30億円契約・井上尚弥にもう一つの重圧「落とせない」 陣営も「いろいろな意味で…負けない」

計量をパスした井上尚弥【写真：高橋学】

■興行は「Lemino」で独占無料生配信

　ボクシングの世界スーパーバンタム級（55.3キロ以下）4団体統一王者・井上尚弥（大橋）は24日、東京・有明アリーナでWBO11位キム・イェジュン（韓国）と4団体防衛戦を行う。23日は神奈川・横浜市内で前日計量が行われ、両者とも55.2キロで一発パス。延期と対戦相手変更が続いた異例の興行が成立した一方、井上陣営は“勝利以外の重圧”を挙げた。興行はNTTドコモの映像配信サービス「Lemino」で独占無料生配信。戦績は31歳の井上が28勝（25KO）、32歳のキムは21勝（13KO）2敗2分。

　王者の井上から計量。一発パスがコールされ、両腕で力こぶをつくりながら肉体美をアピールした。キムもクリアし、陣営から拍手と声援。井上は4団体とリング誌のベルト5本を持ち、恒例のフェースオフで14秒睨み合った。落ち着いた様子かつ精悍な顔つき。小さく頷きながら目を合わせ、日韓世界戦で火花を散らした。

　計量後は「本当にいよいよ。長かったなというのが率直な気持ちです。延期、対戦相手変更と2度あったので、より楽しみ。待ち遠しいですね」と試合を熱望。陣営の大橋秀行会長も「万全ですよ。本人も延期はプラスだったと言うし、一番近くで見ていて動揺もない。相手が代われば普通は困惑するものですが、キャリアがあるので」と信頼した。一方で日本人ファン以外からの期待を明かす。

「サウジアラビアも注目しています。いろんな意味でプレッシャーがかかる」

　井上は昨年11月にサウジアラビア最大のエンターテインメントフェスティバル「リヤド・シーズン」と推定1900万ドル（約30億円＝発表当時）のスポンサーシップ契約を締結。今回から試合用トランクスのベルト部分に「リヤド・シーズン」のロゴが入る。

　次戦は4月頃に米ラスベガスで大型興行、9月頃に莫大な資金力を持つサウジアラビアでの試合を計画中。今回勝たなければ計画に大きな支障が出るとあって、重圧は計り知れない。だが、大橋会長は「プレッシャーはかかりますが、プレッシャーに負ける選手ではありません。うちに来て12年でいろいろ乗り越えた。問題ないです」と揺らがない。

　この日、井上も破格契約を結んだ影響について「契約したからといって、何か自分の中で大きく考えが変わるわけではないです。だけど、契約1戦目で落とせない、一つの大きな試合ではあると思います。気負うことはなく、そこは自分を信じてやるだけ。ラスベガスとサウジの試合を両立していけたら」と冷静。「もちろん明日の試合が一番大事」と気を引き締めた。

　井上と対戦予定だったWBO＆IBF1位サム・グッドマン（オーストラリア）の左目上裂傷で1か月延期され、再負傷で対戦中止になった興行。最初の延期決定後にリザーバーとして前座へ準備していたキムが、急遽代役となった。（THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada）