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銅メダル壷井達也「自分なりの道化師」の裏に世界女王も舌を巻く猛特訓 現役神戸大生、遊び捨てたスケート漬けの日々

THE ANSWER / 2024年11月15日 11時53分

NHK杯男子シングル3位となった壷井達也【写真:荒川祐史】

■NHK杯でリベンジ、銅メダル壷井達也「泣きそうでした」

 先週開催されたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦・NHK杯で、日本勢は男女シングル、ペアで計6つのメダルを獲得した。会心の演技を披露した一人が、男子シングル3位の壷井達也(シスメックス)。ショートプログラム(SP)で85.02点、フリーで166.50点、合計251.52点といずれも自己最高を叩き出し、銅メダルを獲得した。国立の難関・神戸大に通う4年生。受験等で競技から離れた時期もありながら、スケートに真摯に向き合い、歓喜の時を迎えた。

 SP3位で迎えた9日、フリーの曲目は名スケーター・高橋大輔も演じた「道化師」。当日の公式練習で調子が上がらなくても、本番リンクに立った壷井の視線は上向きだった。

「あれだけやったから、できるだろ」。揺るぎない自信の源は猛特訓だ。

 同門の坂本花織とは「たっちゃん」「かおちゃん」と呼び合う間柄。壷井の練習量には世界3連覇女王も舌を巻いた。坂本いわく、NHK杯に向けた曲かけ練習の比率は「たっちゃん、たっちゃん、たっちゃん、かお」。体力的に追い込み、限界に挑んできた。

「カギになる」とこだわり抜いたのが冒頭の4回転サルコー―3回転トウループの連続ジャンプ、そして続く単独の4回転サルコー。いずれも完璧に決めた。

 勢いに乗った壷井を止めるものはない。ジャンプを決めるたびに、独特の緊張感漂う代々木のリンクが拍手に包まれる。「倒れてもいい」。終盤のコレオシークエンス、3回転フリップまで大きなミスのない演技。フィニッシュの瞬間、大歓声とほぼ同時に溢れる感情が爆発した。

「プログラムが終わった瞬間に泣きそうでした。(高橋には)全然及ばないですけど、自分なりの道化師をこのNHK杯という舞台に残すことができたんじゃないかと思います」。両腕を何度も振り下ろしてガッツポーズ。SPに続く自己ベスト更新で、悲願の表彰台に立った。


辛い時期を乗り越え立った表彰台の景色が忘れられない【写真:荒川祐史】

■「いろんなものを捨てて」スケートに没頭、表彰台の景色に感慨

 昨年のNHK杯では9位。ミス続きの悔しさから1年、リベンジを果たした。もう一つ。会場の代々木第一体育館は、2019年の全日本選手権で棄権という苦い経験をした場所でもある。

「5年という長い年月を経てここに戻ってきましたけど、受験で一時期スケートに離れたり、神戸クラブに移ったり、いろんなことがあった。あの時怪我して、辛かった部分があったんですけど、諦めずスケートに向き合って努力してきて本当によかった」

 壷井は国立の難関・神戸大に通う4年生。怪我や受験を理由に、スケートから離れた時期もある。だからこそ本人も「ここまでスケートに懸ける大学生活になるとは思っていなかった」と驚きを口にする。

 旅行や遊び、周囲が大学生らしい時間を楽しむ間もスケートに没頭した。「いろんなものを捨てて、懸けてきたなと思います」。文武両道の生活は「しんどい」時期も当然あった。それだけに、表彰台から見た景色が忘れられない。

 2022年の世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得しているが、シニアの舞台では厚い壁にぶつかっていた。「幸せでした。このために頑張ってきてよかった」。コーチからも目標にするには早いと言われたGPシリーズ初のメダル。自分を奮い立たせるため、ちょっぴり背伸びして口にしてきた場所に届いた。

 12月の全日本選手権へ向け、自信はより深まった。昨年は7位。当時の最終組との差は「まだある。でも、ちょっとずつ近づいてきているという実感もあります」。目指すはNHK杯以上の演技。その先に、望んでいる年明けの国際大会出場が見えてくる。(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

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