【衝撃】脳の記憶能力や認知機能は“ウイルス由来”だった! 謎のタンパク質「Arc」の正体に戦慄(最新研究)

TOCANA / 2018年1月15日 7時0分

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 脳は大抵のことを忘れてしまうが、強烈な体験や同じことの繰り返しなどによって記憶は長期間保持される長期記憶となる。長期記憶をつくる脳内の神経細胞のメカニズムは複雑で謎も多く、多くの研究者がその解明に努めている分野である。今月11日付で学術誌「Cell」に掲載された二本の論文は、記憶にまつわる脳の進化について思いがけない事実を突きつけるものだった。記憶や認知のシステムを支えるタンパク質がウイルス由来ではないかというのである。

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■二つのグループによる大発見

 米・ユタ大学とマサチューセッツ・メディカル・スクール大学の二チームからそれぞれ別々に発表され、今月11日付で「Cell」に掲載された二本の論文は、記憶や認知に関わるArcというタンパク質に関わるものだった。このタンパク質は大脳前頭皮質や海馬や扁桃体などといった記憶関連領野で、記憶の形成時にニューロンやシナプスの活性化に伴い発現することがすでに知られていた。また、Arcを人為的に作れなくしたマウスは長期記憶の形成に問題を起こすことが知られている。

 二つのチームはそれぞれマウスとハエの神経細胞を使い、ニューロンから放出される細胞膜でできた袋(小胞)について詳細な解析を行った。するとこの小胞にはArcタンパク質が含まれており、中身にはmRNA(タンパク質を作らせる設計図)が入っていた。ニューロンから飛び出した小胞は別のニューロンや細胞に取り込まれ、中に入っていたmRNAを送り届けたのである。研究者らはこの働きが記憶の増強や忘却にも深く関わっているとみている。

 Arc遺伝子を解析したところ、このタンパク質はレトロウイルスの持つGagというタンパク質とよく似ていることが分かった。Gagは宿主の細胞の中で作られたウイルスの部品をパッケージングし、細胞外に放出するためのウイルス粒子を作る役割を担っている。Arcはウイルスと似たような仕組みを使って小胞を作り、細胞間の情報伝達を行っていたのである。これは全く新しい発見であった。

■ウイルスと進化

 生物のゲノムには遥か昔に感染したウイルスの痕跡が数多く残っている。ウイルスは宿主細胞のゲノムに自分の遺伝情報を書き込んで自身を複製させるのだが、極稀に生殖細胞に感染したウイルスの遺伝子が宿主の子孫にまで伝わることがある。そのような遺伝子は大抵無害化・不活性化されるが、時に重要な機能を担う遺伝子へと進化することがある。よく知られているのが哺乳類の胎盤で、胎盤の形成や機能に関わる遺伝子がウイルス由来だと判明している。

 今回、二つのチームはマウスとハエという二種類の生物でArcによる神経細胞の情報伝達の新しい仕組みを発見したのだが、さらに興味深い事実も分かった。二つの生物のArcはよく似ているものの、元となったウイルスの遺伝子を獲得した時期と元になったウイルスは違うようなのだ。つまりウイルス遺伝子からの進化はそれぞれの生物で独自に起きたということになる。ウイルス遺伝子の二次利用は我々が考えているよりも、難しくも珍しくもないということなのかもしれない。

 ヒトのゲノム内にもウイルス由来とみられる遺伝子は多数存在する。ウイルスによる感染は時に生存の危機を招くが、生物にはウイルスが残した使えるコードをちゃっかり再利用するしぶとさとしたたかさも持ち合わせているのだ。

(編集部)

※イメージ画像は、「Thinkstock」より

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