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狭き門の早大のスポーツ推薦枠「平均3人」 他校のような学費免除なし、志望高校生に面談で必ず聞く質問

THE ANSWER / 2024年12月26日 11時3分

早大競走部40名ほどの部員のうち半分は一般受験で入学し、選手それぞれが才能を伸ばしている【写真:中戸川知世】

■「箱根駅伝監督、令和の指導論」 早大・花田勝彦監督/第3回

 第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。チームを指導して3年目となる今シーズンは、結果がついてきているが、花田勝彦監督のチームビルディング巧みさが垣間見える。その柱となるが、スカウティングだが、どのような選手を求め、どう獲得しているのか。チーム強化の一丁目一番地について、早稲田大学は、どのような取り組みをしているのだろうか。(全4回の第3回、聞き手=佐藤 俊)

 ◇ ◇ ◇

――花田監督は、どういうところに注目してスカウティングをしていますか。

「早稲田大の場合、特待生の条件がまず全国大会で入賞していることが必要になります。例えばインターハイでの入賞や駅伝の全国大会での入賞です。そこをクリアしていないと、特待生枠を使えません。入賞を逃した中にもすごくいい選手がいますし、そこで声をかけられないのは本当に残念です。ただ、その基準をクリアしても試験があるので、単純に競技力だけというわけにもいかないところに難しさがあります」

――文武両道ができる選手ではないと推薦での特待生は難しいのですね。

「だいたい3名が平均なので、そもそも枠が多くありません。希望する高校生には、箱根なのか、世界なのか、今後の目標について話を聞きますし、試験についても話をします。文武両道で強くなる大学なので、そこは理解してほしいという話をしますね」

――面談で必ず聞くことはありますか。

「将来、どうしたいのか。どこを目指すのかというのは必ず聞きます。その際、卒業後も高いレベル目指して、将来はマラソンで五輪に行きたいとか明確な目標が聞けると嬉しいですね。常にひとつ上の目標を持つことはすごく大事なんです。箱根駅伝に出たいという目標だと、40名から16名に入ればその可能性が高まりますし、調子を崩した選手が出てきて10名に入れば目標が達成してしまいます。でも、区間賞を獲るのが目標だと出ることが通過点で、もっと頑張らないといけない。そうすれば、ひょっとしたら区間賞を獲れるかもしれないですし、悪くても3位とかになるかもしれない。一つ上を目指さないと、本来の目標に近づくことは難しいと感じています」


練習で選手にメニューを説明する花田監督【写真:中戸川知世】

■他校には特待生10名以上の学校も…

 スカウティングは、各大学で全く異なる。スポーツ推薦でも学費免除などの条件が異なるが、それでも10名以上、特待生として入部する大学もある。一般の入部希望者には必要なタイムを明示したり、募集をしていなかったりする大学もある。

――競走部には一般入試で入ってくる選手も多いのですか?

「推薦での特待生以外は、一般入試だったり、指定校推薦だったりですね。今、長距離にはスタッフを含めて40名ほど部員がいますが、半分はそうした一般受験で入って来た学生です」

――その場合、競技力に差があるので、部内でギクシャクすることはないのですか。

「意外とないんです。だいたい一学年で10名ぐらい入ってくるのですが、競技力が高い子と学力が高い子がうまく交わってバランスがいい感じです。競技で頑張っている選手に対して一般で入って来た子は『すごいな』と思っていますし、スポーツ推薦で入って来た子は一般で入って来た子が努力して上に上がってくるのを見て、『すごいな』って評価しているんです。

 私も学生時代、理工学部の同級生がいて、勉強が大変なので平日はほとんど会うことがなかったんです。週末しか一緒に練習をしなかったのですが、チームで一番練習をしていて、チームが総合優勝した時にその彼が8区区間賞を獲ったことが本当にうれしかった。今も推薦と一般でお互いが理解し、尊敬し合える関係性があるので、そこはすごくいい所だと思います」

――早稲田はブランド力があり、大学としての魅力が大きく、高校生に人気があると聞いています。

「希望者は多いのですが、スポーツ推薦の枠が少ないですし、他大学のように学費免除がありません。私も入学時は、経済的に裕福な家庭ではなかったので、瀬古さんに誘われた時、お断りしていたんです。でも、いろんな奨学金の話をしてくださって、親も将来、自分で返すのであればということで入学することができました。私は3つの奨学金を借りていて、ひとつは給付型でしたが、残りの二つは社会人になってから自分で返しました。

 今も早稲田には『都の西北奨学金』とかいろんな奨学金がありますし、実際に奨学金で競技を続けている子も多くいます。能力があるのに経済的な理由で大学に行けないのではなく、いろんな支援を受けて早稲田に来てもらい、早稲田に来てよかったと言ってもらえるようにするために、奨学金の紹介はしますし、私自身も11月に本を出版したのですが、その著者印税の一部をチームの強化のために寄付し、クラウドファンディング(2025年2月予定)で学生たちの強化のために寄付も募って、学生たちの練習環境をよくしていきたいと思っています」

(第4回へ続く)

■花田 勝彦 / Katsuhiko Hanada

 1971年6月12日、京都市生まれ。彦根東高(滋賀)を経て、早大で第69回(1993年)箱根駅伝4区区間賞を獲得し、同大会の総合優勝に貢献。エスビー食品に進み、1994年日本選手権5000m優勝。1997年アテネ世界陸上マラソン代表、1996年アトランタ五輪1万m代表、2000年アテネ五輪5000m、1万m代表など国際舞台でも活躍した。2004年に引退後は指導者に転身し、同年に誕生した上武大駅伝部で監督就任。2008年に箱根駅伝初出場に導くと、退任まで8年連続本戦出場を果たした。2016年にGMOインターネットグループ監督に就任し、駅伝参入初年度の2020年ニューイヤー駅伝で5位入賞。2022年6月に早大駅伝監督に就任し、今季が3シーズン目。2024年11月に著書「学んで伝える ランナーとして指導者として僕が大切にしてきたメソッド」(徳間書店)を上梓。(佐藤 俊 / Shun Sato)

佐藤 俊
1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)など大学駅伝をはじめとした陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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