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羽生結弦さん「ちょっと今、放心してる状態」 単独ツアー完走、万感の思い「心と正義を信じて、まっすぐ進んでいきたい」【囲み取材全文】

THE ANSWER / 2025年2月9日 20時50分

「Echoes of Life」千秋楽で演技する羽生結弦さん【写真:(C)Echoes of Life Official】

■「ICE STORY 3rd -Echoes of Life- TOUR」が千秋楽

 フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌と五輪連覇を達成しているプロスケーター・羽生結弦さんが出演・制作総指揮するアイスストーリー第3弾「ICE STORY 3rd -Echoes of Life- TOUR」が9日、千葉・ららアリーナ東京ベイで千秋楽を迎えた。「命」「生きること」をテーマに、昨年12月から埼玉、広島、千葉を回った。公演後には取材対応。「これからまたどんどん変わっていけるんだなっていう感触、実感が今はあります」とアイスショーを通じ、成長を感じていた。

 開場の14時30分を前に、ららアリーナ東京ベイにはファンが大挙。海外から訪れた観客もおり、グッズ売り場は長蛇の列ができていた。自らが制作総指揮する壮大なアイスショー。氷上の演技で魅せたのはもちろん、スクリーンに流れる映像もまるで羽生さん主演の映画のよう。音響、照明にもこだわりを詰め込んで約2時間半、大いに観客を沸かせた。

 アンコール前、羽生さんは目に涙を浮かべて深々と一礼。「僕が執筆して、そこから始まる僕の頭の中、気持ち、心臓の中、魂、そんなものを全て詰め込んだ本当に大変な作業がたくさんあった」と感極まった様子で語り、「全てのスタッフに大きな拍手をお願いします。ありがとうございました」と支えてくれたスタッフに感謝した。

 公演後には囲み取材に応じた。以下、一問一答。

――ツアー完走。今の気持ちは。

羽生「とにかく頑張ったなということと、やっぱりこのアイスストーリーというものに関わってくださっている方々の規模が、本当に類を見ないぐらい多くの方々が関わってくださって、僕のためにどれだけの方が動いてくれてるのかっていうことに対しての感謝の気持ちでいっぱいです」

――千秋楽。制作総指揮を務めたが、自分の中の完成度は。

羽生「もう、これ以上ないなって言う出来で締めることもできたので、ちょっと放心状態ではあるんですけど、とにかく……何て言うんですかね。言葉とか文字だけでは僕は表現しきれないし、このアイスストーリーというものは、スケートだけでもやっぱり表現しきれない唯一無二のものだと思っている。今日の演技と演出と物語がこうやって映像で残ったり、見に来てくださった方々の記憶に残ったりしてくれるのが本当に嬉しいなっていう気持ちでいっぱいです」

――バラード1番が素晴らしかった。ショーのリンクは暗く狭いが、今日はどう臨んだのか。

羽生「本当に最初からかなり苦戦して、改めてショートプログラムの旧ルール、旧採点ルールの中のショートプログラムで、後半に2回ジャンプを跳ぶ。それがトリプルアクセルと4回転―3回転というジャンプっていうものの難しさを改めて感じました。フリーとはまた違う緊張感、そしてフリーとは違って回復する余地がないのがショートプログラムの特徴で、非常にいろんなものが詰まっているからこそ、フリーよりも難しいんだなということを、今回ツアーを通して改めて感じました。

 ピアノの前に4曲ですかね。4曲やってて、既に『あー、つらいな』って思いながら出ていく難しさと、これは僕の希望だったんですけど照明つき、そしてまた会場によってリンクサイズが変わるということもあって、非常に調整が難しかったですが、本当に氷の職人さんも含めて、皆さんが一生懸命やってくださったおかげで何とかできました」

――まだ終わったばかりだが、次への構想はあるか。

羽生「ないです。(構想は)ゼロです(笑)。とにかくちょっと今、放心してる状態でちょっと頭が上手く回ってないかもしれないんですけど、とにかくこうやって皆さんが集まってくださるのもそうですけれども、『なんて特別なんだろうな』っていうことをしみじみと心に染み込ませながら、今というときを過ごしています」

――未来に向けて、どんな生き様を見せていきたいか。

羽生「僕がこの物語を執筆して、実際ツアーを完走して、自分自身の考えが深まったことの一つなんですけど『未来なんてやっぱ誰もわかんないな』っていうことが、このツアーを滑りながら一番自分の心の中に残ったものです。それは北京オリンピックもそうでしたけれども、どんなに努力してもやっぱ『報われないな』って思うこともあるし、どんなに一日一善をして、どんなにいいことを繰り返していたとしても、不幸なことが起こってしまうのが未来だし。だからこそ簡単に『こんな生き様』とは言えないんですけどでも、とりあえず生きている今を、自分の心と自分の正義を信じて、まっすぐ進んでいきたいなっていう気持ちはあります」


自ら制作総指揮。演出、照明などにもこだわり抜いた【写真:(C)Echoes of Life Official】

■孤独に対し「大丈夫だよっていう気持ちで表現したつもり」

――「Mass Destruction」について。自信たっぷりで挑発するような振りもある中、あの時のNova(主人公)の心境はどういったものなのか。

羽生「あの曲自体が戦闘曲なんですよ。音をまといながら音を武器として戦っているっていうか、何て言うんですかね……。ペルソナのゲーム的にはシャドウっていう敵がいるんですけど、自分は音を使いながら、自分のペルソナを召喚して戦うっていうイメージでやってます。それを一般向けにどうやって話せばいいんだろうと思ったんですけど(笑)。音をまといながら、ダンスをしながら、憎悪のいわゆる負の感情みたいなものに対して、喜びの感情とか楽しいみたいな感情とかで押し潰す感覚でやってます」

――ダニーボーイについて。埼玉公演では安堵感のようなものを感じた。今日はその前の2曲が力強く感じた分、静けさを感じた。どんな気持ちだったのか。

羽生「今思い出してるんですけど、どんな気持ちだったかな……。そのときは必死で。とにかく何か、全身で祈るっていうイメージでずっと滑ってました。その祈りがダニーボーイのいわゆる原点にある、死者への弔いっていう意味の祈りもあるし、ここに来てくださっている会場の皆さんの希望への祈りであったりとか、僕自身の個人的な幸せへの祈りだったりとか、作ってくださってるスタッフへの祈りだったりとか。本当に『ゴチャッ!』っていろんなものが混ざってしまってはいるんですけど、一緒くたに音とともに祈るっていう気持ちで、ただひたすら祈ってました」

――浄化した憎悪への祈りもあったのか。

羽生「あのシーンって、あの世界の中で生命がほとんどなくなってしまった中で、やっとその芽吹きが与えられることに気がつき始めるっていうところで。自分の周りに命が宿っていくことへの祈りというか。その一つ一つの命がどうか育ってくれますように、みんな生きてくれるようにっていうことへの祈りがNovaとしては一番強かったです。最後は『みんな生きて』って言ってました」

――アイスストーリー第3弾まで共通して「孤独」がインスピレーションの源になっていると思うが、作品を作るうえで比類のない規模での協力があり、作品の中でも孤独に対する答えが用意されている。経験を重ねてきた中で「孤独」は自分の中でどういう位置づけになったか。

羽生「あんまり孤独とは思ってないんですよね。ただ何か、戦わなきゃいけないときだったり、もちろん人間誰しもが持っていることだと思うんですけど、全てを共有できるわけではない。とても悲しいことだけれども、自分の苦しみだったり喜びだったりを全部共有できるわけじゃないじゃないですか。それってみんな孤独だなって思ってて。

 でも、だからこそ人間は言葉というものを使うし、文字を使うし、それをNovaで表現したかったのは、たとえその世界で1人だったとしても、文字や記録や音とか、そういうものがある限りは1人じゃないんだっていうことを表現したつもり。僕が孤独だとかっていうのは最近は思ってないんですけど、ただ皆さんの中にあるちょっとした孤独、みんなが気づいてくれない孤独みたいなものに対して『いや、大丈夫だよ』っていう気持ちで表現したつもりです」

――シーズン中の試合と同じように、公演を重ねるごとに素晴らしいものができ上がってきた。今回の公演を経て、また何か超えられたなと思うものはあるか。

羽生「新しいトレーニングも始めてみて、可動域を上げるとか、単純に柔軟性が上がるとかっていうだけじゃなくて、使える体の動きとどれだけリカバリーを早くできるかっていうこと。あとは何だろう、自分の特徴であるしなやかさ、美しさみたいなものへの磨き方みたいなことを、広島の直前ぐらいから練習を始めてるんです。それがやっと今回、まとまってくれたなっていう感覚で今います。これからまたどんどん変わっていけるんだなっていう感触、実感が今はあります」(THE ANSWER編集部)

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