なぜ、エリートが生まれる? 野球部で過ごした2人が思う「早慶の体育会」の強さ

THE ANSWER / 2019年5月22日 10時33分

早実、早大で甲子園出場、大学日本一を経験した内田聖人【写真:本人提供】

■「内田聖人&谷田成吾対談第3回」―高校から7年間過ごした2人が感じた“つながり”

 アマチュア球界で異端の道を歩んだ2人の25歳がいる。内田聖人と谷田成吾。内田は早実、早大で甲子園出場、大学日本一、谷田は慶応から慶大で世代別日本代表など、輝かしい実績を持つ。社会人野球の名門・JX-ENEOSではチームメートとして都市対抗出場を目指し、汗を流した。そんな2人は昨年から今年にかけ、人生をかけたチャレンジに挑み、大きなターニングポイントを迎えた。

 内田は故障の影響で17年限りで社会人を戦力外になって以降、野球の道を捨てず、天然ガスの営業マンとして社業に勤しむ一方、個人でトレーニングに励んだ。結果、自身でも驚くような復調を遂げ、今年2月から1か月、米国に渡り、トライアウトに挑戦。米強豪独立リーグと契約を勝ち取り、会社を退社して今月から米国に渡る。最大の目標は、MLBもしくはNPBで成り上がることだ。

「由伸2世」の異名で知られた谷田は昨年3月にJX-ENEOSを退社。MLBトライアウトに挑戦し、複数のメジャー球団から声がかかり、テストを受けた。惜しくも契約はならなかったが、以降は日本で四国IL徳島でプレー。NPBドラフトを目指したが、指名は叶わず。25歳で潔く現役引退を決断。今年1月から六本木のIT企業に入社し、ビジネスの世界で成功を目指して第二の人生をスタートさせた。

 そんな2人がこのほど対談。米国挑戦の背景から2人が育った早慶野球部の秘話、現在の野球界に思うことまで本音で語り合った。今回のテーマは「早慶の体育会」。前編となる第3回は、高校から7年間過ごした2人がなぜ早慶を選び、実際に体育会で感じた空気を語る。エリートが生まれるイメージが強いが、その要因とは――。次世代の高校生にとっての進路選択のヒントを探る。

 ◇ ◇ ◇

――2人は高校から早稲田と慶応の出身。なぜ、早慶を選んだのか。

内田「自分は中学校まで公立。当時は勉強ができたので高校は頭が良く、野球が強いところに行きたくて、スポーツクラスがないところと考えたら、早実か慶応に絞られた。中学生ながらに、野球だけの人間になりたくなかった。早実にしたのはユニホームが好きだったというのも大きい」

谷田「中学の時は最初、『帝京からプロに行きたい』くらいしか考えてなかった。大学なんて頭の片隅にもない。たまたま自分を(AO入試で)見つけてもらって、という感じ。その中で、早実、慶応、桐蔭学園の話があり、早慶で迷ったけど、上田誠さん(当時監督)の考え方が好きだった」

――そういう時に将来を含めた早慶のブランド力は考えた。

内田「やっぱり伝統も考えた。斎藤佑樹さんの代で優勝して凄い学校と思ったし、田舎出身(静岡・伊東)だったので早稲田なんて行く子もいない。だから、早稲田のブランドに対する憧れも正直あった。ただ、入ったらそのブランドは今までの人が形成してきたものなので、結局は自分次第。でも、野球部の場合はユニホームの憧れも大きくない?」

谷田「ユニホームがカッコいいというのは頑張れる要因になるよね」


慶応から慶大で世代別日本代表など、輝かしい実績を持つ谷田成吾【写真:本人提供】

■エリートのイメージが強い「早慶の体育会」の空気感は?

――2人は高校、大学と7年間、早慶の道へ。特に大学はエリート感のイメージが強い「早慶の体育会」。実際、どんな空気感か。

谷田「慶応は後輩思いの人が圧倒的に多い。体育会に限らないけど、後輩がいたら助けてやろうという人と出会う確率が高い。特に在籍期間が長いほど、高校より中学、中学より小学校からいる人の方が『お前、慶応なのか』と助けてくれる人が多かった。簡単に根付くものじゃないけど、文化としてそれが受け継がれているのが素晴らしいなと思う」

内田「それはあるね、早稲田も一緒。やっぱり、早実OBの方が強く感じるけど、今でも面倒見てもらっている人は多い。いつまで立っても後輩なんだよね、きっと」

――縦のつながりが強い早慶の強みは社会に出ても感じるか。

内田「強いよね。周りが良く思ってない部分はあるかもしれないけど……」

谷田「自分はもともと両親を含め、周りに慶応いなかった。たまたま運良く慶応を知ったけど、慶応、早稲田だからすべてがいいといこのはないと思う。後輩思いの人は多いことはあるけど、だから人生が決まったみたいなことはない。どうかな?」

内田「自分は就活をやったわけじゃないけど、結局は最初に見られやすいのは学歴。そこはいい大学入ったなと思うけど、自分はそこからもう飛び出したので早稲田という肩書がそこまで影響はない。レールは乗りやすいんじゃないかとは思うけど」

谷田「うちの会社は慶応もあまりいないけど、関係ない。優秀な人は大学に関係なく、優秀だし。引っ掛かるフックにはなるかもしれないけど、その人のことを凄く見せてくれるわけでも、凄くなるわけでもない。結局、大学で何をやったかどうか」

内田「自分は高校も大学も『野球部だから』という目で見られなかった。どうしても野球部は特有のイメージが付きやすいけど、高校時代は“ただ頭が丸いヤツら”みたいな扱いで仲良くしてくれた。だから、今も部活以外でつながった友達から学ぶことは凄く多い。野球部も推薦組はレベルが高いけど、中等部出身や一般入試組は正直あまりうまくない子もいた。

 でも、そういう人たちから学ぶことはたくさんある。勉強とか、何かで頑張ることができる人。自分はそんなに勉強したわけじゃないけど、そういう環境だったから、生きていく知識は自然とついたと思う。地元の伊東で3年間過ごすのと、早実から大学まで早稲田で7年間過ごすのでは全然違う自分ができていると思う。早稲田にいて良かったとは思っているかな」


「早慶の体育会」の強さを語った谷田成吾(左)と内田聖人【写真:編集部】

■縦のつながりも影響「OBもエリートだったりすると、自分もそうなるんだと」

――聞いていると、野球部以外の交友関係から受けた影響が大きそう。2人は野球部以外の友達も多かったのか。

谷田「高校は特に多いかな。未だにクラスで集まるし、大学もクラスの友達がいる」

内田「大学は体育会のつながりが多かったけど、周りにいる意識のレベルが高い人から受ける影響は凄く大きいと思う」

谷田「陸上の為末大さんも言っていたけど、視座が高いグループにいると自分に大きく影響が出る、ここにいたらダメだと思ったらすぐにチームを変えていたと。周りにいる人の影響はかなり大きいよね」

――エリートが生まれやすい早慶の体育会の強さは、競技に打ち込む努力と周囲の意識の高さによる影響が大きいのか。

内田「まさにそれだと思う」

谷田「OBもエリートだったりすると、自分もそうなるんだと基本の基準で思いやすい。それに見合う行動を取っていけば、自然と引き上げられるところはある」

内田「そういう環境だと、変な道の外れ方はしないかな」

谷田「それはそれで考え方が偏る側面もあるよね。ビジネスで成功するだけがすべてじゃない。自分はそういうのを目指したいけど、それに合わなくて道から外れる人もいる。ほどほどに頑張って生きるのが幸せという人も、エリート的な価値観からすれば落ちこぼれ感が出ることもあるけど、本来は考え方が偏っているだけ。いろんな視点があっていい。内部進学とか、いろんなところから集まってごちゃまぜになり、話を聞いたりして時間を過ごしたりした経験が貯まって、いいものができ上がる。そう考えると、自分は公立の中学から高校で慶応に入り、地元の友達もいて付属から来た友達もいて、凄くラッキーだったなと思う」

内田「谷田ジュニアができたら慶応に入れる?」

谷田「それは入れたいと思う。いい大学だから」

内田「それは思うよね。どうしても子供も親に影響されるから、そういう教育になっていく」

(23日掲載の第4回に続く)

◇内田 聖人(うちだ・きよひと)

 1994年3月1日、静岡・伊東市生まれ。25歳。伊東シニアで日本一を経験。早実高2年夏に甲子園出場し、背番号1を着けた3年夏は西東京大会で高山俊(現阪神)、横尾俊建(現日本ハム)らを擁する日大三に2失点完投も準V。早大では1年春に大学日本一を経験したが、3年時に右肘を故障。社会人野球JX-ENEOSに進んだが、故障の影響もあり2年で戦力外に。以降は社業に就き、天然ガスの営業マンを務める傍ら、個人で1年間トレーニングに励んで復調。今年2月から1か月間、米国でトライアウトに挑戦し、2Aクラスの独立リーグ・キャナムリーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。会社を退社し、NPB、MLBに挑戦する。右投右打。

◇谷田 成吾(やだ・せいご)

 1993年5月25日、埼玉・川口市生まれ。25歳。東練馬リトルシニアから慶応高に進学。通算76本塁打を放った。甲子園出場なし。慶大ではリーグ戦通算15本塁打をマーク。4年秋にドラフト指名漏れを味わい、社会人野球のJX-ENEOS入り。高校、大学、社会人すべてのカテゴリーで日本代表を経験した。社会人3年目の18年3月に退社し、MLBトライアウトに挑戦。複数球団の調査を受けたが、契約に至らず。帰国後は四国IL徳島でプレー。昨秋のドラフト会議で指名ならず、引退した。一般企業20社以上から興味を示されたが、今年1月にIT企業「ショーケース・ティービー(現ショーケース)」入社。WEBマーケティングを担う。右投左打。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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