大学受験で日本代表を辞退「今じゃない」 考えた家族の負担、53歳のいま胸を張る高校時代の決断【車いすバスケ】
THE ANSWER / 2025年2月2日 7時43分
■車いすバスケットボール天皇杯
目前に迫った夢を捨てるのは難しい。車いすバスケットボールでパラリンピックに4大会連続出場した53歳の大島美香(ワールドバスケットボールクラブ)は、高校時代に憧れの日本代表入りを断った。大学受験に専念し、自立した生活基盤をつくることを優先。のちに2000年シドニー大会で銅メダルを獲得したが、進路選択の背景には家族への思いと夢を諦めない信念があった。
二分脊椎症の大島は生まれつき下半身不随だった。物心がつく前から興味を持った車いすバスケ。始めたのは中学2年、近くには男子のチームしかない。それでも、週1回の練習にくらいついた。頭角を現し、日本代表候補合宿に呼ばれたのが高校2年。小学校の卒業文集に記した夢まであと一歩だ。しかし、大学受験を選んだ。「今のタイミングじゃない」
脳裏に家族の姿があった。生活、送迎、金銭面……。「まずはきちんと生活の基盤をつくって、親に迷惑をかけずに自分で練習に行けるようにしたい」。遠回りに迷いはなかった。日本福祉大に進み、自動車免許を取得。アルバイトで生活しながら練習もした。「将来必ず日本代表になれる。いや、なると決めていた」。夢は捨てていない。自分の決断に責任を持ち、どんな時も日の丸を追った。
車いすバスケットボール天皇杯、準々決勝で男子に交じってプレーする大島【写真:中戸川知世】
次のチャンスは来ないかもしれない。「だからこそ、死に物狂いで練習しなきゃ」。自分を売り込むため、春休みは愛知から関東の練習にも参加。「バスケ漬けの人生を一度送ってみたい」と3年間でほぼ全単位を取得し、4年目は競技に没頭した。その1994年、世界選手権で念願の代表デビュー。2年後のアトランタ大会から4大会連続でパラリンピックのコートを駆け回った。
2014年に男児を出産。翌年に現役復帰し、再び日の丸を背負った。43歳、ブランクもある。代表レベルの練習は「しんどかった」と歯を食いしばった。代表を引っ張れたのは「世界を倒したい」という夢の力があったからだった。
今大会は男子チームの一員で出場。1日に東京体育館で行われた準々決勝で敗れたが、32分間動き回った。「車いすバスケは人生を楽しむための通過点。強い心を持って、どんどん挑戦してほしい。できないことにぶつかることにも価値がある」。あの決断があったから手にした成長。胸を張って次世代に送ってくれたメッセージには、説得力が詰まっていた。(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
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