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進む円安を肌で実感 「負けると後は自腹で…」1泊3万円超、帰りはエコノミー 切実な“テニスとお金”

THE ANSWER / 2025年1月8日 11時54分

47歳となる今季、日本協会の強化選手に復帰を果たす男子プロテニスの松井俊英【写真:本人提供】

■テニス選手にのしかかる遠征費…松井俊英、強化選手に復帰しても「大きな岐路」

 男子プロテニスの松井俊英(フリー)が今季、15年ぶりに日本協会の強化選手に復帰する。ダブルスで長年、日本のトップとして戦い続けたからこその偉業だが、一方では今が現役生活の「めっちゃ大きな岐路」なのだという。4月に47歳を迎える年齢以上に問題なのが、金銭的な問題だ。プロテニス選手が、本場欧米の大会を転戦しようとするといくらかかるのか。貴重な“お財布事情”を聞かせてくれた。(前後編の後編)

 ◇ ◇ ◇

 松井は昨年12月23日付けのダブルス世界ランキングが日本人トップの146位。同じく日本ランキングが2位。この種目では常に日本の上位でプレーしてきた。それでも常に悩まされるのが遠征費の問題だという。

「私が主に出場するのは、ATPチャレンジャーツアーという大会ですが、これはホテル代は主催側で出してくれます。ただし、負けた試合の夜までなんです」

 ここ数年、為替相場が円安に振れていることもあり、欧米への遠征は金銭負担がどんどん増している。

「例えばスイスに行って転戦することを考えると、大会のある日、月、火曜日まではホテル代が出ますが、1回戦で負けてしまうとここで終わり。次週に向けてその後の水、木、金、土曜日は自腹になりますが、1泊200ドル(約3万円)は下りません。さらにスイスフランでの決済だと、もっと高いこともありますね」

 飛行機移動も、行きは身体への負担を考慮してビジネスを選び、帰りはエコノミーにするなどの工夫を重ねている。それでも日本からの欧州往復は40~50万円はかかる。1か月遠征すれば「100万円は覚悟しないとダメですね。勝てば賞金があるのである程度チャラにはなりますが……」。ダブルスを主戦場とする松井は、パートナーと滞在費などをシェアできることもあるが「賞金も半分ですから。いろんなところでやりくりしないと」と苦笑いだ。


遠征費の問題を抱えながらも競技を続ける松井【写真:本人提供】

■家族持ちの選手にのしかかる現実「金がないと始まらない」

 特に、円安の影響を感じるようになったのがこの2年間だという。「2023年はひどかった。コロナ明けは一時、燃油サーチャージが高くなって……。昨年はそっちは落ち着いて、飛行機はまだ安いチケットも探せるようになりましたけどね。今度は滞在費が上がって……」と悩みは尽きない。

「独り身だったら赤字が出ても何とかなるかもしれませんが、遠征費でカツカツになると……。これ以上続けていいのかと考えることもありますよね」

 松井は妻と12歳、4歳の子ども2人を抱える4人家族。「奥さんは元選手なので理解があります。『ポイント取ってこい!』という感じで海外遠征に送り出してくれますし、試合のアドバイスをもらうこともあります。ただ、家庭のワンオペはキツそうで……。僕がもっと親子の時間を大事にしたいというのもあります」

 12月から、所属を離れてフリーとなった。来年の選手活動については、どこまでの範囲で叶えられるのか思案中だという。「金がないと、何をするにも始まらないのが現実です。何とか頑張ってくれ、続けてほしいという声もいただきますし、1月からはシーズン開幕まで時間がない中で営業活動もしようと思っています。スポンサーになっていただけるようでしたら、インスタグラムのDMで連絡していただけると……」と、幅広い層に呼びかける。

 シーズン中に47歳となる今季、シングルスのポイントを勝ち取って世界ランキング入りし、歴代1位の最年長世界ランカー記録を更新するという野望もある。サービスで時速200キロを叩き出す肉体はいまだ衰えを感じさせない一方で、競技を続けるには歳を重ねれば重ねるほど、様々な壁も現れる。今季踏み出す道に注目だ。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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