大泉洋さん主演の映画『ディア・ファミリー』娘の為から全ての人の為へ…主人公のモデルとなった父親の思い
東海テレビ / 2024年6月14日 21時43分
2024年6月14日公開で、大泉洋さんが主演の映画「ディア・ファミリー」は、娘の病気を治すために町工場の父が医療機器の開発に挑戦する物語で、愛知県春日井市のある企業「東海メディカルプロダクツ」がモデルになっています。
機器の開発後、娘は1991年に23歳の若さで亡くなりましたが、大泉さんが演じる父親はいま、ものづくりを支援する取り組みを始めています。
■大泉さん「娘を失った家族の話ではない」愛知の家族が元になった映画が公開へ
2024年6月14日公開の映画「ディア・ファミリー」は、心臓に重い病を抱える娘を救うため、町工場を営む父親と家族が「人工心臓」と「カテーテル」の開発に挑んだ実話に基づいた物語です。
5月29日、JR名古屋駅前で開かれたイベントには、主演の大泉洋さんや菅野美穂さんらが登壇しました。
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父親役の大泉洋さん:
「この映画は、大切な娘を失ってしまったという家族の話ではなくて、その亡くなっていく娘との新しい約束、自分の命はもういいからその技術を多くの人のために使ってほしいという、その夢を叶えるために頑張っていった家族の話だと思います」
大泉さんの言葉に静かに耳を傾けていたのは、愛知県春日井市の医療機器メーカー「東海メディカルプロダクツ」の会長、筒井宣政さん。大泉さん演じる主人公のモデルとなった人物です。
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「東海メディカルプロダクツ」の会長 筒井宣政さん:
「どなたでも、大泉さんでも菅野さんでもそうだと思いますが多分、自分の子供が手術では治らんと。『それじゃあああそうですか』ってね、そのまま引っ込むということはほとんどないんじゃないかと思うんです。なんとかしてっていう感覚は、みんな湧き上がると思うんですよね」
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大泉さん:
「こんなお話が本当にあるのかと」
菅野さん:
「これが実話なんだということが、知れば知るほど衝撃に変わっていった」
■娘に先天性の心臓疾患が判明…全てを懸けて救おうと立ち上がった父親
映画のモデルとなった春日井市の「東海メディカルプロダクツ」は、医療用のカテーテルを製造しています。
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元々ビニール製品のメーカーを経営していた筒井さんが、医療の世界に飛び込んだのは1968年に生まれた次女、佳美さんがきっかけでした。
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筒井さん:
「おぎゃーって生まれてきて、先生がすぐ『あれ、ちょっと心臓にものすごい雑音が入る』と。『コクコクザザザザザ、コクコクザザザザザ』というものすごい雑音が入っていました」
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佳美さんは、心臓に先天的な疾患を抱えていました。筒井さんは必死の思いで手術費を貯め、治療できる病院がないか探し回りました。
筒井さん:
「7カ所も心が臓悪くて同時に全部直さなきゃいかんので、当時の技術では治せないと」
諦めかけた時に、ある病院から提案されたのが、「人工心臓の研究」でした。
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筒井さん:
「医者がやってくれないというんだったらお父さんがやるって言ったんで、佳美はベッドでものすごく嬉しそうな顔をしました」
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知識ゼロから開発を始めた筒井さん。猛勉強の末、8年かけて動物実験までこぎつけました。しかし、それまでにかかった費用はおよそ8億円。
実用化にこぎつけるためには、さらに莫大な費用と時間がかかることがわかり、人工心臓の開発はあきらめざるを得ませんでした。
そこで、新たに開発を目指したのが「IABP(アイエービーピー)バルーンカテーテル」です。
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IABPバルーンカテーテルとは、心筋梗塞や狭心症で弱った心臓を先端についたバルーンの動きで補助する器具です。
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当時使われていたのは海外からの輸入品ばかりで、日本人の体のサイズに合わず、度々事故が起きていました。
筒井さん:
「アメリカのは先端がステンレスで作ってあるんですよ。これがね、このなかでプツッと血管を破って出ちゃうんですよね。もうそれで即死になっちゃうんです。日本でできるのは僕だけだと思っていました、僕しかできんだろと思っていました」
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人工心臓の研究と、ビニール加工の技術。それまで培ってきたノウハウを生かして開発を進め、着実に完成に近づいていきました。
■治せなかった病…23歳で亡くなった娘「苦しんでいる人を救ってほしい」
しかし、バルーンカテーテルはあくまでも一時的に心臓をサポートするもので、佳美さんの病気を治すことはできません。
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筒井さんと妻の陽子さんが佳美さんにその事実を伝えたとき、意外な言葉が返ってきたといいます。
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筒井さん:
「お父さんとお母さんは、ものすごく医学の勉強とあらゆる勉強して10年ほどやってきて、それだけでも佳美は十分満足して嬉しいと。次からは、苦しんでいる人のためにそういうことをしてくれることは佳美はすごくうれしいと。お父さんとお母さんは、佳美の誇りだと」
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筒井さんの妻 陽子さん:
「そんな誇りだなんてとんでもない、なんにも治してあげられないのに。この子はいい子だなって思って。佳美ちゃんは私たちがすることを、とても喜んでくれていましたね」
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自らも苦しんでいたはずの佳美さんが伝えたのは、両親への感謝と「苦しんでいる人を救ってほしい」という願いでした。
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佳美さんの思いを胸に開発を続けた結果、1989年、ついに初めての国産バルーンカテーテルを世に出すことに成功しました。人工心臓の研究を始めてから10年以上が経っていました。
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バルーンカテーテルの販売が始まった当時、佳美さんも一社員としてその売れ行きを見守っていたといいます。
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筒井さんの長女(佳美さんの姉)奈美さん:
「病院に入院して会社に行けなくなっても、ワープロは持ち込んでラベルを作ったりとかなんかして。報告書が来るのを、私か母が必ずファックスで送って来たのを、病院に持って行くんですよ。そうするとそれを打ち込んで『もう何本になったね』とか『こっちの病院で出るようになったんだー』みたいな感じで」
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筒井さんの三女(佳美さんの妹)寿美さん:
「『何人の人が助かった』ってよく言ってました。例えば10本だったら『10人これで助かったんだ』っていう」
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「1本売れた」のではなく「1人助かった」。そう喜んでいたという佳美さん。家族が生み出した製品が誰かの命を救っていることを誇りに感じていたといいます。
佳美さんは、およそ1500本のカテーテルが世に出たのを見届けて1991年、23歳の若さで亡くなりました。
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その後、東海メディカルプロダクツのIABPバルーンカテーテルは17万人の命を救い、今では脳の血管に入れて使うものや子供用のものなど、様々なカテーテルが製造されています。
奈美さん(佳美さんの姉):
「私たちが当初思った気持ちが、繋がっていることが本当に嬉しいし、ありがたいと思ってます」
寿美さん(佳美さんの妹):
「佳美ちゃんが、また喜んでるんだろうなっていう気持ち」
奈美さん:
「そうだね。きっと天国で見ていて、喜んでくれているよね」
筒井さん:
「1人でも多くの命を救おうというのが我々の会社の基本理念になったんですよね」
■筒井さん「4つの『限りない』」で繋ぐ未来への支援
「娘のため」から、「すべての人のため」へ。2018年、筒井さんは医療の分野で新しいものづくりに挑戦する企業を支援しようと、私財を投じて基金を立ち上げました。
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筒井さん:
「新しく医療をやる人はね、ものすごく大変なんですよ。ベンチャー資金として3000万円くらい私個人から出させていただいて、それを少しづつ少しずつ使っていただいているんですけどね」
東京都文京区の検査機器などを製造・販売する「常光(じょうこう)」は、筒井さんの基金から支援を受けて、医療分野のものづくりを進めている企業のひとつです。
開発に取り組んでいるのが、医療従事者向けの「スマートグラス」です。
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地方の病院など遠隔地で起きた医療機器のトラブルに対し、すばやく対応するためのツールとして使われることを目指しています。
常光の担当者:
「例えば『ここを回してください』とか、『このスイッチを押してください』とか今までの2度3度というやり取りがなくなりますので、1次対応で7割くらいは恐らく解決できるかなと思います」
災害の際などに機器が故障し、すぐに修理に向かえない場合などもこのグラスを使えば、ガイドに従って医療従事者がトラブルに対応できるようになると期待されています。
常光の担当者:
「筒井会長の基金から1つやってみたいという部分がありましたので。後押しをいただいているので、良いチャンスと思ってやれるところまでやって今後もいきたいと思います」
筒井さん:
「『限りない好奇心』と『限りない情熱』を示して『限りない努力』をすると『限りないネットワーク』ができる。この『4つの限りない』はすごく大事なことだと思います」
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映画「ディア・ファミリー」は6月14日公開です。
2024年6月12日放送
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