かつては世界最強も…キューバは「いい環境がない」 日ハム助っ人の危機感「日本はより真剣」【プレミア12】
THE ANSWER / 2024年11月21日 7時43分
■アリエル・マルティネスが語った日本とキューバの違い
野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」はオープニングラウンドを終え、キューバ代表はグループBで1勝4敗、6位という成績で敗退、帰国した。チームの核となったのは、NPBに在籍していたり、その経験があったりする選手だ。そのうちの1人が、アリエル・マルティネス内野手(日本ハム)。かつては世界最強と呼ばれたキューバ代表の現状や、日本での経験を教えてくれた。(取材、文=THE ANSWER編集部、羽鳥慶太)
2000年代までのキューバ代表は、文字通り世界最強だった。五輪では1992年のバルセロナ、1996年のアトランタ、2004年のアテネと3度の金メダル。2008年の北京五輪でも、決勝で韓国に敗れたものの銀メダル。ただその後は、国際大会へのプロ選手参加解禁という波に飲み込まれ、地位は相対的に下がる一方。特にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、2006年の第1回大会こそ決勝で日本と戦い準優勝したものの、その後は決勝に進めずにいる。
国際大会がアマチュア主体だった時代から、そのキューバ代表のライバルであり続けたのが日本だ。現在28歳のマルティネスは、キューバ北部の町、マタンサスの出身。同地のチームでキューバリーグにデビューし、2018年に育成選手として中日入り。その後支配下登録され、昨季からは日本ハムに移籍した。両国の野球の違いを、どのように感じているのだろうか。
「違いはとってもたくさんあると思う。日本の選手はより真剣だし、よりプロフェッショナルだし、よりハードワークする。だってハードワークすればコンディションが良くなり、その分お金も稼げるんだから。キューバでは練習の時間がとても短いんだ。野球自体は同じだと思うんだけど」。日本野球の象徴のように語られる練習量は、強さの鍵でもあると見ている。
「中日での5年間、練習ではいろんなことを学んだよ。体に対してもそうだし、身体能力に対してもそう。本当にキツかったけれどね」
■訪れた台北の名所、大谷と偶然の遭遇に驚き「いつか対戦したいね」
マルティネスが野球選手として成長していった時期は、キューバが国際大会での成績を落としていった期間とも合致する。その原因はどこにあると見ているのだろうか。
「やっぱり、国内リーグだろうね。20年前のような競争力のあるリーグではなくなっている。当時はキューバにいい選手が残っていたのに尽きるんじゃないかな。いい選手が日本に行ってプレーするくらいだった。今の僕みたいにね」
社会主義国のキューバと米国の間には渡航制限があり、トップレベルの選手たちが大リーグでプレーするには亡命するしかない。時には命を賭してでも米球界を目指す選手が後を絶たない。その影響は国内球界の空洞化につながり、若い世代の育成にも影を落としているという。
「現在のキューバには、いい環境がない。特に地方では、プレーする環境が良くない。子どもたちが使うバットもボールも満足にないんだ。野球で収益を生む手段がないから」。代表チームが強くなるためにも、経済的な基盤は不可欠だ。今回の大会に参加した意味を「選手たちにとっては、ここに来れば国同士の戦いを経験し、いろんな技術を知ることができる。いいことだと思うよ。自分をプレーで表現できるのはいつだって楽しいことだからね」と語るマルティネスも、キューバ野球の現状には顔を曇らせる。
台湾で偶然の遭遇があった。試合がなかった15日、台北を代表する超高層ビル「台北101」に行ったのだ。そこには大谷翔平投手(ドジャース)が大リーグ史上初の「50本塁打&50盗塁」を記録した際の記念ボールが展示されていた。
「知らなかったんだよ。ただ有名な場所だからと聞いて行ってみたんだけどね。そこに記念球があるなんてとても驚いた。日本人もボールを見るためにたくさんいたみたいだよ」と、日本最高の野球選手の影響力に驚く。「打っても投げても最高の選手なんて素晴らしいよ。100年に1人の選手だと思う。彼とは対戦したことはないけれど、いつか捕手として、打者として対戦してみたいとは思うね。とても楽しいんじゃないかな」。そんな夢を抱けるのも、国際大会があるからこそ。キューバの赤いユニホームを着て、大谷と相まみえる日を待っている。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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