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藤井七冠の師匠・杉本八段「2人は“真のライバル”になった」伊藤新叡王誕生の瞬間は「自分の事のように悔しく」

東海テレビ / 2024年6月21日 22時2分

ニュースONE

 将棋の藤井聡太八冠は6月20日、「叡王戦」で伊藤匠七段に敗れて“七冠”となりました。一夜明けた21日、師匠の杉本昌隆八段に話を聞きました。

Q.対局を見ての感想は

杉本八段:
「終盤でミスが出てしまって、藤井叡王としてはちょっと悔いが残る負けかなという気もしました。ただ伊藤七段の指しまわし、粘り強い指し手が本当に素晴らしかったですね」

Q.杉本八段は悔しさみたいなものは感じているか

杉本八段:
「負けた瞬間はちょっと自分のことのように悔しかったんですけども。でも勝負ってずっと勝ち続けられるわけではないので、当然そういうこともあるなと。また次勝てばいいんじゃないかという気持ちになっています」

Q.藤井七冠に連絡は取ったか



杉本八段:
「勝った後だったら電話で長話でもしようかなと思ったんですけども、負けてしまったので。近々会う予定もありますから、軽くメールだけ送ったばかりで、まだ返事は来てないと思います。『お疲れさん』と、ありふれた内容のメールを送ったんですけども。よくある話ですからね、タイトルは取ったり取られたりですから、少なくとも本人はあまり深刻になってはいけないと思います」

Q.叡王戦では藤井七冠が先手の「第3局」と「第5局」で敗れている。藤井七冠は2023年、先手の勝率が9割6分だった

杉本八段:
「今回の叡王戦は、第3局・4局・5局で後手番が勝っているんですよね。先手番の方が少し有利になりやすいというのは事実なんですけど、それを超えた戦いが2人にあったということでしょうね」

Q.藤井七冠は伊藤新叡王に対してかなり研究している

杉本八段:
「研究しているのは伊藤さんの方ですね。藤井叡王も当然、伊藤さんを意識していて、かなり対伊藤戦に絞ったような、序盤から積極的に動くという作戦を見せていました」

Q.2人の将棋のタイプは違うのか

杉本八段:
「似ているところもある。序盤有利にもってきて、そのまま逃げ切る能力というのはすごく似ている。ただ最終的な勝ち方が、藤井叡王は攻め、伊藤七段は守り、そこが違いますね。改めて粘り強いんだなというのを今回感じました」

Q.タイトル戦の中では、持ち時間が少ない4時間だったということも影響が?

杉本八段:
「持ち時間が長ければ長いほど、藤井七冠って強いんですよ。指し手の精度が高くなる。今回の叡王戦は持ち時間4時間で、チェスクロック使用で本当に持ち時間がどんどん減っていくんです、終わりの方になると。そこも一つ勝負のポイントだったかなと。伊藤さんも同じ条件ではありますけどね」

Q.第3局と第5局では藤井七冠がリードを奪っていたが、反撃に出て逆転した流れがあった

杉本八段:
「決めきれなかったというか、有利なはずだけど、なかなか伊藤さんがしぶといので、ちょっと藤井叡王も攻めあぐねて、やや守りの手を自分も選んでしまったら、そこに付け込まれてしまったという展開が多かった」


Q.藤井七冠が“八冠”を保持していた期間は254日。同じく全冠を保持していた羽生善治九段は、当時七冠だったが167日だった。日数は大きく上回っているということになるが、全冠保持のプレッシャーは

杉本八段:
「プレッシャーというよりはどちらかというと、現実問題として全冠を保持する体力も必要ですし、スケジュールも過密なものだったと思います。将棋界で唯一のタイトルホルダーということで、負担は大きかったと思います」

Q.藤井七冠から最初にタイトルを奪うのが伊藤新叡王だと予想していたか

杉本八段:
「十分あり得るとは思っていました。ただ現実的には、例えば永瀬さん、渡辺さん、豊島さんといった、それまでタイトル戦を常に戦っている方たちが奪い返すんじゃないかと予想していました。でも伊藤さんは実力者ですから、全くこの結果はおかしくはありません」


 伊藤新叡王は、2002年10月10日生まれで藤井さんと同学年で、17歳11カ月でプロ入りしました。両親が名古屋出身ということもあってドラゴンズファンで、LINEのアイコンはドアラだと話しています。

 小学校3年生の時、伊藤少年と藤井少年が将棋大会の準決勝で激突し、伊藤少年が勝って藤井少年が大泣きしたということから、『藤井さんを最後に泣かせた男』という異名を持っています。


Q.杉本八段が最初に伊藤新叡王を知ったのはいつ頃?

杉本八段:
「藤井七冠が私の弟子になってだいぶ経ってからで、それまではあまり意識したことがなかったんですけど、当時から関東で“強い少年”ということで有名だったみたいです。『関東の伊藤』『西の藤井』みたいな関係だったのではないかと思います」

Q.藤井七冠から伊藤新叡王の話を聞くことはあったか

杉本八段:
「それはなかった。もしかしたら兄弟弟子には言ってたかもしれないです。お互い東京、大阪の奨励会に入って、意識はしていたと思います。(伊藤新叡王が)強い少年だなというのは知っていましたから。いずれプロになるだろうなとも思ってましたけど、ここまで強くなるんだなと」


 伊藤新叡王の師匠・宮田利夫八段には厳しい教えがあり、25歳までは酒・ギャンブルが禁止だということです。伊藤新叡王は、最初に挑戦した竜王戦の激励会の席で、「賞金を半分師匠にあげる」と話しています。

 その賞金について6月21日、伊藤新叡王は会見で「その話はまだしていない。師匠と直接会ってお話ししたいなと思います」と話しています。

杉本八段:
「やわらかい空気でしたよね。いい言葉でね、私も藤井七冠にこの言葉を聞かせてみたいなと」

Q.今までに藤井七冠から何か買ってもらったことは

杉本八段:
「推定100万円ぐらいするんじゃないかと思うパソコンを、彼が扱っていたものをもらったことはあります。使っていたものの方が価値があるので。何よりも弟子の活躍そのものが師匠にとって嬉しいことなので、伊藤さんはもう十分、賞金なんかあげなくても素晴らしいものを宮田師匠にあげていると思います」

Q.伊藤新叡王は会見で、少し固まりながらも微笑んでいました。棋士の方は淡々としている印象がある

杉本八段:
「例えば、対局に勝ってもあまり喜びを見せないですよね。これは対局相手に失礼に当たるからということがあります。相撲や武道などもそうですよね、将棋の“道”だからというところはあります。『礼に始まり礼に終わる世界』だからと。子供の頃から“相手にまず関心を忘れてはいけない”という教えがあります。宮田八段の教室はたくさんのお子さんを教えられているみたいですし、そんな教えもされてるんだと思います」

Q.棋士としての気持ちも教えると

杉本八段:
「将棋は考える時間がすごく多いんですね。指して駒を動かしている時間よりも、考えている時間の方がずっと長いので、そこでの考え方というのはすごく重要だということは、師匠は話しますね」

Q.新たなライバルが藤井七冠に登場した

杉本八段:
「もともとライバル関係ではあったんでしょうけど、改めてタイトルを奪取したということで『真のライバル』になったなという気がしますね」

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