日本に来て思う「天国にいるよう、私は幸せだ」 チェコ監督、18年前の東京から始まった小さな国の大きな夢
THE ANSWER / 2024年11月11日 13時33分
■チェコ代表ハジム監督が追い続けてきた日本野球
野球の「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2024 日本vsチェコ」が9日から2日間、愛知・名古屋市のバンテリンドームで行われた。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)以降、急速に関係が深まった両国の野球界。チェコ代表のパベル・ハジム監督にとっては、2006年から18年間ずっと追いかけ続けた繋がりだった。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
「私はとても幸せです。天国にいるようです。朝起きて、夢じゃないかと確認する時があるんです」
3万3758人が集結した9日の試合前。グラウンドに立ったハジム監督は客席を見渡しながら、感慨深げに笑った。侍ジャパングッズとともに、チェコ国旗や応援ポスターを掲げる人も。10日の第2戦は「レッツゴー、チェコ!」というかけ声や、応援歌の大合唱が日本のファンから沸き起こった。試合後にはチェコ代表が客席に向けてお辞儀。拍手に包まれた球場には、深まった両国の友好が溢れていた。
昨春のWBCで初出場・初勝利を飾ったチェコ。東京ドームでの1次ラウンドで日本とも対戦し、爽やかで懸命な戦いぶりとスポーツマンシップで、日本のファンの心を掴んだ。国内にプロ野球リーグはなく、消防士や教師といった本職を持ちながらプレーしていることも話題に。以降、侍ジャパン前監督の栗山英樹氏がチェコ野球の名誉アンバサダーに就任するなど、日本と積極的な交流が続いている。
この繋がりは53歳の指揮官にとってまさに念願だった。侍ジャパンが初代王者に輝いた2006年WBC。ハジム監督は日本を訪れ、東京ドームで大会を観戦。愛知も訪問し、小学校から大学、プロ野球まで「日本の全レベルの野球」を視察した。「日本の野球にとても興味を持っていました。何かを学びたかったんです」。当時はチェコ野球協会で小学生世代の育成を担当。目を向けたのが日本だった。
パベル・ハジム監督(右から3人目)は日本の野球文化に惚れ込んでいる【写真:小林靖】
■ハジム監督の野球は「30%が米国式、70%がアジア、特に日本式」
2週間の滞在で学んだ「カイゼン(改善)」の精神。「何かを試合中にしたければ、もっと練習しなくてはいけない」。課題を日々の練習で克服していく過程を重視した。米名門スタンフォード大やMLBロイヤルズの春季キャンプも視察したが、ハジム監督の野球は「30%が米国式、70%はアジア、特に日本式」。勤勉さ、規律、チーム精神、相手へのリスペクトを大事にする日本の野球文化に惚れ込んだ。
日本式野球を持ち帰り、17年後のWBCでは当時の育成年代が世界でも戦えることを示した。初出場・初勝利の快挙は「100%」日本のおかげだと断言。今回の強化試合も「天からの贈り物」と感謝した。「選手たちにとって、この経験は私たちの次の旅に生かせるもの」。2連敗に終わったが、世界ランク1位の強豪との対戦は今後の糧になる。2006年にまいた種が、いま実を結ぼうとしている。
チェコは日本時間10日に始まった「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」には出場しないが、2026年のWBCでは再び日本と同じグループに入る。「WBC、プレミア12、五輪が私たちの目標」というハジム監督。「私はここ日本の東京で、夢を抱いてスタートした。我々は小さな国だが、大きな夢がある」。10日の試合後会見で日の丸の鉢巻を巻いた熱血指揮官。情熱の物語はこれからも続く。(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
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