高倉健・菅原文太が共演した【封印された】任侠映画の決定版とは?

tocana / 2014年12月28日 8時0分

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 2014年11月10日、高倉健。11月28日、菅原文太。日本人のカリスマ的な大俳優が立て続けにこの世を去った。両雄の悲報は、昭和期に映画を娯楽としていた世代に大きな衝撃と落胆を与えた。そんな折、メディア各局で2人の出演作品が次々と追悼特集されているのだが、共演作品となるとなかなか放送してくれない。中でも私が最も観たいのは、東映が製作した『山口組三代目』だ。この作品はかつてビデオで発売されていたのだが、ビデオ時代が終焉した後は一向にDVD化の兆しがない。

■東映悲願!? 伝説級映画の日本版を!!

 マフィア映画の金字塔『ゴッドファーザー』の日本版を東映でやりたいと思った岡田茂社長(当時)は、山口組の田岡一雄組長(当時)の半生記を描いた実録作品『山口組三代目』を製作する。これが公開されるや、同年1月に封切られ既にシリーズ化されていた菅原文太主演の『仁義なき戦い』を上回る観客動員数を記録し、その勢いで続編『三代目襲名』も製作された。

 物語は田岡一雄の少年時代から始まり、二代目組長(丹波哲郎)の弟とクラスメートだった縁で組と関係し、やがて男を上げていく様を描く。仲違いしてしまった高倉健と菅原文太(幹部・大長八郎役)の対決シーンは見所だ。

『三代目襲名』では、菅原文太の出演はないが、戦後混乱期の焼け跡を舞台に、「戦勝国」と称して略奪・暴力・婦女子強姦など傍若無人に振舞う三国人(中国人・台湾人・朝鮮人を指す蔑称として現在はメディアでの使用を控える)と呼ばれた不良外国人達。それらを義憤に駆られて叩きのめす高倉健扮する若き田岡一雄の姿が描かれている。

 監督は1作目の山下耕作、続編の小澤茂弘と、いずれも任侠映画の巨匠。脚本は、1作目が初期『必殺シリーズ』などテレビでも数々の傑作台本が印象深い村尾昭。『必殺必中仕事屋稼業』第26話「どたんば勝負」、『必殺仕置屋稼業』第28話「一筆啓上崩壊が見えた」など重要な最終回を任される事が多く、特に『新・必殺仕置人』の最終回・第41話「解散無用」は、作劇といい台詞回しといい、数あるテレビドラマの中でも傑作中の傑作だ。また2作目は『野性の証明』や「極道の妻たちシリーズ」など多くの人気作品を手掛けた高田宏治。この布陣で面白くないわけがない。

■人気作ゆえに続編が待望されるも...

 だが、組と組長を実名出して映画化した事は、暴力団を取り締まる立場の警察から「宣伝」「資金調達」と睨まれ、またマスコミからの批判も多かった。そこで続編は組名を外して『三代目襲名』としたのだが、公開後には東映本社とプロデューサーほか関係各所に家宅捜索が入るなど、警察の圧力が緩む事はなかった。元々は3部作として構想が練られていたが、これらの影響もあり、予定されていたシリーズ3作目『山口組三代目 激突篇』の製作は幻と消えた。

 20~30代の人達にとって高倉健は、『駅STATION』(1981年)、『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年)の寡黙なオジサン、菅原文太は『千と千尋の神隠し』の釜爺、あるいは『おおかみこどもの雨と雪』の韮崎ジイサンの声といったイメージなのだろうか。かつて実に多くの任侠映画に出演し、背中に紋紋(刺青)背負って刀を振り回していた鬼神の如き雄姿は馴染みが薄いのかもしれない。皆さんのお父さん世代の多くが2人をヒーロー視していたのだが、そんな俳優は現在の映画界を見渡してみても見当たらないくらい究極の役者だった。心から両雄の冥福を祈るとともに、『山口組三代目』『三代目襲名』のソフト化を切望する。
(文=天野ミチヒロ)

※イメージ画像:『山口組三代目【VHS】』

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