日本の高校球児だった侍J撃破の台湾主将 野球留学の学びを繋いだ世界一「技術、文化も…」
THE ANSWER / 2024年11月25日 10時3分
■台湾の陳傑憲、戸郷から3ラン「こんなこと想像できない」
野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」は24日、東京ドームで決勝を行い、台湾が日本に4-0で勝利した。敵地で悲願の初優勝。1点リードの5回に30歳の陳傑憲(チェン・ジェシェン)外野手が、日本の先発・戸郷翔征投手(巨人)から右翼席へ3ラン本塁打を放った。5打数3安打3打点に中堅守備でも貢献し、大会MVPに選出。岡山・共生高で高校球児だった当時から、12年後に叶った大きな夢。試合後は両国の野球交流がさらに発展するよう願った。
ダイヤモンドを回りながら突き上げた右手人差し指に、世界一への想いがこもっていた。
台湾の「3番・中堅」で先発した陳傑憲は1点リードの5回1死一、二塁で打席に立つと、フルカウントから低めの速球を豪快に引っ張った。打球は右翼席へ飛び込む貴重な3ランとなり、胸のチーム名を何度もアピールしながらホームイン。リードを4点に広げ、そのまま優勝へと突っ走った。この日3安打、今大会は24打数15安打で打率.625、2本塁打、6打点の大暴れでMVP。試合後はナインと何度も抱き合い、喜びを分かち合った。
「今は本当に夢みたいです。こんなことは想像できなかった。戸郷選手はとても素晴らしい投手だとわかっていたけど、負けたくなかった。自分を信じて一球、一球に向き合いました。神様を信じた結果で、ラッキーもあったと思います」
そんな陳傑憲の根っこには、日本の野球がある。高校時代は、岡山・共生高で白球を追った。2012年、最後の夏は「3番・三塁」が定位置。2回戦で関西高に破れ、甲子園には手が届かなかった。
「試合開始から試合終了まで決してあきらめない姿勢やチームワークの良さ、そしてグラウンドにいる選手も、ベンチにいる選手も、どんな時も一球、一球集中していること。こうした日本の選手の姿勢は、我々が学ぶべきものだと思っています」
日本野球の怖さ、粘り強さを知っているからこそ、その壁を超えたときの喜びも格別だった。
決勝戦で3ランHRを放ち、胸に手を当てる陳傑憲【写真:中戸川知世】
■続く台湾から日本への野球留学、新たな世代への期待「野球の技術だけでなく…」
「日本の野球はすごくすごく強いといつも思っていましたし、今回の優勝に関してもまだリアルだとは感じていないんです。この優勝が次に頑張るきっかけ、次に進むステップになればいいと思います」
日本と台湾の野球交流は様々なレベルで行われているが、今もかつての陳傑憲と同じように、甲子園を目指して日本の高校に留学する選手は多い。後輩たちへの期待を「野球の技術だけでなく、文化も学んで台湾に持って帰ってほしい。それをそばにいる選手にまた広げて、影響が広がっていけばいいと思います。それで次の素晴らしい選手が出てきたらいいなと思っています」と口にする。
台湾野球がさらに進歩する時、日本からの学びは欠かせないと見ている。今、日本の高校でボールを追う選手たちが、いつか自身のように代表でも中心選手になるのを願う。
陳傑憲の好きな日本語は「やればできる」だ。高校時代、いつも校長先生が生徒に向かって「共生の皆さん、やればできます」と口にしていたのだという。いつの間にか、脳裏にこびりついていた。立てた目標に、一歩一歩近づいていく術を学んだ。だから、東京ドームを包んだ熱狂が落ち着き、日付が変わろうとする頃、日本語で言った。
「やれば、できましたね。本当に」
2026年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が控える。台湾は予選からの出場となり、来年2月にはもう新たな戦いがスタートする。「私は2年後には32歳になります。また代表に選ばれるかはわかりませんけど、また私を必要と思ってもらえるなら、いつでも来られるように毎日準備をしたい」。台湾野球の歴史を変えたキャプテンに、当面休む時間はなさそうだ。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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