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43年連続で子どもが減る日本 「頑張れー!」大手企業ら14社協賛、渋野日向子が寒空に響かせた声

THE ANSWER / 2024年12月25日 6時33分

主催するソフトボール大会でキャッチボールをする渋野日向子【写真:浜田洋平】

■ソフトボール大会「渋野日向子杯」を開催

 女子ゴルフの渋野日向子(サントリー)だからこそできる競技普及の形がある。主催する小学生のソフトボール大会「渋野日向子杯」の決勝大会が22日、地元の岡山県野球場で行われた。2022年から3年連続3回目の開催となり、21日の予選、準決勝に続き、県内の小学生351人が参加。大手企業が協賛し、2つの競技の普及から地域おこしにまで繋がる笑顔たっぷりの一日だった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 笑顔の溢れる大会は、シブコの挨拶から始まった。

 朝日が眩しい午前8時30分。「皆さん、おはようございます」。マイクを通じ、気温4度の球場に響く渋野の声。「楽しいことが盛りだくさんなので、怪我をせず頑張りましょう!」。少しずつ熱気が生まれ、選手はグラウンドに散らばった。

 ゴルフ教室で順番を待ち、引っ込み思案になる低学年の子どもたち。「誰から行く? 時間が少ないよ!」。渋野が初体験の子たちを誘った。「スゴーイ!」「初めてとは思えない」と褒め言葉を忘れない。「バッティングの時みたいにこうやって」と打者の感覚とすり合わせながら親身になった。

 参加者が楽しむことはもちろんだが、目玉の一つが始球式のガチ対決。渋野がマウンドに上がった。8歳から小学6年までゴルフとともにソフトボールに熱中。五輪女子ソフトボール金メダリストの原田のどかさん、「女イチロー」の異名を取った山田恵里さんにウィンドミルで投げ込んだ。ともに初球を詰まらせ、中飛、一ゴロに。バックを守る女子選手たちも、打球を落とすまいと必死だった。

 子どもたちが笑顔でプレーできる環境をつくり、小学校生活で最後の思い出になるように。渋野がそんな願いを込めて始まった大会。今年は男女混合16チーム(288人)、女子4チーム(63人)が熱戦を繰り広げた。試合以外にもスナックゴルフ教室、ソフトボール教室、ベースランニング大会で和気あいあい。


ホームラン大会のデモンストレーションに参加した渋野、全3球でサク越えはならず【写真:浜田洋平】

 渋野もホームラン大会で3スイングを披露。「大丈夫!」「頑張れー!」「いっけーー!」。マイクを握れば、上手くいかない子たちを励まし続けた。

「声がガラガラです。楽しく過ごせた一日でした。この大会だろうが、私の試合を見に来てくれた子だろうが、小さい子のパワーは無限大すぎます。見ているほうがこんなにパワーをもらえるのかと。迫力があるし、元気いっぱいなので初心に戻れますよね」

 初めてゴルフクラブを握った子も休まず打ち続け、終了時間が来ると物足りない様子だった。


記念撮影した山田恵里さん、渋野、原田のどかさん(左から)【写真:浜田洋平】

■協賛には大手企業がズラリ、JALやレクサスも…「自分一人ではできない」

 開催3回目の今年、大手企業が手を貸した。特別協賛がサントリー、興和、コムテック、Vポイント、JAL、ミック工業、キャンディル、JAグループ岡山、USレクサス、AIG。協賛はPING、アディダス、ZETT、PLAY SPORTS。渋野の契約先が多く、いち競技の地方大会、しかも小学生ではありえない。渋野の人柄があり、人気、認知度があるから。東京、大阪から報道陣が駆け付けた。

 主催者として開閉会式の挨拶、メダル授与式のプレゼンターなどで何度も登壇。そのたびに両手を前に揃え、綺麗なお辞儀で企業役員に頭を下げた。スポンサーの存在で成り立つゴルフ競技。感謝の伝え方も身にしみついている。

「3回も続けてこられたのは、たくさんのお力添えがあったおかげです。ソフトボールだけじゃなく、スナックゴルフもやってくださった。私は無知なので、ソフトボール教室は2人(山田さんと原田さん)の力が必要。岡山ソフトボール協会、審判員の方々、ゴルフも岡山協会などたくさんの方々のサポートがある。自分一人ではできない。私は楽しんでいるので、全く苦労していないです」

 自身の競技で普及活動に励むアスリートがほとんどだが、渋野には2つできる。「ゴルフを知る子が増えると嬉しいし、ソフトボールを知る子もいると嬉しい。一石二鳥の良い大会です」


ベースランニング大会でヘッドスライディングした選手に喜ぶ渋野ら(右奥)【写真:浜田洋平】

 今年はこの大会を目標に据えるチームが増えた。複数の少年団で結成されたチームは何か月も前から合同練習。練習試合を増やし、ナイターまで使うチームも。地域おこしにまで繋がっていく。

「凄く力を入れてやってくれているそうです。この大会をやっている意味を感じます。地域だけじゃなく、合同チームで仲間が増えれば視野も広がるし、みんなの人間力、協調性もたくさん上がるはず。ソフトボールだけじゃなく、いろんな幅が広がると思う。それを年々感じています。これからも岡山の風物詩になるように続けたいし、続けないといけない」

 43年連続で子どもの数が減り続け(総務省HPより)、各競技で“パイの奪い合い”が顕著なスポーツ界。ソフトボールは2028年ロサンゼルス五輪で2大会ぶりに復活するが、以降は不透明だ。08年北京、21年東京五輪金メダリストの山田さんは「ソフトボール界にとってもありがたい」と感謝の言葉を繰り返した。


閉会式でメダルをプレゼントする渋野(右)【写真:浜田洋平】

■子ともたちへ投げかけた言葉「みんながこれからどんな人生を歩もうと…」

 備前焼で作られたメダルは、渋野の提案で今年は四角になった。「ベースの形。毎年変えた方が嬉しいと思って。備前焼は一つひとつ柄が違うのでそれもいいと思います」。普及を心の底から願うが、強要はしない。「ゴルフを知るきっかけになれば。始めるまでにはいかなくても、ゴルフという競技があって、ボールを打つ楽しさを知ってもらえれば嬉しいですね」

 すっかり寒さがふっ飛んだグラウンド。土でユニホームを黒くした子どもたちへ、閉会式で笑みを浮かべながら投げかけた。

「みんながこれからどういう人生を歩もうと、この一日が本当に良かったと思ってもらえるように、みんなに楽しんでもらえたかな。これからもこの悔しさだったり、楽しさだったりを忘れずに歩いていってほしいなと思います。本当にありがとうございました」


会見で想いを明かした渋野【写真:浜田洋平】

 米ツアー本格参戦3年目の今季は海外メジャーで上位に入り、2季ぶりの年間シードを手中に収めた。21年10月以来、優勝がない。「情けない」「下手くそ」と自分を責めた日もあった。「もっと頑張らんといけん。なるべく早く勝ちたい」。輝く姿を子どもたちも待っている。

 会見で想いを語り終えた午後5時、ペコリと会釈した。「はるばる、岡山までありがとうございました~」。記者の心までも温かくしてくれる一日だった。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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