ただ波に乗るだけじゃない サーフィン東京五輪候補、大原洋人が教える観戦術

THE ANSWER / 2019年8月24日 11時33分

五輪代表候補でプロサーファーの大原洋人【写真:荒川祐史】

■五輪会場は日本のサーフィンの聖地、千葉県一宮町の釣ヶ崎海岸

 いよいよ来年に開催が迫った東京オリンピック。今大会では5競技18種目が追加されたが、そのうちの1つがサーフィンだ。ウォータースポーツとして広く親しまれる競技ではあるが、いざ試合となるとどんな基準で採点され、何が見どころなのか、分からない人も多いだろう。そこで五輪代表候補の1人であり、ワールドサーフリーグ(WSL)のクオリファイングシリーズ(QS)に参戦しているプロサーファー、大原洋人に観戦のポイントを聞いた。

 サーフィンの五輪開催地に選ばれたのは、千葉県一宮町にある釣ヶ崎海岸だ。通称・志田下ポイントとも呼ばれる九十九里浜の南端に位置する海岸は、日本ではサーフィンの聖地とも呼ばれる場所。ほぼ一年中、波に乗れない日はないというポイントで、わざわざ一宮に移住してくるサーファーもいるほどだ。大原が生まれ育ったのは、まさにこの一宮町だった。

「本当に何も分からない人が見ると、波に乗っているところだけにしか目がいかないと思うんです」

 この大原の言葉に大きく頷く人も多いだろう。そこで、まずは簡単なルール説明をしたい。

 サーフィンの試合は、通常「ヒート」と呼ばれる組み分けをする。多くの国際大会では、4人が1ヒートに入る4メンヒート方式を採用している。4メーンヒート方式の場合、4人が同時に海に入り、得点が高い上位2人が勝ち抜ける。波の状態にもよるが1ヒートは約20〜30分で、マキシマムウェーブという条件が付かない限り、その間に何本でも波に乗っていい。5〜7人のジャッジが行う採点は、技の種類や難易度、オリジナリティ、スピード、パワーなどで評価。点数の高かった2本の合計点で順位を争う。

 また、波に乗るための優先権があり、多くの大会では優先権を決めるためにプライオリティルールを採用。このルールでは、ヒート開始直後のプライオリティがない状態で、最初に波に乗ったサーファーから順番に一番低いプライオリティを持つことになる。つまり4メンヒートの場合、ヒートが開始した後、最初にサーファーAが波に乗ったら、Aは4番目のプライオリティを持つことになり、次にサーファーBが波に乗ったら、今度はBが4番目のプライオリティを持ち、Aが3番目のプライオリティに繰り上がる。そのため、波を待つ間も他のサーファーをいい波に乗らせないよう巧みにブロックしたり、少しでもいい位置を確保するためにフェイントをかけたり、目には見えない心理戦が繰り広げられている。


サーフィンでは、波に乗る前から巧妙な駆け引きが行われている【写真:荒川祐史】

■波に乗るまでの心理戦もポイント「自分をどれだけ優位な状況に置けるか」

 試合では、この心理戦が「7割くらいを占めているんじゃないかと思います」と大原は話す。

「沖で波を待っている時間の方が長いんですけど、全員ただ漠然と待っているわけじゃない。自分のポジションや他のサーファーのポジションを見ながら、こうやって波が入ってきたら自分はこう動こうって考えているんです。大事なのは、いかに他のサーファーにプレッシャーを与えるか。プレッシャーが焦りにつながって、いい波に乗ってもコケちゃうこともある。あとは、波に乗る優先権を上手く使って、相手をわざと悪い波に乗せたり、逆にいい波に乗せないようにしたり。そうやって自分をどれだけ優位な状況に置けるか、試合でどれだけ自分が状況をコントロールできるかが大切になります。

 ただ海に入って、いい波に乗るだけじゃなくて、波を待っている間にどれだけ相手の気持ちを潰していけるか。他のサーファーと駆け引きをしつつ、自分が狙っている波に乗ってベストのサーフィンをする。だから、制限時間がスタートしてから終わるまで、ずっと頭の中でいろいろなシチュエーションを考えながらやっていますね」

 波に乗る前から巧妙な駆け引きが行われているとは、知らない人も多かったはず。波を待っている間の位置取り、他のサーファーとの距離感や動きなどに注目すると、また違った楽しみ方ができそうだ。

 そして、やはり目を惹かれるのは、波に乗り、サーフボードを操る姿だろう。波の反発力を利用して空中に飛び上がって一回転する「エアーリバース」、波を一気に駆け上がって空中に舞い上がり、見事着地を決める「エアリアル」など高度な技を、いかに大きな波でダイナミックに成功させるか。それぞれの技に対して点数は決められておらず、難易度の高い技をスムーズに連続して決めれば高得点が期待される。いかにダイナミックに創造的でスピード感溢れるライディングができるか。試合では、そんな点にも注目してみたい。


大原は、9月に宮崎で開催される世界大会の現地観戦を強く勧めた【写真:荒川祐史】

■9月に宮崎で世界大会、トップサーファーと一緒に海に入るチャンスも

 9月7日から15日には、宮崎県宮崎市の木崎浜海岸で「2019 ISAワールドサーフィンゲームス」が開催される。五輪予選も兼ねた大会には、世界からトップサーファーが集結。参戦予定の大原は、ぜひ現地での観戦を勧めたいという。

「日本で世界大会が開催されることは、なかなかありません。サーフィンをしている子供たちやサーフィンが上手くなりたい人は、絶対に見に行った方がいいと思います。応援するのはもちろん、世界のトップサーファーが当日の波でどういうサーフィンをするのか見るべきですね。想像できないようなサーフィンをしてくると 
思うので、それを目に焼き付けるいい場所だと思います」

 さらに、大会当日の試合時間を除けば「練習だったらトップサーファーと一緒に海に入ることも可能」だという。

「試合以外は、朝の試合が始まる前とか、夕方の試合が終わった後とか、試合がない日とか、そういう時間だったら選手が海に入っていても、一般の人が入っちゃいけないということはない。そうしたら、一緒にサーフィンすることもできますし、ラッキーだったら教えてもらうこともできますよ」

 会場によっては、試合中に波の乗った後、観客の歓声がサーファーの耳にも届くことがあるという。いいサーフィンをした後の大歓声は「結構、僕うれしいんで(笑)。いっぱい応援してほしいですね」と大原。五輪開催までに、見る側もまた、予行練習を重ねておくのもいいかもしれない。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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