完全黙秘はどこまで可能か? 「名無し」のままで刑務所に行ける?

tocana / 2014年11月22日 8時30分

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 11月、鹿児島県日置(ひおき)市のスーパーで万引きしたとして、常習累犯窃盗罪に問われた男の裁判が開かれた。万引きの裁判自体は珍しくないのだが、実はこの被告人、逮捕されても自分の身元を明かさず、「名無し」のまま「鹿児島南署留置管理課留置番号110番、別添写真の男」と呼ばれて、裁判を受けているのだ。

 それだけでも異常事態なのだが、なんとこの男には東京や千葉、そして神奈川で過去に万引きをした前科があることが判明したのである。「名無しの前科者の犯罪」という奇妙な事件について、刑事事件に詳しいライター、ごとう さときに聞いてみた。


■完全黙秘でも、明らかな犯罪を犯せば、名無しのままで起訴される

―― 「名無し」のまま、裁判にかけられることはあるのですか?

ごとう 明らかな現行犯で逮捕された人が、警察でも検察でも取調べで身元を明かさなければ、名無しのまま起訴されます。こういうケースは珍しいといえば珍しいのですが、過去に何度かはあります。起訴して有罪にできるだけの証拠があれば、検察は「名無し」のままでも起訴しますし、裁判で犯罪事実が十分に立証できれば、有罪になって刑務所に行くこともあるわけです。

――その場合、犯人は何と呼ばれるのですか?

ごとう 起訴状には『氏名不詳』と書かれます。それとともに、身体的な特徴が記載されて、被告人本人の顔写真も添付されます。呼び名に関しては、身元不明の犯人の場合、ほぼ100%、留置場や拘置所に身柄を拘束されているはずですので、そこの管理番号で呼ばれます。今回の被告人は、「鹿児島南署留置管理課留置番号110番」ですね。

 裁判をするにあたって、最初に行われるのは、起訴された人物と法廷に立っている被告人が、同一人物なのかを確認する「人定質問」といわれる手続きです。被告人の氏名や本籍がわかっている場合は、裁判官が本人に氏名と本籍、そして現住所を答えさせますが、「名無し」の人定質問は、起訴状に書かれた身体的な特徴と、添付された顔写真を確認することで、本人だと特定します。この手続きは刑事訴訟法196条に定められていますので、日本の刑事手続きは名無しの犯人を裁くことを始めから想定していたともいえるでしょう


■名無しのままでも刑務所行き!塀の向こうでは本名は不要?

―― 起訴状に顔写真もつけられるんですか?

ごとう 写真撮影と指紋採取は、逮捕手続きの中に含まれる強制手続きです。逮捕された被疑者に拒否する権利はありません。特に、黙秘をするような被疑者は、身体的な特徴でしか個人を特定できませんから、写真撮影は重要です。

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