「僕は超一流ではない」元巨人ドラ1がチェコで大活躍のワケ 7か国で投げつかんだノウハウ「全て吸収」
THE ANSWER / 2024年12月16日 6時43分
■海外で投げ続ける村田透、今季は7か国目のチェコで大活躍
2023年の春に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をきっかけに、日本との野球交流が少しずつ進みつつあるのが東欧のチェコだ。今秋マレク・フルプ外野手が巨人と育成契約を交わしたように、選手の行き来も少しずつ生まれつつある。日本からチェコに渡った選手の中で、最も豊富な経験を持つのが巨人や日本ハムでプレーした村田透投手。米球界でマイナーから這い上がって大リーグのマウンドに立ったのをはじめ、これまで7か国で投げてきた国際派だ。チェコでの経験や、世界から見た日本野球について教えてくれた。
11月に名古屋市のバンテリンドームで行われた野球の国際試合「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2024 日本vsチェコ」で来日したチェコ代表の選手たちは、日本野球に並々ならぬ関心を持っている。その中に、村田の姿があった。かつて巨人にドラフト1位で入団し、その後は世界を股にかけて投げ続ける39歳。今季はチェコのトップリーグを戦うフロッシ・ブルノでプレーした縁もあり、チェコの練習を手伝いに来たのだ。
村田の球歴には世界のチーム名が並ぶ。大体大から2007年、大学・社会人ドラフト1位指名を受けて巨人入りしたものの3年で戦力外となり退団。その後は米球界に身を投じ、マイナー暮らしから2015年には30歳でインディアンスに昇格、1試合に先発している。
2017年から5年間は日本ハムでプレーして以降は再び世界に飛び出し、日本の冬に行われる豪州リーグのオークランド(ニュージーランド)やアデレードで投げた。日本の夏に当たるシーズンも、2023年にはドイツのボン・キャピタルズ、そして今季はチェコのフロッシ・ブルノに身を投じた。米国時代には、ベネズエラのウインターリーグに参加したこともある。
村田が今季、チェコで残した成績は圧倒的だった。13試合に登板し防御率1.71。リーグトップの11勝を挙げた。今回来日した代表で、4番打者を務めたマルティン・チェルベンカ捕手らとともに、チームがプレーオフ決勝まで進む原動力となった。見知らぬ土地でつかんだ成功。その理由はどこにあったのだろうか。
「郷に入ったら郷に従えではないですが、自ら合わせていくことではないですかね。感じて、近づいていくことだと思います。僕は超一流の選手として行ったわけではありません。特別な存在ではないので」
これまで7か国で投げてきた国際派の村田から日本野球はどう見えたのか【写真:羽鳥慶太】
■感じた日本と世界の違い「良くも悪くも、鎖国をしていた国」
何か特別なことをしたわけではない。ただ現地の言葉を少しでも使うよう心がけたという。「あいさつですね。『こんにちは』とか『ありがとう』とか『乾杯』とか」。チェコ語は変化が多く、日本人には難解なことで知られる。村田も「数字の1から3までを教えてもらった時にできなさすぎて、これは難しいなと思った」と苦笑い。それでもコミュニケーションは成り立った。柔軟な考え方のたまものだ。
「固定観念は良くないと思っているんです。物事をプラスマイナスで考えるのではなく、みんな吸収している。チェコ人はそこが得意だと思います。人もいいですしね」
バンテリンドームのグラウンドでは、チームメートだったチェルベンカと談笑する場面もあった。チェコ生まれでアメリカに渡り、マイナー3Aまで上がった選手だ。チェコ球界の現状を見れば「上のレベルで学べたら、もっとうまくなるんだろうなという選手はたくさんいます。チームメートのチェルベンカもそうですし、僕は見たことないんですけど、巨人に入るフルプもそんな選手ですよね」。まだまだ、伸びしろにあふれていると見ている。そんな国から日本野球はどう見えたのか。
「これはどう伝わるか分かりませんが」と前置きした上で口をついたのは、興味深い指摘だった。
「良くも悪くも、鎖国をしていた国だなと思うことがあります。日本の方が異質だなと思うこと、結構多いんですよ」
野球に限らず、日本と世界の違いを感じながら投げ続けてきた。今後の現役生活をどう考えているのか問うと「まだまだ勉強が足りない。いつ選手生活は終わるか分かりませんから。できるうちは続けたいと思っています」と力強い言葉が帰ってくる。それも、人生の目標を達成するためなのだという。
「引退してからも野球の仕事に就けるのが一番かもしれませんけど、僕の目標は1人の人間として“いいお父さん”であることなので」
そのために、今はもっと野球がうまくなりたいと願う。「世界の野球がすごい勢いで変わっています。情報が増えて、何でも動画や数字で見られるようになりました。ただ、どれが正解かはわかりませんし、また違ったものが出てくる可能性もある。米国の、常に新たなものを生み出していくパワーはすごいと思います。そこに我々もついていかないといけない」。これほど様々な野球を見てきた選手は、そう多くない。まだまだ貴重な経験を増やしていきそうだ。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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