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脆すぎる防御…10トライ喫した新体制ワースト「19-64」の完敗 ラグビー日本が世界一3度のNZから得た学び

THE ANSWER / 2024年11月3日 10時33分

オールブラックスと対戦し、10トライ喫して敗れた日本代表【写真:Getty Images】

■8度目となったオールブラックスへの挑戦を検証

 ラグビー日本代表の8度目のオールブラックスへの挑戦は19-64の完敗で幕を閉じた。10日26日、神奈川・日産スタジアムで行われた「リポビタンDチャレンジカップ2024」は、今春復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の下でのワーストスコアを喫した。指揮官が打ち出す「超速ラグビー」と世代交代に苦闘しながらの大敗となったが、ワールドカップ(W杯)優勝3度、世界ランキング3位(11月1日現在)の常勝軍団からの学びも得た80分だった。(取材・文=吉田 宏)

 ◇ ◇ ◇

 第2次エディージャパン1年目の国内最終戦にはシーズン最多の6万57人が集まった。対戦相手がオールブラックスというラグビー界最高、唯一無二のブランドだったことを考えると、スタンド四隅を中心に1万を超える空席があったのは、苦闘続きの影響だろうか。6月の始動から積み上げてきた成果も、ビジターチームによる10トライの猛攻にかき消されたような戦いを、エディーはこう総括した。

「NZは最後までタフなパフォーマンスを続けていた。我々若いチームとしては、エネルギー、意図するもの、目的もそうだが、一瞬の隙も与えてはならないという大きな学びになる試合だった」

 結論から書いてしまえば、課題は脆すぎる防御、そして指揮官も語った「学び」が収穫だろう。日本代表と同じく新体制で2024年シーズンを戦うオールブラックスを相手に、立ち上がりは速い展開で主導権を掴んだ。開始5分の先制トライは、ラックからWTBジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)が、自らパスアウトしたボールをSH藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)からリターンパスを受ける奇襲で一気にゴールラインを攻略した。エディー得意の相手を翻弄するプレーによる先制パンチ。いずれも準決勝でNZ相手に番狂わせを演じた、オーストラリア代表HC時代の2003年W杯(22-10)、イングランドを率いた19年W杯(19-7)でも、常勝軍団を想定外の状況に追い込むことで「いつもと違う」という心理的なプレッシャーを掛けた。

 だが、その金星へのシナリオを、若い桜のジャージーは立ち上がり20分までしか演じ切れなかった。19分には敵陣ゴール前のラインアウトからの連続攻撃でトライを奪い12-14と喰らい付いたが、オールブラックスは、強豪待ち受けるヨーロッパ遠征への経由地でのゲームでも世界14位の日本代表をしっかりと分析していた。

 日本の逆転トライがビデオ判定(TMO)で取り消された直後のスクラムから、右サイドを突破して一気にトライを奪ったのを口火に、前半残り20分間で5トライを畳みかけて勝負を決めた。試合後にエディーが「トライが取り消されたことに対して、感情面で対応することが出来ず、最終的にこの結果に繋がってしまった」と語ったように、この幻のトライからの失点が、ゲームの分岐点になったのは間違いない。

 だが、日本代表に足りないものを考えると、精神的な落ち込みよりも防御面での機能に焦点を当てるべきではないだろうか。22分、25分、31分の連続トライをみれば、NZが日本のタッチライン際の防御の甘さを狙ってきたのは明らかだ。試合後の会見で、敵将スコット・ロバートソンHCにその意図を聞いてみた。

「もちろん事前に日本のプレースタイルはしっかりと見ていました。こういうスペースの使い方をするんだということは理解していたので、特に前半と、それから後半立ち上がりのところは、自分たちが思い描いていたような戦術を使うことが出来ました」

 日本側の防御の破綻は、個人の責任だけで終わらせるものではないだろう。日本の幻のトライからのNZのスコアでは、WTBマロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)が内側のアタッカーをマークせざるを得ない状況で左サイドのスペースを抜かれている。これはツイタマのミスではなく、日本のライン防御が相手FBのライン参加に対応出来なかったからだ。25分、31分の失点でも、日本は自陣ゴール前のNZの速攻に防御を張り切れずに、右サイドを突破されている。失点の多くがターンオーバーされてからの速攻やカウンター攻撃に上手く攻守の切り替えが出来ていないという課題もあるが、日本が取り組んできた強豪相手にどこまで組織で戦えるかという防御面のテーマは十分に機能していない。

 個人の1対1でのミスなら修正すればいいだけだ。だが、深刻なのは防御ラインという組織としての連係の未完成さだ。東京サントリーサンゴリアスでもプレーするNZ代表FLサム・ケインは、試合後に日本の防御についてこう語っている。

「日本は非常にいいスタートを切りました。自分たちのアウトサイドへの攻撃を考えると、そこを崩したといっても結局起点になるのはインサイドの攻防です。なので内側のラックからしっかりとスペースを獲っていくことが非常に大事なことでした。立ち上がりは日本の対応が速かったが、時間を追うごとに上手く対応出来なくなっていった。そこで我々が何に焦点を当てたかというとセカンドマンです。そこから徐々に改善するべきだとわかってきたので、アウトサイドの攻略も含めて、自分たちのゲームが出来るようになったんだと思います」

■タッチライン際に脆さ…日本の防御が破綻した原因

 ケインの語った「セカンドマン」に関しては、試合前から情報があった。概ね非公開で行われた練習を視察出来たとある関係者から「あの大きなサイズの選手たちが、2人目、3人目のラックに入るスピードも、意識の高さもすごい」と聞いていた。その段階では、練習がどれほどの強度のものかは不明だったが、日本戦でのセカンドマン、サードマンのタックル、ブレークダウンに入る集散のスピード、意識共に日本を凌駕していた。このエリアでの優位性が、大外の攻防に繋がり、ここにLOパトリック・トゥイプロトゥ、WTBマーク・テレアらの個々のフィジカルの強さ、相手を抜き去るスキルが相まって日本の防御が破綻したことが10トライに繋がった。

 結果的に、ケインの指摘のように日本のタッチライン際の防御の脆さは、NZの連続攻撃のテンポを落せなかった日本の個々の接点での防御が発端にある。この日の多くの失点は、NZの集散に日本がスピードで対応し切れないことで、今季取り組んできたダブルタックルを出来ずに相手に攻撃のテンポを作られて許している。HO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)も、防御については「ディフェンスのところで少しずつ食い込まれてしまい、ダブルタックルが出来ずにゲインされてしまった」と悔やんだが、この接点での戦いは日本代表の課題であるのと同時に、NZのプレーから学ぶべきものがある。

 戦前は体重140kgというNZの両PRなど、歴代最重量ともいわれた相手FWの重さ、サイズが取り沙汰されたが、個人的に注目していたのは、日本が接点でどこまで戦えるのかだ。自分たちのテンポを作り、相手のテンポを封じることが出来るのかが、この試合のキーポイントと考えていた。集散の速さや運動量を強みとするオールブラックス相手に接点の攻防で対抗出来れば、この先のヨーロッパ遠征で当たる強豪とも渡り合える可能性が見えてくるからだ。NZ戦2日前のメンバー発表会見で、エディーにはこのゲームでの「ブレークダウンの重要さ」について聞いていた。

「もちろん重要です。特にアタック時のブレークダウンはしっかり練習を重ねてきた。なぜならクイックボールが欲しいからです。クイックにボールを出すには、ボールキャリアー、サポート選手それぞれに重要な役割があります。この部分は、とてもいい方向に進んでいると思うし、重要だからこそ今回は姫野和樹を7番で起用している。相手にも100キャップを持つサム・ケインのような素晴らしい選手がいます。だからこそ我々は、キャリアーのサポートでハードワークしていくことが重要なのです」

 指揮官は、日本のアタックを軸に話しているが、ここは攻守が表裏一体となっている部分でもある。重要なのは、エディーが語るように、コンタクトが起きた時に、2人目、3人目のサポート選手が相手より早くブレークダウンに参加して、接点でのバトルで優位に立てるかだったが、26日の対戦では、指揮官が語った「いい方向」は見せられなかった。CTB立川理道主将(S東京ベイ)は、接点での戦いでの「学び」をこう語っている。

「オールブラックスの、ボールを動かす上手さというのは感じました。スタイルは日本とも似ているが、ディフェンスを含めてブレークダウンのところは激しく来たし、ラックからの相手の球出しをスローボールにするところは、日本もやっていかなければいけないのかなと思いました」

 ブレークダウンのエリアで、日本はどうしても優位性を持ちたかった。パワーで劣勢でも、相手を上回る運動量と速さで対抗するのが「超速」のはずだが、ゲームを観る限りは優位性を見せたとは言い難い。両チームの個々の選手を見ても、純然たるスピードや身体能力では絶望的なほどの格差はなかったかもしれない。だが、NZ選手が上回っていたのは、1つのブレークダウンが起こる段階で、すでに次の状況、次の次にどのような展開になるかというゲームを読む能力だった。自分が何をするべきか、どんなポジショニングを取り、どう動けばいいかという判断をしながらプレーすることで、日本を上回るサポートの速さ、厚さを作り出していた。

 一例を挙げれば、前半16分のNZのトライシーンだ。日本陣22mライン付近でNZがボールを奪い取りカウンター攻撃を仕掛けたが、左サイドに大きくボールを動かしSOダミアン・マッケンジーがラストパスを放った時点で、NZは左タッチライン付近に4人の選手がパスを受けられる位置にいたが、日本側は2人しかいなかった。

 日本選手が目の前で起きたプレーや、せいぜいその次に起こるであろうことに対応するのが精一杯だったように見えた一方で、NZの選手たちは常に数手先を読んで適切なポジショニングや、サポートをしていた。このような先を読み、行動する判断力がなければ、日本代表が掲げる「超速」はワンランク上のステージにステップアップ出来ないだろう。まだまだ超速は未成熟だという現実を、NZのパフォーマンスが示していた。ゲームの展開を読み、自分がどう行動するべきかを判断するラグビーIQでは、太平洋を挟んだ南北半球の小さな島の間には、まだまだ深い海溝が横たわっていると痛感させられたゲームでもあった。

 エディー自身が就任時から訴えてきたように、「超速」には身体動作のスピードに止まらず、考え、判断して組織で動くスピードも求められる。だが、26日のゲームでの判断や、これから起こるだろう状況を選手個々、そして組織で判断、共有し、行動する速さで勝っていたのはNZだった。日本はここまでの戦い同様に、断片的な「超速」しか見せられていない。NZのような強豪との溝を埋めていくためにも、前回紹介したエディーの単独インタビューでも触れたように、代表選手層に深みを持たせることやセカンドチームの強化の充実という、代表スコッドおよびその周辺の環境整備が欠かせない時代を迎えつつある。

 結果的に日本代表は、NZにブレークダウンで優位に立たれ、連続攻撃で防御が内側に収斂させられたことで、最後はタッチ際を崩されての失点を繰り返した。後半にはラインアウトからのドライビングモールでそのままトライを奪われるなど、パワーゲームでも力の差を露呈した。主導権を奪いかけた立ち上がりの20分、そして7-21と食い下がった後半の40分をポジティブファクターに挙げる声もあるだろうが、その60時間では挽回出来ないほど、前半20分以降の20分間でスコアされて勝負を決められたという事実は変わらない。この負の時間帯で起きた出来事を修正しなければ、NZに肉迫するフランス(世界ランク4位)、イングランド(同5位)が待ち受ける敵地でのテストも結果が大きく変わることはない。

■全10トライの戦況、時間帯を検証してみると…

 ここまでも触れてきたように、オールブラックスのプレーから学ぶことが重要だ。その一端は、この試合でどのような戦況、時間帯に勝者がスコアをしているかからも読み取ることが出来る。NZ代表の挙げたトライは下記のような状況から生まれている。

【前半】
(1)12分 日本の先制トライ後、日本陣22mライン内でプレーし続けてマーク
(2)16分 12分の初トライから4分後
(3)22分 日本のトライ取り消し直後のスクラムから(1次攻撃)
(4)25分 22分のトライから3分後にボールを奪い1次攻撃から
(5)31分 PKから3次攻撃
(6)34分 31分のトライから3分後の2次攻撃
(7)40分 前半終了直前

【後半】
(8) 4分 後半開始直後
(9)37分 後半終了3分前
(10)41分 後半終了直前、37分のトライから4分後

 全10トライの中で、日本のスコア直後のトライが1回、自分たちのスコア直後の連続トライが4回、そして前後半のスタート直後、終了直前が4回(後半37、41分を含む)となっているのだが、ここからNZラグビーの強さの真髄が浮かび上がる。

 以前、オールブラックスが日本代表と対戦するのを前に、現在埼玉パナソニックワイルドナイツを率いるロビー・ディーンズ監督に、この常勝軍団がどんなことを考えながらゲームをしているのかを聞いたことがあった。NZの名門クルセイダーズを5度のスーパーラグビー優勝に導いた名将はこんな話をしてくれた。

「オールブラックスには、試合の中で集中力を高めてスコアを奪おうとしてくる時間帯がある。それは相手と自分たちがスコアした直後、そして前後半最初と最後の時間帯だ。この状況で得点をすることが、相手が最も心理的にダメージを負うからだ」

 それは戦略というよりも、彼らがハイレベルの勝負を続ける中で、経験上身に着けた勝負勘のようなものかも知れない。このような状況で例えばトライ(5点)をマークすれば、相手には自分たちが欲しい得点を逆に奪われたような心理状態に陥る。あくまでも感覚的なものだが、1つのパンチが相手に2倍のダメージを与えるような心理的な効果を狙っている。今回の対戦でも、NZはディーンズHCが指摘したような時間帯に集中力を高め、スコアをしているのだ。

 日本代表も、開始直後(前半5分)と相手のスコアから3分後にトライをしている。だが、敵陣22mラインを11度突破して、その内10回トライをマークしているNZに対して、日本の突破6回で3トライでは、相手に心理的なプレッシャーは十分には掛けられない。12-24とまだ追い上げられるビハインドだった前半30分前後に、日本は敵陣10-22mライン間で8次攻撃をみせたが、ほぼゲインラインを越えることなく止められ、最後は密集でのNZのジャッカルに反則を犯して、相手にプレッシャーを掛けきれなかった。

 強豪国と伍して戦い、勝っていくためには、NZのように、いかに心理的に優位に立てるような状況を作り出し、スコアを奪えるかも重要な要素になる。日本代表のNZ戦先発15人の平均キャップは16.9、平均年齢27.7歳だった。そんな若い選手たちが、2027年までにどこまでゲームの流れを読み取り、勝負どころで集中力を高めてしっかりとスコアを獲り切れる組織に進化出来るかが、勝てるチームへと脱皮できるかの鍵を握る。

 そして、このような経験値を上げていくためにはNZ同様に「学び」を得られる強豪国に、より多く胸を借りることが出来るかが重要だが、1年間で組めるテストマッチ数には限界がある。今回のNZ戦や、エディー体制初陣となった6月のイングランド戦も、厳密には「テストウインドウ(代表戦月間)」という優先的に代表戦を行える期間のギリギリ前の日程で組んでいるのだが、そんな“裏ワザ”を使っても、強豪国とは年間8試合組めれば上出来という状況だ。統括団体のワールドラグビーが各国のマッチメークを管理する傾向を強める中では、極端な試合増加は難しい。繰り返しになるが、代表セカンドチーム等を利用した代表戦以外の試合を組んでいくような工夫をしなければ、2027年までに経験値を効果的に増やしていくことは容易ではないだろう。

 ゲームスタッツからは、日本の敗戦をよく物語る数値も浮かび上がる。スコアをした場面での攻撃回数(フェーズ回数)を見てみると、攻撃の起点から何次攻撃でトライに至ったのかの平均数値をみると下記のようになる。

○日本代表 3.0次
○NZ代表 1.7次

 両チームとも3次攻撃以内でトライをしていることにはなるが、やはり差は明白だ。日本代表も前半の2トライは2次、3次と短いフェーズで決めているが、オールブラックスは、起点からそのまま奪った5トライも含めて最多が3次という短いフェーズでトライをしている。個人技、パワーで簡単に突破される状況も多かったことも影響しているが、決定力、遂行力ではまだ実力差は明確と考えていいだろう。

 以前のコラムで紹介した日本代表のパス回数の多さだが、世界的なラグビー情報サイトで現在は統括団体ワールドラグビー傘下に加わる「Rugby Pass」のデータを参照すると、8月までの7試合では1試合平均186回のパスをしていた日本は、今回のNZ戦ではシーズン最多の220回のパスをしながら、3トライしかマーク出来ずに完敗を喫している。ちなみにNZは216回と、ほぼ同じパス回数で10トライをしていることになるのだが、日本のトライの少なさの要因の1つには、オールブラックスの強固な防御力がある。

 両チームのタックル回数をみると、通常は攻められている敗者のほうが多いのがセオリーだが、この試合では日本の143回に対して勝者のNZは209回のタックルを記録している。タックル成功率では、80%以上が勝利するための基準になるが、日本が76%だったのに対して勝者は90%という高い数値を残している。日本が200回を超えるパスで攻めても、オールブラックスは190回近いタックルを成功させて応戦したことが、わずか3トライという結果に反映されている。

 日本代表はエディー体制以前からアタックを強みとするチームとして強化を進めてきた。この伝統はこれからも継承するべきだろうが、オールブラックスのこの試合での戦いぶりをみれば、勝つために大事な事は攻守両面でしっかりと必要なスキルやフィジカリティー、そして判断力というインサイドワークも身に着けて準備する事だと判る。この大敗からは、改めて日本が積み上げていくことの多さを痛感させられるが、フランス、イングランドらとのシーズン最後の挑戦で、この日の「学び」を積み上げることが出来るかに注目するしかない。

 日本代表の課題と学びにスポットを当ててきたが、最後に1点だけ収穫にも触れておこう。

 先にも紹介したが、オールブラックスの両PRは共に体重140kg、身長も190cmを超える破格のコンビだったが、先発メンバー同士のスクラムでは、日本はしっかりと組み合うことが出来ていた。

 参考までにFW8人の平均では、日本の189.4cm、112.5kgに対してNZは192.0cm、118.6kg。サイズやパワーでは劣っていた日本だが、右PRで先発した竹内柊平(浦安D-Rocks)は、スクラムの出来栄えをこう語っている。

「この日のスクラムは、僕個人としてもチームとしてもかなり自信になると思います。体重差は明らかだったが、8人で準備してきたものが出せた。フロントローだけじゃなくて、バック5もすごくいい押しをしてくれたので、相手はすごく苦しかったと思います。僕らは相手とすごく近い位置で組もうとしています。海外のチームは、体が大きいので絶対嫌がるんです。僕らはその距離で組んできましたから、合宿で仲間と組んだ方が苦しかったですから」

 NZ同様に、日本が強豪国と戦うときは、ほぼ全てのチームが自分たちよりサイズで上回る相手ばかりだ。そんな大きなFWに対して、日本は、通常のスクラムよりも相手と組み合う前の間合いを詰めて、低い姿勢で組もうとしている。竹内の言葉からもわかる通り、組み合う直前に相手にスペースを与えないことで、サイズが大きな相手に、自分たちの強さ、重さを十分には出させないことを狙っている。このような組み方をレフェリーがどこまで認めているのかは今後のレフェリングに注目したいが、竹内に聞くと試合中にNZのFWからは、(日本が)間合いを詰め過ぎているという指摘が何度もあったという。その一方で、レフェリーから日本の組み方には注意や文句はなかったという。

 ここは、今季現役を引退したばかりのNZ代表108キャップを誇るオーウェン・フランクス・アシスタントコーチの功績だろう。FWメンバー1人ひとりと個別にミーティングを行い、個々のスクラムを組む姿勢や癖などにアドバイスを送り、8人が低く一体感を持って組むセットを構築し続けている。これから始まる、NZ以上にスクラムに拘りを持つ欧州強豪との組み合いで、どこまで安定したスクラムを組み、プレッシャーを掛けることが出来るかも、3年後への最高のチャレンジになるはずだ。(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

吉田 宏
サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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