1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

箱根駅伝5位→5位から3強崩しへ 10時間50分切りに現実味、早大が目論む「ひょっとして…」の条件

THE ANSWER / 2024年12月26日 11時4分

前回の箱根駅伝は2年連続5位だった早大、今回は3強崩しを目論んでいる【写真:産経新聞社】

■「箱根駅伝監督、令和の指導論」 早大・花田勝彦監督/第4回

 第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。早稲田大学の花田勝彦監督は、練習へは自宅から通っているが、週の半分は寮のコーチ部屋に泊まって学生とともに生活している。ほぼ全員が集まるポイント練習がある日以外は、あえて練習には顔を出さずに学生主体で各個人に任せる。それでも選手は着実に力をつけ、選手層も徐々に厚くなり、上位を狙えるムードが高まってきている。3年目となった今シーズン、過去の2年間とは異なる取り組みがあったのだろうか。結果だけを見ていると、何かにチャレンジしているように見えるのだが、果たして。(全4回の第4回、聞き手=佐藤 俊)

 ◇ ◇ ◇

――2024年シーズンは、駅伝の成績が安定していますが、新たに取り入れた練習などあったのでしょうか。

「練習のメニューは、大きな変化はないのですが、そのメニューをこなせる選手が増えました。昨季ですとチームの半分ぐらいしか消化できなかったのですが、今季は夏合宿に参加しているメンバーのほぼ全員ができるようになりました。そうなると、練習のレベルも自然と上がってきて、選手層も厚くなりました。出雲駅伝は6位、全日本(大学駅伝)は5位ですが、その結果に安堵はしても、満足している選手はいなくて、なかには『もっといけるでしょう』という選手もいました。2つの駅伝ではチームの力がだせていないので、箱根では全員がベストの走りができるとおもしろくなるかなと思っています」

――練習の成果が今季の成績に繋がっている感じですね。

「結果に対しての裏付けがないと選手もチームも強くなりません。選手の中には練習しなくても走れちゃう子がいるんです。でも、私はそういうタイプではなかったこともありますが、先の競技人生を考えると、練習=試合という結果の方が継続していけると感じています。結果に対して練習の裏付けがちゃんとあったほうが、どんな状況になっても選手もチームも簡単に崩れないんですよ。でも、1発当てにいくようなチーム作りをしていくと当たった時はいいけど、そういうチームは一度崩れると立て直すのが難しい。石橋を叩いて渡るじゃないですけど、普段の練習を着実に積み重ねていくことが大事だと思っています」

 チームは、エースの存在が大きく、その浮沈がチームの結果に大きな影響を及ぼす。早稲田大も過去、大迫傑を始め、太田智樹らエースがいたが、今季は3年生がエースの看板を背負っている。

――エースは山口智規選手ですが、他選手は、山口選手を遠い存在として見ているのか、それとも追い抜くべき目標としてとらえているのでしょうか。

「伊藤(大志・4年)は、負けたくないという意識でいますが、他の選手は、『山口さん、強いな』と思っている子が多いです。うちには学生のトップレベルの山口と伊藤、石塚(陽士・4年)がいますが、彼らは駒澤大の篠原(倖太朗・4年)君のように、どんな大会でも確実に走るレベルではない。どんなレースも確実に戦える選手をつくっていきたいですし、長屋(匡起・2年)や工藤(慎作・2年)、山口(竣平・1年)らはひょっとしたら山口のようになっていくんじゃないかなという雰囲気は持っています」

――工藤選手は、出雲も全日本も快走し、評価が高いのではないでしょうか。

「工藤は、早稲田に来る際、5区で区間賞を獲りたい。将来は、マラソンをやって、(2028年の)ロサンゼルス五輪に出たいと目標が明確でした。箱根のことはもちろんよく話をしますが、五輪から逆算してどのタイミングでマラソンに取り掛かればいいのか、どのレースを考えればいいのかなど、そういう具体的な話をしています。そういう先を見ている選手は、伸びていくので、今後が楽しみです」


早大を指揮して3年目になる花田監督【写真:中戸川知世】

■区間のポイントはやはり山「下りを強化して誰を置くか」

 2024年シーズンは、出雲、全日本と國學院大が優勝し、箱根で3冠達成できるかどうかがフォーカスされている。早稲田大は、出雲が6位、全日本は5位と安定しており、箱根でどんなレースを展開するのか、期待を膨らませている人が多い。

――今年は國學院大、駒澤大、青学大の3強と言われていますが、上位校との差をどう考えていますか。

「うーん、やはり上位3校が100%の力を発揮すると、そこに食い込むのはなかなか難しいですね。たぶん、この3チームは、10時間45分を切ってくると思うんです。うちは10時間50分を切るのを目標にしているので、その差はまだ少しあると思っています。実際、今年の全日本で優勝した國學院大とは5分の差がありますから、単純に倍にすると10分の差がある感じなので、箱根ではなんとか5分以内に差をとどめておければと考えています」

――区間のポイントとしては、やはり山ですか。

「上りは、前回5区6位の工藤がいますので今年も行けると思いますが、下りは北村(光)が卒業してしまったので、そこが早稲田大にとってポイントになりますね。そこを強化して誰を置くのか。あと、主要区間で他の大学と比べると、持ちタイム的には劣っているので、そこで区間賞争いをしてくれる選手が出てくるとチームとして一気に上に上がって来れるかなと思います」

――3強の牙城を崩せるチャンスはありますか。

「自分たちの力を出し切れば、箱根で10時間50分を切れるところには来ていると思います。それを実現すれば、昨年度でいえば3位に入れるわけです。城西大が10時間52分台で3位でしたからね。全日本から2か月で力を上げて実力で優勝するのは正直なかなか難しい。自分たちが100%を出しつつ、周囲が崩れていけば相対的に順位が上がっていくと思うので、とにかく運とチャンスをしっかりと掴んで、力を出し切ることですね。そうしたらひょっとして、というのが起こるかもしれないと思っています」

(終わり)

■花田 勝彦 / Katsuhiko Hanada

 1971年6月12日、京都市生まれ。彦根東高(滋賀)を経て、早大で第69回(1993年)箱根駅伝4区区間賞を獲得し、同大会の総合優勝に貢献。エスビー食品に進み、1994年日本選手権5000m優勝。1997年アテネ世界陸上マラソン代表、1996年アトランタ五輪1万m代表、2000年アテネ五輪5000m、1万m代表など国際舞台でも活躍した。2004年に引退後は指導者に転身し、同年に誕生した上武大駅伝部で監督就任。2008年に箱根駅伝初出場に導くと、退任まで8年連続本戦出場を果たした。2016年にGMOインターネットグループ監督に就任し、駅伝参入初年度の2020年ニューイヤー駅伝で5位入賞。2022年6月に早大駅伝監督に就任し、今季が3シーズン目。2024年11月に著書「学んで伝える ランナーとして指導者として僕が大切にしてきたメソッド」(徳間書店)を上梓。(佐藤 俊 / Shun Sato)

佐藤 俊
1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)など大学駅伝をはじめとした陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください