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打率.200、本塁打0…たった一人で台湾表彰式を見つめた清宮幸太郎、洗礼を成長に変える“信条”

THE ANSWER / 2024年11月26日 7時43分

初めて侍ジャパンのトップチームに選出された清宮幸太郎【写真:小林靖】

■日本敗戦の瞬間もベンチ裏…出番4試合で残った悔しさ

 人一倍悔しい思いをしたのが、トップチーム初選出の清宮幸太郎内野手(日本ハム)ではないだろうか。24日、野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」決勝で、日本が0-4で台湾に敗戦。連覇を逃した試合終了の瞬間も、清宮はベンチ裏で素振りを繰り返していた。この経験でさらに強くなれると言い切れる理由がある。世界の舞台で見た、清宮の現在地とは。

 久々に立った世界の舞台は、清宮にとってほろ苦いものとなった。東京ドームで行われた決勝はスタメンを外れた。代打に備えてベンチ裏のスイングルームで準備。試合終了の瞬間もそこで迎えた。出場は4試合にとどまり、15打数3安打の打率.200。長打は23日のスーパーラウンド・台湾戦で飛び出した三塁打1本だけだった。

 決勝後の表彰式。銀メダルを首に掛けた清宮は、侍ナインがベンチ裏に退いてからも、優勝した台湾の表彰式をたった一人で見つめていた。台湾の高国輝打撃コーチに近づき、固い握手を交わした。日本ハムの昨年秋季キャンプで指導を受けた間柄。優勝にふさわしい野球を見せてくれた相手チームを称えてから、チームの輪に戻った。

 国際大会の洗礼を浴びた。13日にバンテリンドームで行われた豪州との初戦は「7番・DH」で初回に右前打したが、その後は3打席凡退。豪州は次々に投手を変え、4打席全て違う投手と対戦した。打者は複数の打席を経る中で球筋を見極め、攻略法を詰めていく。「その打席しか感じるものがないのはきついですね……」。どんどんバットを振ることで投球に合わせていきたかったが、打席数は増えなかった。

 清宮は2017年のドラフト会議で、高校生史上最多に並ぶ7球団の1位指名を受けて日本ハム入り。今季は89試合に出場し、打率.300、15本塁打、51打点。確実性の低さが課題だった過去のシーズンから長足の進歩を遂げ、追加招集で侍に加わった。ただ、育成年代からの国際経験は、どの選手にもひけを取らない。


スーパーラウンド台湾戦で三塁打を放った清宮【写真:小林靖】

■悔しい経験は成長の糧、プロ7年間の苦闘で培った信条

 2012年のリトルリーグ・ワールドシリーズで「東京北砂」の一員として世界一に。2015年U-18W杯では早実高1年で代表入りし、2017年の同大会は主将を務めた。一つ一つ、世界でのステップを踏んでここまでたどり着いた選手だ。それでも、トップチームの負けられない重圧はレベルが違った。

「U-18とかもあったんですけど、トップチームは日本全国の期待を背負っていると思いますし、注目度も全然違う。その中でのプレッシャー、期待の大きさとかはすごく感じています」

 台湾で行われたドミニカ共和国とのオープニングラウンド最終戦では、一塁守備で牽制球をそらす場面も。悔しさばかりがつのる今回の経験も、清宮には成長の糧にできる確信がある。プロ7年間の苦闘で培った信条だ。

「いろんな人たちを見てきて、あきらめない人に必ずチャンスは回ってくるし、そういう人が最後、チャンスをつかむのを見てきたんで。とにかく絶対にあきらめないという気持ちは強くなっています」

 そんな清宮にエールを送るのが、侍ジャパンの元監督で、2019年のプレミア12で日本を世界一に導いた稲葉篤紀氏だ。2022年からの2年間、日本ハムのGMを務める一方で、試合前にはジャージー姿で清宮を指導した。今季は2軍監督として、序盤は2軍生活も味わった清宮を支えた。3年間見続けて、今季の好成績は何か変化があってのことだったのだろうか。


一人で台湾の表彰式を見つめた後、台湾の高国輝コーチと撮影する清宮【写真:中戸川知世】

■「やっぱり五輪もWBCも出たい」、次世代を担う一員としての期待

「なんにもないのよ。実際のところ。なんにも変わってないの。コツとか感覚を、本人が自分のものにしただけなんじゃないかな。でも、それが一番大切なこと。ようやくそこまで来たとは、言えるかもしれないね」

 そして、侍ジャパンのフェーズの変化が「幸太郎には風が吹いているんじゃないかな。そういう巡り合わせを持っているんだよ」と言う。

 自身が監督を務めた2019年のプレミア12を「勝たなきゃいけなかった。とにかく、勝って注目してもらうしかなかった」と振り返る。「10年間も国際大会に勝てていなかった。とにかく勝たなきゃ見てもらえない」というほどの危機感だった。2009年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)以降しばらく、世界の頂点から遠ざかった日本。ただ、プレミア12優勝から一転、2021年東京五輪、昨年春のWBCを無敗で駆け抜けた。

 日本代表の立ち位置も変わってきた。稲葉氏は「もちろん勝つことは前提にあるんだけど、井端監督は後の世代につなごうとしてやっていると思うよ」と言う。侍のスキを見せない、きめ細かい野球を若い世代に引き継ぐという、さらに難しい段階に突入している。清宮も、日本野球の次世代を担う一員と期待されての選出だ。

 国際大会での連勝は27で止まった。侍には2026年WBCや2028年ロス五輪が待つ。清宮は「やっぱり五輪もWBCも出たいですし、メジャーにも行ってみたいですし、まだまだ夢はたくさんあります」。初侍での苦しい経験も、必ず糧にしてみせる。プロ7年間をもがきながら駆け抜けた清宮には、それだけの強さがある。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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