1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. 環境・自然・科学

読書で脳が“物理的に激変する”ことが科学で判明! 大人でも有効、別人へと変身できる可能性(最新研究)

TOCANA / 2017年6月9日 7時30分

写真

 独マックス・プランク認知神経科学研究所(Max Planck Institute for Human Cognitive and Science)のミハエル・シャイダ博士ら研究により、成人してからも読書をすることで、脳深部領域が物理的に変化することが明らかになった。同論文は5月24日付で科学ジャーナル「Science Advances」に公開されている。


■読書が脳を物理的に変える

 今回の調査にあたり、まず研究チームはインド北部の都市ラクナウにおいて、文字の読み書きを知らない30代のインド人女性30人をリクルート。うち21人にインドで話されるヒンディー語やヒンディー語に使われるデーヴァナーガリー文字を教え、比較のため残りの9人には教えなかった。

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2017/06/post_13460.html】

 ヒンディー語を学習した21人は、6カ月ほどの訓練で小学校1年生レベルの読み書き能力を習得。そこで学習前と学習後の脳の変化を比較したところ、予想以上の大きな変化が脳内で起こっていたという。研究者らの事前予想は、「進化的に比較的最近獲得された“新皮質”に変化があるだろう」というものだったが、新皮質はもちろんのこと、より深部にある視床や脳幹にも変化があったというのだ。

 どちらも感覚や運動の情報を調整する領域とされ、読み書きや学習に直接的な関わりはないが、これらの結合が強まり、情報伝達がうまく調整されるにつれ、被験者の読み書き能力に劇的な向上が見られたそうだ。

「今回の研究により、読書には重大な感覚モニター能力の発達も関係していることが分かりました。文章をスキャンし、重要な情報に目をつけるため、眼球の動きをうまく調整する必要があるためです」(研究チームのGianluca Baldassarre氏)

 シャイダ博士によると、「この結果から、よく読書をする人が、より効率的に文章を読み解けることを説明できるかもしれない」とのこと。やはり、速読の秘訣は多読のようだ。また、視床と脳幹は注意力をコントロールする働きもあるため、学習により集中力も高められた可能性があるという。

 研究チームのファルク・ヒュッティヒ氏(マックス・プランク心理言語学研究所)は、この研究は文字の読み書きに困難をきたす「失読症(ディスレクシア)」の解明にも貢献するかもしれないと指摘。視床の構造的・機能的変異が、失読症の原因かもしれないとのことだ。

 さて、子どもだけでなく、大人になってからも脳は大きな変化に開かれていることが明らかになった。このことは脳科学のみならず、人文学においても重要な意味を持つ発見だろう。それというのも、自己や主体性といった問題を考える上でも、脳の可塑性は欠かせない知見になりつつあるからだ。たとえば、フランスの哲学者カトリーヌ・マラブーが、脳の可塑性が主体を別人に変えてしまう可能性に言及していることを踏まえれば、今回の研究結果こそ、「学習による主体の変身(脳の変化)」を科学的に裏付けたものだと言えるかもしれない。

 今後も脳科学の分野から、さらなる驚きの発見が飛び出してくることに期待しよう。
(編集部)


※イメージ画像は、「Thinkstock」より

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング