こんなに美しいのに“オゾン層を破壊する”空模様 ― 真珠母雲の恐怖とは?=イギリス

TOCANA / 2016年2月20日 7時30分

写真

 下の写真は英国の空に出現したあっけに取られるほど美しく、珍しい真珠母雲である。しかしこの雲はその美しい外見にもかかわらず、その裏に環境問題をはらんでいるのだ。

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■真珠母雲とは?

 この雲は真珠母雲(しんじゅぼぐも、Mother-of-pearl clouds)、もしくは極成層圏雲(きょくせいそうけんうん、Polar stratospheric clouds)と呼ばれ、文字通り成層圏に作られる。真珠母雲はマイナス80度近くの冷たい空気で、約2万1千メートルの高度にできるので、日没後も太陽光を受けて輝く真珠母雲を見られることがある。オーロラと見間違うような美しい真珠母雲は太陽の光が、小さな氷の結晶に反射することで虹色に輝いて見える。またこの雲が鮮やかな虹色をしている理由は、雲を構成する雲粒の大きさが均一であることだという。


■真珠母雲が英国・スコットランド北部に出現の理由

 この雲は高緯度地方で気温がきわめて低い時にしか形成されないので、通常は北極や南極でしか観測されない。ところがこの真珠母雲が、今年の2月2日に英国北部とスコットランドの間に出現した。

 この雲が突如、英国に出現した理由だが、この雲の出現する数日前にスコットランド北部には、英国観測史上第八番目に大きな台風「ヘンリー」が襲来していた。この台風「ヘンリー」が成層圏に湿気を送り込んだことが、この地では珍しい真珠母雲出現の要因らしい。

 写真家のアレック ・ ジョーンズ氏は、サウス・シールズに近いサウター灯台の近くで、早朝5時にこの雲を撮影したが、このような雲を見るのは初めてだと英紙「Daily Mail」に語った。

 英国ランカスター大学の研究機関である「オーロラ・ウォッチUK(AuroraWatch UK)」は、多くの人々からオーロラ目撃の報告を受けた。しかし実際の気候はオーロラが出現する条件ではなかったので、気象専門家は真珠母雲とオーロラを見誤ったのだろうと話す。


■真珠母雲の「裏の顔」とは?

 さて外観は非常に美しい雲だが、この雲にはもう1つの顔がある。

 真珠母雲とオゾン層は共に非常に高度な上空に位置している。大気圏では、高度が高くなるほど紫外線が強いため、フロンやハロンが紫外線によって分解される塩素原子の量が高度とともに増える。そして、たった1つの塩素原子は何千ものオゾン分子を破壊する力を持つ。そこで、この雲の表層はオゾン分子を破壊する化学反応を起こす格好の場所を提供し、極地にオゾンホールを発生させる可能性があると考えられているのだ。

 オゾン層がわずかに減少しただけでも、地上の人間の皮膚がんや眼球損傷の発生リスクが増えるという調査結果もある。この真珠母雲は、オゾン減少の仕組みを調べる上での重要な研究対象にもなっている。

 空に描かれた油絵のような真珠母雲だが、残念ながら日本では見られない。ここ数十年でフロン類の化学物質は急激に減り、オゾン層破壊の危険性は減少しているという、うれしい調査報告もある。環境問題を考えずに、のんびりとこの雲を楽しめる日が来ることを願いたい。
(文=三橋ココ)


※イメージ画像:「Thinkstock」より引用

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