英語恐怖症で英語が話せぬ・読めぬ米国人作家、ウルフソンの不器用な生活とは?

tocana / 2013年11月28日 21時30分

 いきなりだが、以下のセンテンスを正しく読める人はいるだろうか?

"Tu'nicht tréb über èth hé zwirn!"

 おそらく読める人はいないだろう。なぜならこの文章、フランス語、ドイツ語、ヘブライ語の単語を(文法的な正しさはいっさい無視して)組み合わせたものだからである。

 ちなみに内訳(?)は次の通り。

 Tu'nicht→ドイツ語

 trébucher→フランス語

 über→ドイツ語

 èth hé→ヘブライ語

 zwirn→ドイツ語

 しかしいったい誰が、何のために、こんな暗号のような文章を組み立てたのだろうか?


■英語恐怖症だった、ルイ・ウルフソン

 上記の文章の作者は、ルイ・ウルフソンというアメリカ人である。ウルフソンは極度の英語恐怖症(統合失調症の一種)を患っているので、アメリカ人にもかかわらず英語をいっさい使用しないのである。そのため、ウルフソンはすべての文章を独自のシステムを使って他言語へ翻訳しなければならない。

 ちなみに上記の一文の原型は、

"Don't trip over the wire!"(針金につまずくな!)

 である。

 なんの変哲もない英語のセンテンスだが、統合失調症のウルフソンにとって英語は恐怖以外の何物でもない。

 というわけで、音声の似た、しかし意味のまったく異なる他言語へ(たとえば英語のDon't はドイツ語の Tu'nicht と、英語の trip はフランス語の trébucher と、英語のover はドイツ語の über と、英語の the はヘブライ語の èth hé と、 英語の wire はドイツ語のzwirnと発音が似ている)翻訳しなければならないのだ。


■ウルフソンの奇妙な生活

 ルイ・ウルフソンは1931年ニューヨーク生まれ。母親と同居し、絶えざる恐怖と戦いながら日々生活している。

 たとえばウルフソンはほとんど一日中、フランス語やドイツ語など外国語学習をして過ごすが、理由はもちろん英語と接する機会を極力少なくするためである。

 ときどきニューヨーク市内の散歩も試みるが、そのときはもちろん万全の体制で臨む。携帯用短波ラジオに聴診器を接続し、耳からいっさいの英語を締め出すのである。しかし、こうしたさまざまな努力にもかかわらず、もっとも苦労するのが食事だ。

 ウルフソンは缶詰を常食としているが、英語で記述されたラベルを読むことができないので、どの缶詰を選ぶかは「勘」に頼るしかないのである。その日の食事がツナ缶になるか、トマトペーストになるか、コンビーフになるか、あるいはスイートコーンになるか...。缶詰を開けてみるまで分からないのである。

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