楽しく実りあるものにできるよう、トップアスリートや専門家からのアドバイスを届け、課題解決や新たな選択肢につながる機会を提供することを目的にスタート。この日が記念すべき第1回となった。まず「自分の将来・人生を考えよう」をテーマに講演が行われ、オリンピック出場、結婚・出産、大学院進学など、荒木さんのさまざまな経験談が語られ、高校生の未来に対する考え方に刺激を与えた。

 小5で170センチという高身長をきっかけにバレーボールを始めた荒木さん。当初は下手で「うまくなりたい」の一心で競技にのめりこんだという。小中学校は弱小チームに所属していたが、身長に恵まれていたこともあり東京の強豪校・成徳学園高(現・下北沢成徳高)へ進学。同級生の大山加奈など高校生ですでに日本代表に選ばれるような選手に囲まれ、劣等感から大学進学も考えた。しかし、インターハイを含めた高校3冠を達成するなど、初めての全国優勝を体験。チームメイトと一丸となって得た達成感に「心がぶるぶると震えた」。もっとこの感情を味わいたいと思い、Vリーグ(現SVリーグ)の東レアローズに進んだ。


「自分の将来・人生を考えよう」をテーマに荒木さんのさまざまな経験談が語られた【写真:中戸川知世】

 ここから荒木さんのキャリアには3つの転機があった。

 1つ目は24歳で訪れた。高校卒業時に掲げた3つの目標「日本代表になる」「オリンピック選手になる」「海外でプレーする」を叶えるべく、イタリアに挑戦。海外の壁は大きく「荒木の海外挑戦は失敗だったと誰もが思っている」と結果を残せず苦労したが、学びも多かった。出産してもコートに戻ってくる選手、母国に子供を置いてプレーする選手などを目の当たりに。「人生ってバレーボールだけじゃない。色んな家族がいて、自分のやりたいことや学びたいこと……すごくみんな充実している、豊かに生きている」と実感。「バレーを通して価値観を広げていきたい」と人生を見つめ直し、後の人生設計に大きな影響を与えた。そのひとつが、結婚・出産だ。

 2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得した後、達成感に浸ることなく、次のチャレンジを求めた。2013年に結婚したが、「長く競技を続けるには今、出産したらまだまだ続けられる」と決意した。これが2つ目の転機。2014年に長女を出産し、ママとなってコートに戻った。産後のボロボロの身体だったが、「前の自分に戻ろうとは思わず、また新しい自分のプレースタイルで、競技のキャリアを歩もうと決めていた。できない自分を面白がりながらできた」と前向きに取り組んだ。2016年に代表復帰し、リオデジャネイロ五輪に出場。2021年東京五輪を最後に、4大会連続五輪出場という輝かしい実績を残して引退した。

 そして、3つ目の転機は引退後。実業団か進学か迷っていた高校時代、両親から送られた「大学は学びたい意思があれば何歳からでも行ける場所」という言葉から、引退したら学び直しを決めていたという。早大大学院スポーツ科学研究科でバレーボールのブロックを研究し、2023年3月に修了。40歳になる今も、将来は「スポーツクラブのオーナーになりたい」など人生設計が広がっているといい、これから人生を切り開く高校生は目を輝かせて話に聞き入った。


講演後、部活指導を行った荒木さん【写真:中戸川知世】

■部活指導で選手にかけた「戻るときは素早く!」の真意

 その後は自身の将来をスポーツ、ライフ、家族、マネーの項目に分けて考える「人生設計シート」を記入するワークショップを実施。さらに、質疑応答では次々と手が挙がり、荒木さんと同じオリンピック出場を夢に持つ生徒からは「海外と日本のプレースタイルの違いは?」との質問が。

 頷くように聞いていた荒木さんはミスをしてしまった場合を例に挙げ、「責任の範囲をすごくはっきりさせるという違いを感じた。『“ごめん!”じゃなくて、ちゃんとやってよ』と言われた」と海外特有の厳しさを伝えながら、「逆に日本は何とか助ける、カバーする文化がある。どっちが良い悪いではなく、その差はすごく感じた」と明かすなど、一つ一つの問いに誠実に向き合った。

 1時間半にわたる講演後には、場所を体育館に移して部活指導を実施。インターハイは県予選決勝で敗れた悔しさをバネに、1月の春高バレー出場を目指すチームの練習を見守った。キャプテンの掛け声で、荒木さんの周りに円を作った選手にかけた言葉は「戻るときは素早く!」だった。理由は明快だ。

 気持ち一つで変えられること、全員が変われば全体が変わる。「それは今すぐできること」と求めた。さらに「ただ声を出して応援して盛り上げることも大事だけど、質をもっと上げることはできる」とのアドバイスも。「早く戻って!」と要求する声かけがあってもいい。反対に「ナイスフォロー!」と褒める声もあってもいい。「全体の士気が上がるような声かけができれば、今出ている声がさらに良いものになる」と主将として日本代表を牽引した大先輩の助言に部員の表情も引き締まった。

 練習中、コートサイドに立った荒木さんに自ら質問しに行く選手もおり、荒木さんも親身になって答えた。終盤には何度もアドバイスを求めに来た選手に親指を立て、グーサインを送る姿も。練習中、上級生・下級生関係なく全員が声を出し、活気溢れる雰囲気で1時間の練習を見届けた荒木さんは「本当に応援したくなる、頑張ってほしいと心から思えるチームでした。コートの中の選手はもちろん、本当にみんなで良くしようという思いが伝わるから、インターハイの悔しさをぜひ晴らして、春高を決めてもらいたい。全国大会で会えることを楽しみにしています」とエールを送った。

 主将の横田真央さん(3年)は「大選手に練習を見てもらえて、そのうえでアドバイスをいただけて、本当にチームにとって良い刺激になり、予選前に、より一層気合が入るような1日。これからアドバイスをもとに頑張りたい」と感激の様子。個別に助言を受けたというエースの石崎桃恋さん(3年)は「フォローがずっと自分たちの課題。そこを荒木さんから見ても言われるということは、もっと改善しがいがある。そこが一番の実になりました」と貴重なアドバイスを受け止めた。


荒木さんと記念撮影をした宇都宮文星女子高バレーボール部2【写真:中戸川知世】

 計3時間に渡った部活動キャラバンは最後に記念撮影をして終了。荒木さんを囲む選手たちには、この日一番の笑顔が見られた。生徒にとっても、荒木さんにとっても充実した貴重な1日となった。(THE ANSWER編集部)

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