日本の職人技を絶賛「感覚がいいんだ」 野球チェコ代表を支えた「メイド・イン・ジャパン」の1本
THE ANSWER / 2024年11月12日 4時43分
■強烈なチェコ選手の打球…その裏にあった「HAKUSOH」の技術
野球の国際試合「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2024 日本vsチェコ」は、10日まで名古屋市のバンテリンドームで2試合を行い、日本代表「侍ジャパン」が2連勝した。ただチェコ代表は9日の第1戦、初回に先制するなど前半は互角に試合を進める場面も。そして目を引いたのが、ボールをとらえた時のパワフルな打球だ。ここに一役買っていたのが、日本のメーカー「HAKUSOH BAT JAPAN」。チェコ代表に20本ほどが提供され、さっそく実戦で使用する選手もいた。職人が一本一本に込めた「こだわり」とは。
10日に行われた第2戦。捕手として途中出場していたマルティン・ゼレンカに9回、最後の攻撃で打席が回った。日本の7番手、清水達也投手(中日)の低め149キロ直球をとらえると、痛烈なライナーが右翼へ。五十幡亮汰外野手(日本ハム)の好捕に阻まれたものの、乾いた打球音が場内に響き渡った。
この打席で、ゼレンカが使っていたバットは日本製。この大会に「HAKUSOH BAT JAPAN」が持ち込んだうちの1本だ。黒い“相棒”をゼレンカは「感覚がいいんだ。いいバットなんだよ。ボールをとらえた時、とてもいい感じで打球が飛んでいく。バランスもいい。だから気に入っているんだ」と大絶賛する。
現在、米国のノースカロライナ大学ウィルミントン校でプレーするゼレンカにとっては、金属バットが日常だ。このバットとの出会いは今回、チェコ代表が台湾から日本へと渡り歩いたアジアツアーでのこと。「この会社のことは数年前から知っていたけど、使う機会がなかった。この遠征から使い始めたんだ。今のところ、本当にいい感じだよ」。わずか1週間ほどで、あっという間に手になじんだようだ。
出会ったばかりの日本製バットを試合で使用、快音を響かせたゼレンカ【写真:羽鳥慶太】
■日本国内の製造業が「弱くなっています」職人技復権をかけて
同社は、木製バットを作って70年という専門メーカー。前身の製材店としての歴史は江戸時代にまでさかのぼる。相手先ブランドのOEMではなく、自社ブランドの展開を目指す中で目を付けたのが国際大会だった。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、ベネズエラとチェコにノックバットを提供。国旗のカラーで奇麗にペイントされており話題となった。
巨人と育成契約を結んで話題となったマレク・フルプ外野手や、独立BCリーグの神奈川にも在籍したミラン・プロコップ内野手ら、日本と縁のあるチェコ代表選手が自腹で購入したケースも。将来的にチェコ代表をスポンサードするという話もあり、今回の提供が進んだという。
同社の工場は愛知県豊川市にあり、日本製への徹底したこだわりが特徴だ。代表で、バットデザイナーの松本啓悟さんは「今は国内の製造業が弱くなっています。グローブやバットにしても、海外製造のものが増えている。その中で日本で作ることを大切にしています」と“こだわり”を明かす。材質もメープルやバーチといった北米で主流の木材以外に、北海道大と協力して北海道に自生する「ダケカンバ」製バットの商品化を目指している。
欧州の野球道具市場は米国メーカーが圧倒的。その中で同社は、松本さんが選手の要望にあわせて一本一本デザインし、手で削る“職人魂”で乗り込んでいこうとしている。選手たちも興味深そうに握り、振っていた日本製が、チェコ代表のスタンダードとなる日は来るか。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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