太陽に襲われた村 ― 人口800人のブラジルの農村で今、起きていること

tocana / 2014年5月21日 16時0分

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 ブラジル中西部に位置するアララス。燦々と太陽の降り注ぐこの楽園のような村の中を、分厚い段ボールを頭にかけた少年が自転車で通り過ぎていく。しかし、そんな奇妙な少年の姿をみて、誰一人笑う村人はいない。少年が頭にかけた段ボール、それは、彼を死に至らしめるものから、身を守るためだからだ。

「私はいつも日光に当たっていました。仕事中も農作業をしているときも、牛の世話をしている時も。そして年を追うごとに、私の症状は酷くなっていったんです」

 そう語るのは、ジャルマ・アントニオ(38歳)。彼は9歳の時に色素性乾皮症、通称「XP(xeroderma pigmentosum)」と呼ばれる世界でも珍しい奇妙な病気を発症した。しかしこの村で奇病に苦しむのはアントニオだけではない。800人余りが暮らすアララスでは、人口の1/40にあたる20人がこの疾病を発症しているのである。


■紫外線に敏感な肌「XP」

 XPとは、日光が不含む紫外線に対して極度に皮膚が敏感になり、水泡から火傷のような傷跡が皮膚全体に広がる遺伝子起因の疾病である。そして紫外線がDNAを破壊することにより、皮膚細胞の修復は不可能となり、皮膚ガン発生率が顕著に高まる事でも知られている。また米国の国立癌センターの研究によれば、XPの患者の5人に1人が、難聴や筋肉の麻痺、発育障害を併発するという。

 農業を主産業とするこの村において、外で仕事ができないのは致命的である。しかしアントニオは現在、なるべく日光を避けるべく政府の建てた施設に暮らし、アイスクリームパーラーで稼ぐ僅かな収入で生計を建てている。


■アントニオの生活

 再びアントニオの話に戻ろう。彼が病気を発症した9歳のある日、彼の顔にそばかすと腫れ物ができはじめた。はじめは何の病気かも分からなかったが、時間の経過と共に、その症状はただただ悪化していった。

 現在では、XPは若年の段階で症状の兆候が現れる事が知られており、専門家は子供達にXPの兆候が現れた場合は、ただちに太陽から遠ざけるべきだと指摘している。しかし、当時XPに対して何の知識もなかったアントニオは、まさか太陽が原因だとは考えず、何ら対策を取らなかった。それから30年弱が経過し、彼はいま、常に大きなワラ帽子を被っている。しかし、それはほとんど気休めに過ぎない。日々悪化する顔面の症状のために、彼は既に50回以上、腫瘍を取り除く手術を受けているのである。そして唇や鼻、頬や眼の周囲から失われた皮膚を隠すために、彼はオレンジ色のマスクを顔に装着して過ごさなければならない。

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