疾患か、進化か? 「ダチョウ人間」と差別された謎の部族・ヴァドマ=ジンバブエ

tocana / 2013年12月10日 17時30分

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 通常は遺伝子の変異による障害や疾患と見なされるような症状が、実は自分自身を取り巻く環境や日々の暮らしに適応するために生じたものだったとしたら、それを一体どのように捉えればよいのだろう。ジンバブエの秘境に生きるヴァドマ族について紹介しよう。

 ヴァドマ族は、ジンバブエ共和国を流れるザンベジ川の南、チルワと呼ばれる丘陵地帯に住む部族だ。彼らは「チクンダ語」と「コレコレ語」という言語を話し、野生動物の狩りや魚釣り、果物の採集などをなりわいとしている。

 ヴァドマ族の住む土地へのアクセスは非常に悪く、1951年にローデシア(ジンバブエの前身となる、白人政権国家)の警察官であった英国人チャールズ・サットン氏が(恐らく)白人として初めて彼らに出会い、その時の体験を世界に紹介するまで、長らく彼らの存在自体が知られることはなかったのだ。

 ヴァドマ族は、(他の部族など)外部の人間から、侮蔑的な意味合いを込めて「ダチョウ人間」などとも呼ばれてきた。その理由は、彼らの間で「欠指症」と呼ばれる遺伝性の疾患が非常に高い確率で発症するためだ。

 この「欠指症」とは、世界的な統計では、その発症頻度は極めてまれなものであるが、ヴァドマ族では全人口の実に25%がこの遺伝疾患を持って生まれてくるのだという。では彼らの「欠指症」とは一体何が原因で発症し、どのような症状が現れるものなのだろうか。


■欠指症の症状

 「欠指症」とは優性遺伝する突然変異のことだ。第7染色体の遺伝子欠陥によって、通常は手か足の指が欠損するという症状が見られる。中には、聴覚障害を併発するケースもあるようだ。

 ヴァドマ族の「欠指症」は、そのほとんどが、彼らの足の指のうち、真ん中の3本が欠損して生まれてくるというものだ。つまり足の指は親指と小指のみである。しかも彼らの「欠指症」の場合、親指と小指が内側へと曲がり、まるでロブスターのハサミのような足形となるのが特徴だ。この「欠指症」を持つヴァドマ族の人々にとって、さぞ日々の暮らしは不便であろうと思いきや、なんと全くその逆であるという!


■疾患か、進化か

 彼らは、狩りや果物の採集時に木登りをすることが多々あるが、そのような時にV字状の足は木をしっかりとつかむことができ、体を安定させるのに都合が良いのだという。つまりヴァドマ族の足の突然変異は、日々の暮らしにとって有利に働くものであり、彼らにとって「不便な障害」とは一線を画した症状として位置づけることができるのである。「ヴァドマ族の人々にとって有益であるのならば、彼らのV字状の足とは、人間が周囲の環境に新たに適応し、自らを独自に『進化』させた結果である」と考える学者もいるようだ。

 加えて、ヴァドマ族における「欠指症」の発症頻度の高さには、どうやら彼らの社会の閉鎖性が強く影響している面もあるようだ。ヴァドマ族は極めてアクセスの悪い隔絶された環境に暮らす部族であり、伝統的に外部との接触を避け、先祖代々がひっそりと生きてきた部族なのだ。さらに、部族間を超えた結婚も、厳しく禁止されてきたらしい。従って、彼らは極めて狭い遺伝子プールを維持してきた(各々の血のつながりが、かなり濃い)部族であるという。

 ヴァドマ族に関しては、文献やWeb上の情報も少なく、まだまだ詳細に関しては未知の部分が多い謎の部族だ。今後さらに研究が進めば、今回紹介したような事柄の真相が少しずつ明らかになってくることだろう。それにしても、アフリカの大地には、まだまだ私たちの知らない驚くべき特徴を持つ部族がいるのかもしれない。

tocana

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