奇習! 夜這いをしないと村八分 ― 長野県の集落にあった「成人の儀」とは?

tocana / 2016年3月8日 7時0分

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 毎年1月になると、御屠蘇気分も抜けないままに、我が国においては振袖・羽織袴の新成人たちが街角を歩くようになるが、かつてこの国においては、なんとも不可思議な「成人の儀」が存在していた。長野県北部のあるひなびた集落に住む山口利三さん(87)は、そうした習慣を目の当たりにして育った最後の世代だ。

「今じゃね、成人式っていうと、羽織袴に晴れ着っていうのが相場でしょ。みんなで式典なんかに参加してね。飲めや歌えやの大騒ぎだ。ホント、別の意味でいい時代になったものだね(笑)」

 毎年行われる成人式関連の話題を横目で眺めつつ、山口さんはかつてこの集落に存在していた独自の「成人の儀」について、ゆっくりと語りはじめた。

「もう70年近く前のことなんだけども、その頃まではね、このあたりにも、集落ごとに成人の儀式が決まっていてね、私なんかもそれをやった口なんだよ。それはね、もう今じゃ考えられないようなものでさ、それこそ今同じことをやったら、たちどころにテレビや新聞なんかで取り上げられちまう(苦笑)」

 山口さんがかつて経験したという「成人の儀」とは、言ってしまえば、その歳に成人する若者たちが全員で参加する夜這いだった。それが口伝的に伝わるものであるがゆえに、地元の郷土資料館などでも詳しい史料を見つけることはできない。だが、この集落においては、古くは江戸中期頃からこうした儀式が行われ、少なくともそれは、山口さんが成人を迎えた昭和10年代後半頃まで続いていたのだという。

「一般的な成人式っていうのは、昔から一月の上旬だろう? けれども、このあたりじゃ、正月の松の内が明けた瞬間に始まるんだよ。真夜中に日付が変わるだろう? そこから始まって朝の日が昇るまで。それまでに、全部ケリをつけなくちゃなんねえんだ」

 山口さんの話によると、正月明けの深夜になると、その日、成人を迎える男たちは一斉に家を出、同じく成人を迎える女の家へと一目散に駆け出していく。そしていわゆる『夜這い』をかける形でセックスし、その想いを遂げるのだという。

 その際、女の元へと辿り着いた順に「一番槍」「二番槍」「三番槍」という優先順位が決まり、その順番でしか女と交わることはできない。つまり、それよりも前に相思相愛の関係にあった男女がいたとしても、誰かが先にたどりついてしまえば、「こと」が終わるまで指を咥えて待っていなくてはならないというわけだ。しかもこの儀式の間に、ひとりの女も抱けなかった男は、「不具者扱いされて、そりゃあ、もう村八分状態だよ」(山口さん)というから、まさに一か八かの儀式であると言える。

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