「良い馬が多くて迷う」今年のホープフルS 超名牝シーザリオの仔が教えてくれた2歳G1馬の指標
THE ANSWER / 2024年12月26日 11時53分
■2018年ホープフルSを勝ったサートゥルナーリア
中央競馬は暮れの大一番・有馬記念が終わったが、まだまだ熱い戦いは続く。正真正銘、今年のラストJRAG1となるホープフルステークスが28日に中山競馬場の芝2000メートルを舞台に行われる。来春のクラシックを見据える2歳馬による中距離王者決定戦。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏は6年前、まだ実力未知数の若駒が調教で叩き出した衝撃タイムを見て、G1ホースになることを確信したという。
◇ ◇ ◇
ホープフルSがG1に昇格したのが、2017年。過去7頭の勝ち馬の中には牡馬三冠を果たし、今後は種牡馬としても期待されているコントレイルの名があるものの、個人的に最も記憶に残っているのはサートゥルナーリア。
デビューは2018年6月10日の阪神芝1600メートルだったが、初見は4月の栗東。すごく雰囲気のある馬がいると思い、ゼッケン表を見ると母の名が「シーザリオ」。評判には聞いていたけど「やっぱ、スゴイわ」と。この感覚は半兄のエピファネイアの初見の時に感じたもの、という話はキャロットクラブの会報誌でも書かせていただいた。
ただ、デビュー前の追い切りでは目立って速い時計を出していたわけではなかった。むしろ、こんな時計で大丈夫というレベル。おまけに最終追い切りのCWでは併せ馬で遅れ。手応えが悪く遅れたわけではなかったが、追い切りで動くようなタイプではないのかなという印象を持っていた。
新馬戦を無事勝ち上がり、2戦目に萩Sを選択。この時の調教、10月15日の栗東坂路でやっぱり動く馬なんだと思い知らされる。それが「11.6秒」という4ハロン(F、800メートル)目のラップ。この時の4F時計は55.5秒なので、これだけ遅い数字なら、これくらい出るよねという意見はもちろん分かる。ただ、問題はそこではなく、3F目が13.4秒だったところから1.8秒も加速したことが驚き。しかも坂路なので、傾斜がきつい箇所での加速だから、スピード的な瞬発力だけでなく、パワーも半端ないことが証明されるようなラップだった。
もちろん、萩Sも完勝して2連勝でのホープフルS。すでに坂路で動くことは分かっていたが、分かっていてもベタ褒めするしかなかったのが最終追い切り。2F23.8秒、ラスト2Fが11.9秒、11.9秒というラップ。これで持続力もあるんだということが分かったし、この時も2F目から3F目の区間で1.8秒加速している。2歳とは思えない凄まじい動きを見せているが、この映像はJRAレーシングビュアーに加入していれば、今でも確認することができる。4F目区間に入ってから軽く促しただけでこの走りができる、そんな馬が2歳のG1を勝つんだという、一つの指標にしてもらってもよいかもしれない。
当時は坂路の時計しかデータ提供されていなかったが、今ではトラックのウッドチップ馬場(美W、CW)でも詳細のラップを確認することができる。
■今年のホープフルS、初見で「これは走る」と思ったのは…
今年のホープフルS出走予定馬の中で、栗東での初見で「これは走るな」と思ったのが、クロワデュノール。そもそも、斉藤崇史調教師の評価が高かったこともあるが、調教を見るたびに「斉藤厩舎にキタサンブラック産駒はフィットする」という過去の経験則が間違っていないことを実感したから。ちなみに経験則になった馬はブラックブロッサム。5戦4勝、脚元の関係で今年5歳で引退してしまったが、無事ならきっとG1を勝っていたと思うし、クロワデュノールがそれを叶えてくれるかもしれない。
ただ、デビュー戦を見て強いなあと思ったデルアヴァーがあの時とは比べものにならないくらい追い切りで動いた1週前追い切りを評価すれば、前走でクロワデュノールに完敗したとはいえ、その差を詰めてくるかも知れない。
いやいや、同じ松永幹夫厩舎のヤマニンブークリエも1週前追い切りの動きは素晴らしかったし、ジュタも半端ない動きを見せた。2歳戦だから迷うというよりも、良い動きを見せている馬が多くて迷うというのが、今年のホープフルSだと思う。(井内 利彰 / Toshiaki Iuchi)
調教をスポーツ科学的に分析した適性理論「調教Gメン」を操る調教捜査官。競馬予想TV!(フジテレビONE)に出演中。JRAの競馬場、ウインズのイベントに出演し、JRA主催のビギナーズセミナーの講師としても活躍。著書に「競馬に強くなる調教欄の取扱説明書」「調教Gメン-調教欄だけで荒稼ぎできる競馬必勝法」「調教師白井寿昭G1勝利の方程式」などがある。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【ホープフルS】クロワデュノールはCWコースで絶好の動き 斉藤崇調教師「とにかく心肺機能が強い」
スポーツ報知 / 2024年12月25日 12時8分
-
【ホープフルS】クロワデュノールは「もう全部がいいですね」22年に大けがから復帰した鞍上が絶賛
スポーツ報知 / 2024年12月24日 6時15分
-
【ホープフルS】26年春に定年を迎える国枝栄調教師、牡馬クラシック初制覇へ期待する牝馬3冠馬アパパネの子
スポーツ報知 / 2024年12月24日 6時0分
-
【ホープフルS・山下の特注馬】中山でセンスの良さが生きるクラウディアイは侮れない
スポーツ報知 / 2024年12月23日 11時27分
-
あの武豊が「不思議な馬」と評したドウデュース 放牧明けの馬体にあった“距離不安”を覆す根拠
THE ANSWER / 2024年12月12日 10時33分
ランキング
-
1大谷翔平の“敗北”に「これ以上の間違いはない」 ジャッジ派の炎上司会者すら異議
Full-Count / 2024年12月26日 20時32分
-
2大谷翔平が「凄いメンツの中に」 日本人が野球を代表…米放送局選出の8人が「レジェンド」
Full-Count / 2024年12月26日 14時17分
-
318歳日本人が“3億円超”「凄い」「抜けてる」 3か月で価値急上昇…ロス五輪世代1位に
FOOTBALL ZONE / 2024年12月26日 19時10分
-
4早田ひな、Tリーグに今季初出場 左手首のけがから回復途上
共同通信 / 2024年12月26日 21時16分
-
5米スタンフォード大の佐々木麟太郎 妹・秋羽らと大谷翔平の父に近況報告「私たちの恩師」
スポニチアネックス / 2024年12月25日 22時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください