唇の中を移動するミミズ、その時男は......!?

tocana / 2013年11月29日 16時30分

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 専門家の言うことを鵜呑みにすると、真実にはたどり着かない......。そんな教訓を寄生虫から教わったという、男がいる。

 その男とは、米国ウィリアム・アンド・メアリー大学において生物学の教壇に立っている、ジョナサン D. アレン博士(36)だ。

 彼は最近、学会誌『Journal of Tropical Medicine』上にて、自分の頬に寄生虫が感染した際の状況を詳しく記した論文を発表し話題となっているのだ。この論文には、寄生虫がアレン博士の頬から唇にかけて感染し、そこからつまみ出されるまでの数カ月間にわたる状況を詳細に記述している。

 アレン博士が初めて口腔内に異変を感じたのは去年の12月のこと。

 教壇に立っている最中に、突然、口の中の粘膜に不思議な違和感を覚えたのだという。

 彼によると「始めの3カ月は、喉の奥のほう(舌が届く範囲)に違和感があったが、それがだんだん唇のほうへと移動してきて、指で触れられるようになり、やっとそこに何かがいることに気づいた」らしい。

 疑問に思った博士は、周りの人たちに自分の違和感について相談したが、不幸にもアレン博士が助けを求めた専門家たちは誰も役に立たなかった。

 さらに、かかりつけの歯科医に紹介された口腔外科医に診てもらっても「何も異常は見られない」と言われるだけ。変色した部分を指して、何かいるのではないか? と尋ねても「私は毎日患者さんの口の中を見ているんですから」と言って取り合ってもらえなかったという。

 そんなことがあった次の日の朝、アレン博士は自らの体内にあるこの異物を、自分自身の手で取り出すことをついに決意する。

 手術用のピンセットを用いて、唇の裏の粘膜を慎重に削りながらつまみ出したもの、それはなんと約1インチ(2.54cm)のミミズ状の寄生虫だったのだ。体内から引き出された後、その寄生虫はもがきながらとぐろを巻いてしまったという。

 しかしここで終わらないのが生物学者。

 博士は遺伝子分析によって、これが「ゴンギロネーマ・プルカールム(美麗食道虫)」という非常に珍しい寄生虫であることを突き止める。この寄生虫は、主に家畜などの体内に寄生する"線虫"の仲間で、今まで人間に感染した例は全世界でも50件ほどしか報告されていない、特殊なケースだったという。

 アレン博士曰く「医学誌に感染を報告したのは私が始めてです。今では講義の『つかみ』に最適な笑い話ですよ。しかしそれだけではなくて、学生たちに、自分で疑問を持つことの大切さと、常識を疑って考え抜くことの重要性を教えるためにも役立っています」とのこと。

 たしかに、寄生虫が脳に住み着き、痙攣(けいれん)や癲癇(てんかん)を引き起こしたり、体内で寄生虫が増殖して、皮膚から内臓にいたるまで無数の虫がはびこり、全身虫だらけになって死亡に至るケースもある。今回、仮にアレン博士が専門家の意見を聞き入れ、ゴンギロネーマ・プルカールムを口腔内に放置していたら......。最悪のケースもあったのかもしれない。

 ちなみに、日本の国立感染症研究所が公開している資料によると、ヒトがゴンギロネーマ・プルカールムに感染してしまうのは、甲虫類やゴキブリを偶然摂食した場合であるという。アレン博士が、いつどこでこの寄生虫に感染してしまったのかは未だ見当もつかないようだが、この資料が事実であるとするならば、昨年の12月に博士は一体何を食べたというのだろうか......。
(スポンジ保父)

tocana

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