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“脱・厚底シューズ”をしたら練習に変化 目標は箱根5位以内、敢えて進めた「吉田抜き」が転機に

THE ANSWER / 2024年12月28日 10時34分

エース吉田礼志を擁して予選会を突破し、箱根駅伝に挑む中央学院大は総合5位以内を目標に準備を進めている【写真:産経新聞社】

■「箱根駅伝監督、令和の指導論」 中央学院大・川崎勇二監督/第4回

 第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。今回、箱根予選会を5位で突破した中央学院大は、5位以内を目標して準備を進めている。国学院大、駒澤大、青学大の3強、さらにシード権を狙う大学に対して、どのように戦っていくのだろうか。(全4回の第4回、聞き手=佐藤 俊)

 ◇ ◇ ◇

――今シーズンは、どのようにチーム作りを進めていったのでしょうか。

「これは、もう昨季から言い続けているのですが、吉田(礼志・4年)抜きのチーム作りをしようと。昨季の全日本大学駅伝の予選会で吉田がフラフラになって連続の出場記録が途絶えたんです。その時、私が『吉田抜き』を言う前に当時のキャプテンの飯塚(達也)が『監督がいつも言っているように吉田に頼っているからこうなるんだ。これからは吉田抜きで考えよう』と言ってくれたので、そこからその方向性でチーム作りをして、今季も継続してきました。でも、今季の全日本予選会を突破できなかった時、吉田の方から『夏は実業団の合宿に行かず、チームを引っ張っていきます』と言ってきたんです」

――監督は、その判断を受け入れたのですか。

「いえ、吉田には『実業団の合宿に行きなさい』と伝えました。彼は死ぬ気で頑張って東京の世界陸上やロス五輪を目指しているので、『実業団の合宿に行って、さらに自分を磨いて強くなって戻ってくればいい。自分を殺してまでチームを優先しなくてもいい。自分の今後の人生を大事にしろ。お前抜きだって今のチームはやっていけるから大丈夫だ』と話をしました」

――選手からは目標の提案などはあったのでしょうか。

「学生からは、目標を全日本大学駅伝予選会3位通過、箱根駅伝予選会はトップ通過、本戦5位以内に決めたと言ってきたんです。これを聞いた時、『本気で考えているのか』と聞き直しました。本気ならこれに沿った練習をするのでレベルが上がり、怪我のリスクも高くなるという話をして、差し戻したんです。でも、『覚悟を持ってやります』というのでスタートしたのですが、現実には選手が壊れて全日本予選会は主力の半分が使えなくなりました。秋の箱根の予選会前も『トップ通過を目指すなら同じレベルの練習をしないといけないので、同じことを繰り返さずにできるか』と彼らに問うたんです。学生たちは『やる』と言い、予選会を5位で通過した。よく頑張ってここまで来たと思います」

 夏合宿では、ジョグをしっかりこなすようになり、吉田不在の中、3年生で副将の近田陽路を軸に声が出るようになった。近田が練習を引っ張り、副将として行動で示してくれたことでチームがどんどん変わっていった。

――夏合宿を終えての手応えは、いかがだったのですか。

「非常に良かったと思います。吉田が帰ってきた時、『こんなにチームが成長しているとは思わなかった』と驚いていました。吉田がいなかったことで個々の選手の成長を促すことが出来たかなと思います」

――練習等に新たに取り組んだこと、取り入れたことがあったのですか?

「練習を変えたり、新しいことに取り組むことはなかったです。ただ、走る量は増えました。それから夏合宿の前からスピード練習や実戦的な練習以外は、厚底シューズを履くのをやめました。それで距離走をさせていると、選手は『足にきました』と言っていましたが、『それが普通だから。これまでいかに足を使わずに走ったのか、分かればいい』という話をしました。それ以降、いつも厚底を履きたいという子はいなかったですね」


今回の箱根は3強以外混戦、川崎監督は「5位6位もあれば、15位もある」とみる【写真:中戸川知世】

■今回の箱根は3強以外混戦「5位6位もあれば、15位もある」

 駅伝シーズンに入り、出雲と全日本は、ともに国学院大が優勝した。2位駒澤大、3位青学大と2大会とも結果がまったく同じで、今季は3強と言われている。

――出雲と全日本を見て、どういう感想をお持ちですか。

「上位3校と、創価大が優勝を狙えるところで、それ以下は、あまり差がないのかなと思います。そこで差がつくのが、どれだけ選手を揃え、コンディションを整えられるかというところでしょう。5位6位もあれば、15位もある。そんな箱根になりそうです」

――チームは、箱根5位以内という目標です。

「正直、5位以内は、自力では無理だと思います。全員が90%の力を発揮して、なおかつ他が自滅してくれるとその可能性があるかなと。うちは70%では通用しないので90%以上の力を出せればいい。身の丈に合った戦いをしないと失敗するので、まずは90%を出せるように日頃の練習から選手の表情をしっかりチェックして行きたいと思います」

――山の区間は、自信ありそうですね。

「前回は、足に不安のある柴田を起用しました。柴田は、ずっと足を故障していたので上り切っても下れないだろうと思っていたのですが、案の定(区間16位)そうなりました。ただ、今年は順調に来ているので、柴田に関しては問題なく5区を任せられると思います。6区は、前回は小松(裕大朗)が直前に絶不調になりまして、代えがいなかったのでそのまま起用したのですが、ここも案の定ダメ(区間16位)でしたね。小松もここにきて、調子が上がっているので、山は両方で良い準備をして結果を出していきたいと思います」

――悩む区間はありますか。

「うちは1区ですね。前回は稲見(峻)を起用して失敗したので、1年かけてもう1回と思ったのですが、故障してしまったので。出雲と全日本はスローペースになったので、箱根もと思って油断していると危ないですね。ハイペースにならないと決めつけるのが良くないので、どちらでもいけるように準備したいところですが、1区をどうするのかが一番の懸念材料です」

――最終的には箱根の総合優勝が目標になりますか。

「いや、優勝は無理ですね。若い頃は、そう思っていましたけど、今、冷静に考えると無理でしょう。留学生を連れてくればそのチャンスがあるかもしれないですけど、私はそうまでして勝ちたいと思いません。私は、今の大学では箱根に出続けることに意味があると思いますし、そのなかで学生が5位を目指したいとか、目標に向かって頑張ってもらうことで十分じゃないかなと思うんです。大学時代、優勝できなくても実業団で五輪とかに出てもらって活躍してくれた方が私はうれしいですし、選手にとってもいいことだと思うんです。だから昔も今も箱根はあくまで通過点という位置付けは変わりません。ただ、そこに甘えることもしたくないので今年も勝負していきたいと思います」

(終わり)

■川崎 勇二 / Yuji Kawasaki

 1962年7月18日、広島市生まれ。報徳学園高(兵庫)で全国高校駅伝に出場するなど活躍し、順大では3年生だった1984年箱根駅伝に出場(7区区間9位)。卒業後の1985年に中央学院大の常勤助手になり、駅伝部コーチに。1992年に監督就任。1994年に箱根駅伝初出場を果たす。2003年からの18年連続を含め、今回で計24度目の出場。2015年から5年連続シード権を獲得し、最高成績は2008年の3位。現在は法学部教授として教鞭を執る。(佐藤 俊 / Shun Sato)

佐藤 俊
1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)など大学駅伝をはじめとした陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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