死体を狙う大量のハゲワシ、餌になる肉体 チベット「鳥葬」という風習

tocana / 2013年12月7日 17時45分

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 日本では、人が亡くなると墓を作って埋葬するスタイルが一般的なので、世界のほかの国々でも同様だろうと考えてしまいがちだが、実際は違う。世界にはもっとさまざまな死者の送り方があるのだ。

 たとえば、日本と同じ仏教徒のタイを例に挙げよう。タイの場合は、そもそも「墓」という概念があまりない。では、どうするのかというと、大半のタイ仏教徒は火葬した後で、遺骨を川に流すのだ。

 基本的に輪廻転生を信じる仏教徒たちは、魂が去った後の肉体は「抜け殻」のようなものと考え、死体をあまり重視しない傾向にあるから、このような方法になるのだろう。

 その点ではチベットも同様の考え方を持っている。しかし、大きく分けて「塔葬・火葬・水葬・土葬・鳥葬」という5種類の葬送の方法があるところがタイとの違いだ。

 この中で、「塔葬(遺体に塩・香料・薬品などを塗って保存する方法)」はダライ・ラマなど活仏に対して行う特別なもので、もっとも一般的に行われるのは「鳥葬」だ。英語では"Sky burial"と呼ばれ、そのまま訳せば「空葬」となる。


■鳥葬とは? その起源

 鳥葬では、死後の儀式が行われた後、遺体を郊外の荒地へ運び、脇で死体を待つ大量のハゲワシなどの鳥が食べやすいように専門の職人が遺体を解体して断片化する葬送方法のことだ。基本的には、魂が去った後の肉体を天へと届けるための手段として鳥葬が行われている。

 チベットで鳥葬が行われるようになった背景としては、岩石や砂礫で覆われた土地が多く、埋葬のために固い岩盤を掘り下げるのが容易でなかったことが挙げられる。また、大きな木がほとんど生えない高地で火葬を行うには薪の確保が困難であるなど、環境的要因が大きいようだ。

 チベットの鳥葬は、元々はチベットの民族宗教形態である「ボン教」の風習だったが、もっと遡れば同じく「火」を崇拝する「ゾロアスター教」の風習がチベットに伝わったという説もある。

 ゾロアスター教は「空気・大地・水」といった自然の構成物を尊び、人間の死体という不浄なものがこれらを穢すことを禁止し、鳥葬によって鳥に死体を与えることが人生最高の功徳としている。それゆえ、ほかの宗教で行われる火葬・土葬といった葬制が扱えないのだ。

 海を隔てた遠い外国で行われる、不思議な葬送――。しかし、実は日本でもチベットの鳥葬に類似した葬送は行われていたことをご存じだろうか。それは「野葬」と呼ばれ、死体を野に放置するというものだ。


■日本でも行われていた!?「野葬」

 貝原益軒が著した『和漢名数大全. 続編』によると、江戸時代前期までは、この「遺体を野に捨て置く」葬送は行われていたそうだ。その結果として、遺体は鳥や獣に食べられていたのだろう。

 しかし、現代の日本で同様のことを行った場合は、刑法190条の死体損壊罪に抵触する可能性もあるなど、あまり見られない光景だ。

 どうだろう。日本人とチベット人は同じ仏教を信仰するが、遺体の扱い方についてはかなりの相違が見られるようだ。
(百瀬直也)

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