墓のない国 ― タイの葬送風景に見る死生観と輪廻転生

tocana / 2014年8月14日 8時0分

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 タイは、国民の95%以上が仏教徒だといわれる。ただし彼らが信仰する仏教は、日本の大乗仏教とは異なる上座部仏教であり、「テーラワダ仏教」、「南伝仏教」などとも呼ばれている。その教義は、大乗仏教よりもブッダ(釈尊)が実際に説いた原始仏教的な教えを色濃く残しているとされる。

 筆者には、3年前に結婚したタイ人の妻がいる。実家はタイの首都バンコクに隣接するサムットプラカーンという海沿いの県だ。今年5月27日、その妻の父親が腎臓がんで亡くなった。妻は赤ちゃんを含む2人の子供がいることもあり、帰国して葬儀に参列することはかなわなかったが、現地で執り行われた葬儀の様子を写真とともに紹介したい。併せて、同じ仏教国でも日本とはかなり異なるタイ人の死生観や輪廻転生の信仰なども紹介する。

【その他の写真と動画はこちらから→http://tocana.jp/2014/08/post_4627.html】


■通夜

 タイの葬儀で、日本の通夜にあたるものは通常3~7日程度続くが、有力者だと100日ほど続くこともあるという。妻の父の通夜は、亡くなった翌日から3日間続いた。通夜の場所は寺院だったが、これは都市部の場合で、地方では自宅で行われることも多い。


■棺

 タイは熱帯性気候の国で、通夜も長く続くため、棺の遺体には防腐剤が注入される。また、頭は西枕にして置かれ、参列者たちは故人の手に聖水をふりかける。そして、何人かの僧侶たちが声を合わせて読経を行う。


■参列

 黒っぽい服装を着て参列し、香典を渡し、線香と花を供えたり、お悔やみを言ったりする点は、日本とだいたい共通している。しかし、タイでは日本ほど通夜や葬儀をしめやかに執り行うことはなく、家族が亡くなった時にはもちろん悲しむが、死とは本来、より良い来世へ行くための目出度いことだと考えられている。


■火葬

 日本と同様、タイでは火葬が一般的で、葬儀は火葬場と斎場を兼ねた寺院で執り行われる。通夜が終わった翌日から葬儀が始まるが、火葬はその1日目に行われる。火葬後の遺骨は、その日すぐに集めず、翌日以降に骨壷に納められる。


 昔は棺を火葬場へと運ぶ際、建物の窓から出棺させたというが、これは、死者が出入口や道順を覚えてしまうと、あとで帰ってきてしまい、災いをもたらすと信じられていたためだという。


■散骨

 さて、日本と大きく異なるのは、タイ人には"墓"がないことだ。では遺骨はどうするのかというと、埋葬するのではなく"散骨"という形を取る。川や海に流したり、山間部であれば山に散骨する。他にも、遺骨の一部または全部を、寺院の通路の壁や納骨堂の壁などに安置し、モルタルで塗り固めることもある。

tocana

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