脳の6分の1を失った少年が奇跡の回復! むしろ能力向上… 神経回路に起きた信じられない変化とは!?

TOCANA / 2018年8月24日 7時30分

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 人体は神秘に満ちている。米オルタナティブニュースサイト「Mysterious Universe」(8月6日付)は、脳の一部を切除された少年が、術後に正常な認知機能を取り戻したばかりか、平均レベル以上の読解力も維持しているという驚異を伝えている。

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■脳の6分の1を切り取る大手術

 医学論文の中で「U.D.君」と呼ばれる少年は、4歳のときに深刻なてんかん発作が始まり、その後悪化の一途をたどっていた。薬物をはじめとするあらゆる治療が役に立たず、とうとう、とてつもなくドラスティックな外科手術以外、残された道がない状況となってしまった。

 彼の両親は、当時まだ7歳にもなっていなかった息子の命を救うため、苦渋の決断をすることに――側頭葉切除だ。右脳の3分の1、つまり脳の6分の1を切り取る大手術に踏み切った。

 手術は成功し、発作は消えた。ただ、U.D.君の左側の視野には盲点ができてしまった。とはいえ、それ以外の手術による影響はなく、最悪を回避できて、めでたし、めでたし――と思いきや、後日談があった。

 手術から4年たった今、神経科学者たちを驚かせる事実が明らかになったのだ。もうじき11歳になるU.D.君は相変わらず視野の左半分が見えていない。にもかかわらず、彼はすっかり元のヴィジョンを取り戻したという。一体、どういうことか?

 実は、脳がダメージを受けても「神経可塑性」という働きによって、脳内で失われた領域の機能を、別の領域が補うことがあるそうだ。人間の脳は生きていく上で、できるだけ快適な状態になるよう、あらゆる情報を調節していく。

 左右の目の見え方が違う場合も、脳に入る時点で映像を作り変え合成(融像)するため、両目でみると全く気にならなくなる現象が知られている。

■視覚機能が正常に戻る

 今回のU.D.君のケースがまさにそれだ。彼は後頭葉(色・形などの視覚情報を処理)の右側も失ってしまったため、左側の世界から情報を得るためには、意図的に顔を動かさなければならない。そして、彼の脳内で生き残っている視覚処理へと情報を伝達する。ちょうど、パノラマ写真を撮影するために、カメラのレンズを景観の端から端まで動かし、全景を写し込む作業に似ている。

 U.D.君が、この動作を日夜繰り返すうちに、彼の左脳は失われた脳の領域が本来ならすべき働きを処理し始めたのだ。こうして、いつの間にか正常なヴィジョンを手にしたU.D.君。しかも、手術前から同年代の児童と比較して読解力が高かった彼は、手術後も持ち前の読解力を維持していたという。

 米カーネギーメロン大学の心理学教授マレーネ・ベールマン博士は、医学情報誌「Cell Reports」(7月31日付)で、U.D.君の脳に起こった変化について、彼の年齢も一因なのではと話している。若い脳は、年齢を重ねたそれより柔軟性があるため、より早く、容易に脳の神経結合を再構築できるからだ。いずれにしても、1人の少年の未来が明るくなったことはなによりだろう。

 私たちの中にある小さな宇宙――脳。人は医学の進歩に驚かされるのではなく、人間がもともと持っている秘められたパワーが解き明かされていくことに驚くのだ。そして、この小宇宙から学ぶことは、まだまだ無限大にあるのかもしれない。
(文=佐藤Kay)

イメージ画像:「Thinkstock」より

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