失われた記憶を取り戻すことができる?「長期記憶の保存先はシナプスではなかった」=米研究

tocana / 2015年1月8日 7時30分

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 記憶は脳のどこに蓄積されているのか――。あたかもPCのハードディスクのように、脳内で記憶を保存しているのはシナプス(神経細胞接合部)であるという考えが今まで主流だったのだが、先頃行なわれた実験と研究でその通説が覆されようとしている。


■シナプスは"脳内ハードディスク"ではなかった

 1995年のサイバーパンクSF映画『JM』では、主人公の"記憶屋ジョニー"の脳に埋め込まれた記憶装置には最大160ギガバイトの情報が保存できるという設定であった。これはもちろん今のところ現実離れしたSF的設定なのだが、アカデミズム的には人間の脳内でこのハードディスクの役割をしているのは「シナプス(Synapse)」であるというのがこれまでの通説である。アルツハイマー病の患者の多くが過去の記憶を失っているのも、脳細胞や神経細胞を繋ぐこのシナプスが破壊されているからであると考えられてきたのだ。

 しかし米カリフォルニア・UCLA大学で行なわれた研究は、この通説が覆される驚くべき結論を導き出しているのだ。

「長期記憶はシナプスに保存されるのではありません」と、研究チームのリーダーであり論文主筆のデイビット・グランツマン教授は語り、この研究はアルツハイマー病の理解に多大な影響を与えるだろうと示唆している。

「神経細胞が生きている限り、記憶はどこかに残っています。このことは、初期アルツハイマー病患者は失われた記憶を取り戻せるということを意味します」(グランツマン教授)

 つまりアルツハイマー病によって、脳内のシナプスが破壊されることが、そのまま記憶の喪失には繋がらないということだ。シナプスは"脳内ハードディスク"ではなかったのである。そして記憶の保存場所がシナプスでないのであれば、別の場所に退避させてある記憶を呼び戻してもう一度意識化できる可能性も浮上してきたのだ。


■いったん形成された長期記憶は復元できる

 グランツマン教授の研究チームは、動物の記憶を研究するために海のカタツムリである「アメフラシ(ウミウシ)」を用いた。アメフラシはエラ部分にダメージを与えかねない潜在的な危険に対し、身体を萎縮させて明確な防御体勢をとることから、神経系の実験に良く使われている。

 実験では、アメフラシに危険を予感させて「萎縮反応」を起こさせると同時に、微弱な電流を尾に流して何度も強化学習を行なったという。この強化学習を続けると、尾への刺激だけでこの「萎縮反応」を数日間にわたって見せるようになったということだ。つまりはアメフラシに数日間は続く「長期記憶」が刷り込まれたのである。

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