映画「ブランカニエベス」 闘牛士とフリークスの饗宴が魅せた新しい「白雪姫」

tocana / 2013年12月13日 16時47分

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 フラメンコのリズムに彩られて、フリークス達が踊る。闘牛という男社会で、女性が牛と向き合う。恐ろしい映画である。どれ一つとっても手に余るアクの強いテーマをあたかもマッシュアップするように、美しい一つの物語にまとめあげたのだ。しかもその映像には、>全編モノクロームに、サイレントという「条件」をつけて――。

 スペイン語で「白雪姫」を意味する「ブランカニエベス」は、その名の通り、グリム童話の「白雪姫」を骨格にしたダーク・ファンタジーである。そう聞くと、近年ヒットした「赤ずきん」や「アリス・イン・ワンダーランド」のような、童話の現代版リメイクを連想するかもしれないが、本作は、そうしたリメイクとは完全に一線を画している。主人公はお姫様でなく、女性闘牛士。「姫」を囲む6人の小人は、映画「フリークス」(トッド・ブラウニング監督/1932)を彷彿とさせる小人の旅芸人なのだ。まるでてんこ盛りの要素にB級映画の予感満載だが、若きスペインの監督、パブロ・ベルヘルはこの危なっかしい物語を、見事なバランス感覚で描ききってしまった。


■あらすじ

 映画の舞台となるのは、1920年代のスペイン。当代一の闘牛士と美貌のフラメンコダンサーの間に、主人公の少女、カルメンは生まれた。しかし誕生と同時に母親の不幸に見舞われ、カルメンは意地悪な継母の下で辛い幼少時代を送る。そんなある日、父親の財産目当てで娘の殺害を目論む継母により、カルメンは瀕死の重傷を負う。しかし彼女は通りかかった「小人闘牛士団」に助けられ、やがて彼らと巡業の旅に出る。

 カルメンは記憶こそ失っていたが、子どもの頃、父親に仕込まれた闘牛の技だけは身体が覚えていた。陽気な小人たちに囲まれ、女性闘牛士として覚醒したカルメンは、次第に名声を獲得していく。そして迎えた大舞台。かつて父親が立ったセビーリャの闘牛場で、猛牛を前に、彼女は遂に自分の過去を思い出す。しかしその観客席には、あの継母が毒リンゴを手に現れるのだ――。


■抑圧されたものたちが鮮やかに甦る

「白雪姫」という有名な物語を下敷きにしている以上、途中まで見ていれば、その結末は大体想像がついてしまう。ところが常に形勢逆転の危険を孕む闘牛の如く、監督は無意識に予定調和を期待する観客に、鮮やかな「復讐」をしかける。そしてその果敢な試みによって「白雪姫」という物語は見事に換骨奪胎され、新たな寓話として現代に「甦る」のである。

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